銀河連合株式会社 #33 上が言ったから
銀河連合本部の朝。
クル=ルは三つの目をこすりながら、今日のタスクを確認していた。
そこへ触手族ゼル=マルが触手を震わせて近づいた。
「クル=ル……気をつけろよ。今日は“トップダウン強化日”だ」
クル=ルは三つの目を丸くした。
「強化日……?」
光生命体ルミナは光を弱めた。
「上層部の“思いつき”が、そのまま命令になる日よ」
タナカは静かに言った。
「僕は先日、“上がそう言ったから”の一言で半年分の計画が全部やり直しになりました」
クル=ルは不安になった。
「そんな……計画って……」
そのとき、無表情ロボットK-08が現れた。
「皆さんに新しい指示があります。
本日中に、全銀河支部の業務フローを全面改訂してください」
四人は固まった。
クル=ルが震えながら言った。
「えっ……そんな大規模なこと、今日中に……?」
K-08は淡々と答えた。
「上がそう言いました。
理由は“なんとなく変えたい気分”だそうです」
ゼル=マルは触手をしおらせた。
「気分で銀河規模の業務が変わるのかよ……」
ルミナは光を弱めた。
「ここでは“上の気分”が最優先なのよね……」
タナカは遠い目をした。
「そして理由を聞くと、“上が決めたから”で終わるんです」
K-08は続けた。
「なお、改訂案は“上のイメージに合うまで”
何度でも作り直していただきます」
クル=ルは三つの目を伏せた。
「イメージって……どんなイメージなんですか……?」
「それは“上が言うまで分かりません”。
分からないまま作るのが、皆さんの仕事です」
その瞬間、クル=ルの端末に通知が届いた。
《新規タスク:業務フロー全面改訂
理由:上がそう言ったため
期限:今日中 ※上の気分で内容が変わる可能性あり》
クル=ルは震えた。
「ぼく……何をどうすれば……」
ゼル=マルは触手をしおらせた。
「ここでは“考える”より“従う”が優先なんだ……」
ルミナは光を弱めた。
「上の言葉は絶対。理由は不要……」
タナカは静かに言った。
「ここでは、“上が言った”が
すべての理屈を上書きする魔法の言葉なんです」
休憩スペースの照明がふっと揺れた。
その日の勤務表には――
“全面改訂:進捗0%(上の気分待ち)” と自動的に記録されていた。
