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こっちの日本昔ばなし #12 金太郎

足柄山に、金太郎という怪力の子どもがいた。
熊と相撲を取り、鹿と競争し、猿と木登りをする。
山の動物たちは彼を慕っていた。

ある日、山に役人たちがやってきた。
胸には「山林安全管理局」のバッジ。
「あなたが金太郎さんですね」

「そうだけど?」

「動物への“パワハラ行為”が児童相談所経由で多数報告されています」

金太郎は首をかしげた。
「パワハラ? みんな友達だよ」

「友達かどうかは関係ありません。
 動物との接触は“野生動物安全基準”に違反します」

熊が抗議した。
「金太郎は悪くない!
 わしが相撲を挑んだんだ!」

「挑んだ側にも責任があります。
 あなたは“危険行為の誘発”で指導対象です」

鹿が言った。
「競争は自主的にやっただけだ!」

「自主的でも、速度超過の危険があります」

猿が言った。
「木登りは遊びだぞ!」

「遊びでも、落下リスクがあります」

「落下じゃないやい、ドッスンのモノマネだぃ」

動物たちは口々に反論したが、
役人は淡々と書類を読み上げた。
「金太郎さん、あなたは未成年でありながら
 “無許可の山林活動”を行っています。
 特に、まさかりの所持は重大な違反です」

「これはただの道具だよ!」

「届出のない刃物所持は禁止されています」
金太郎はまさかりを取り上げられた。

役人はさらに続けた。
「動物たちを労働に従事させた疑いもあります」

「労働なんてさせてない!」

「相撲、競争、木登り……
 いずれも“身体的負荷を伴う行為”です。
 労働とみなされます」

熊・鹿・猿は同時に叫んだ。
「遊んでただけだ!」

「遊びかどうかは当局が判断します」

役人は書類を閉じた。
「本日より、金太郎さんには“山林活動禁止命令”を出します。
 動物たちも“自主的危険行為防止プログラム”に参加してください」

金太郎は山を見渡した。
「……じゃあ、みんなで遊ぶこともできないの?」

「できません。
 安全で管理された遊び以外は、すべて禁止です」

動物たちは肩を落とした。

熊がつぶやいた。
「強さって……なんだったんだろうな」

鹿が言った。
「自由って……どこに行ったんだ」

猿が言った。
「山なのに、山らしく生きられない」

金太郎は空を見上げた。
「……まさかりより重いものを背負わされた気がする」

風が吹き、山の木々が揺れた。
そこには、かつての豪快な物語の影はなかった。

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