銀河連合株式会社 #1 銀河転職エージェント
銀河の片隅に、宇宙人専用の就職・転職エージェントがあった。
その名も 「ギャラクシー・キャリア」。
どんな種族でも、どんな惑星でも、触手の本数すら問わない、銀河で一番ゆるい窓口だ。
学生だったクル族の青年クル=ルは、三つの目をしょんぼり伏せながら相談に来た。
「ぼく……進路に迷ってて……
ブラックホール清掃のインターンに行ったら、
本当に吸い込まれかけたんです」
担当エージェントのロボットは、金属の指をカタカタ鳴らしながら答えた。
「それは危険ですね。では、こちらの求人はいかがでしょう。
“惑星の自転調整スタッフ”
残業なし、重力手当あり」
クル=ルは三つの目を細めた。
「いや……惑星が止まったら責任取れないので……」
ロボットは次のカードを出した。
「ではこちら。
“ワープ航路の交通整理”
制服支給、光速移動手当あり」
クル=ルは青ざめた。
「光速は……酔うんです……」
ロボットはしばらく沈黙し、最後のカードを静かに差し出した。
「これはどうでしょう。
“地球のオフィスワーク”
空調完備、椅子あり、危険なし」
クル=ルの三つの目がぱっと輝いた。
「それだ! 地球なら安全そうだ!
椅子がある仕事なんて、銀河では貴重ですよ!」
数週間後、クル=ルは地球の企業でアルバイトを始めた。
しかし――初日の夜。
彼は震える声でエージェントに緊急連絡を入れた。
「た、助けてください……!
勤務時間が “日の出からエンドレス” なんです……!
しかも休憩が “自己申告制” って……
申告したら怒られるんです……!」
ロボットは静かに言った。
「地球の労働環境は、銀河でも “特別枠” なんです。
危険手当がないだけで、実質は最難関の職場ですよ」
クル=ルは三つの目を震わせながらつぶやいた。
「宇宙で一番ブラックなのは……地球……」
その日、彼は初めて知った。
“椅子がある=安全”ではないということを。
