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こっちの日本昔ばなし #4 ごんぎつね

村役場の一角に、「善意監査室」という小さな部屋があった。
ここでは、村で起きた“親切”が本当に親切だったかどうかを
事務的にチェックする仕事をしている。

新人職員のゴン川は、初日に課長からこう言われた。
「最近、“誰かがこっそり良いことをした”という報告が増えている。
 だが、匿名の善意はトラブルの元だ。
 出所を確認しなさい

ゴン川はうなずいた。
「了解しました。善意にも証拠が必要ですね」

まず、村の青年の家を訪れた。
最近、家の前に栗や魚が置かれるようになったという。

青年は言った。
「ありがたいんですが……誰が置いてるのかわからなくて」

ゴン川は淡々と答えた。
「ご安心ください。
 出所不明の善意は、村の規定で“要監査”です

青年は苦笑した。

次に、森の動物たちに聞き込みをした。

一匹目の狐は言った。
「栗を置いただけで監査されるなんて、
 世知辛い世の中だね」

二匹目の狸は言った。
「人間のために魚を運んだら、
 “意図が不明”と言われたよ。
 善意にも説明書がいるのかい?」

三匹目の狐は言った。
「そもそも、名乗ったら名乗ったで面倒だろう?
 だから黙って置いてるだけさ」

ゴン川はメモを取りながら、
「動機不明、証拠不十分」と書き込んだ。

調査を終えて課長に報告すると、課長は満足げに言った。
「よし。
 匿名の善意は“未承認行為”として処理しよう

ゴン川は首をかしげた。
「……未承認行為、ですか?」

課長は淡々と答えた。
「そうだ。
 善意は、届け出があって初めて“善意”になる。
 それ以外は、ただの不審物だ」

翌日、青年の家の前には いつもの栗の代わりに、役場の紙が置かれていた。

『未承認の善意が確認されました。
 安全のため、回収しました。』

青年は紙を見つめ、ため息をついた。

その横で、森の影から一匹の狐が そっと顔を出していた。

狐は紙を見て、小さくつぶやいた。
「……善意って、届け出制だったのか」

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