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こっちの日本昔ばなし #27 おむすびころりん

老人は山で弁当を広げていた。
手が滑り、おむすびが一つ転がり落ちた。

コロコロコロリン。

穴に吸い込まれた瞬間、地下から声がした。
「ようこそ、“落下物受付センター”へ」

穴の中にはネズミたちがいた。
彼らは老人を歓迎し、落ちたおむすびをありがたく受け取った。

「これは偶然の恵みです。
 あなたは善意の提供者として扱われます」

老人は喜んだ。
「なんとありがたいことか」

翌日、老人はまた山へ行った。
そして、昨日のことを思い出しながら、
そっとおむすびを穴の近くに置いた。

コロコロコロリン。

穴からネズミが顔を出した。
昨日とは違い、表情が硬い。

「本日の提供物を確認します……
 あれ? これは“過失”ではなく“故意”ですね?」

老人は笑ってごまかした。
「まあまあ、細かいことは気にせんでくれ」

ネズミたちは端末を操作した。
「食べ物を粗末にする行為は、
 “資源軽視罪”に該当します」

老人は慌てた。
「昨日は褒めてくれたじゃろう!」

「昨日は“偶然の善意”でした。
 今日は“意図的な浪費”です。
 同じ行為でも、動機が違えば扱いが変わります」

老人は震えた。
「じゃあ、どうなるんじゃ」

ネズミたちは静かに告げた。
「罰として、あなたの家の食料棚から
 ランダムに一品ずつ消失します」

その瞬間、老人の家の棚から 漬物、干し柿、米、味噌が次々と消えた。

老人は叫んだ。
「わしはただ、褒められたかっただけじゃ!」

ネズミは冷たく言った。
「褒められたいなら、誠実に生きるべきです。
 “偶然の善意”を再現しようとすると、
 だいたい罰が当たります」

穴は静かに閉じた。
老人は家の前で座り込んだ。 棚は空っぽだった。

コロコロと転がるものは、もう何もなかった。

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