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こっちの日本昔ばなし #20 注文の多い料理店

山奥に、奇妙なレストランがあった。
看板にはこう書かれている。

《ようこそ 手続きの多い料理店へ》

二人のハンターが腹を空かせて入っていった。
玄関には紙が貼られていた。
《まず、入店前アンケートにご回答ください》

仕方なく記入すると、次の扉に進めた。
だがそこにも紙がある。

《靴を脱ぎ、身分証を提示し、
 “入店の意思が自発的である”と署名してください》

ハンターは顔を見合わせた。
「なんだこの店は」
「まあ、最近はどこもコンプラが厳しいからな」

次の部屋には、さらに分厚い書類が積まれていた。
《アレルギー確認書》
《食材利用同意書》
《緊急時の責任所在に関する覚書》

書類をめくるたび、腹より心が疲れていく。
ようやく奥の部屋にたどり着くと、
スピーカーから無機質な声が流れた。

「お客様、当店は“お客様自身が最も安全な食材である”
 という理念で運営しております」

ハンターは凍りついた。
「まさか……俺たちを食う気か?」
「いや、まだ決めつけるな。手続きが多いだけかもしれん」

スピーカーは続けた。
「調理に入る前に、
 お客様の肉質評価アンケートにご回答ください。
 回答しない場合は、評価不能として追加料金が発生します」

ハンターは叫んだ。
「ふざけるな! 出るぞ!」

だが出口の扉には、また紙が貼られていた。
《退店には“退出理由書”の提出が必要です》

「理由書ってなんだよ!」
「知らん! 書け!」

二人は震える手で書類を書き、提出した。

しばらくして、スピーカーが言った。
「審査の結果、退出が許可されました。
 ただし“退出手数料”に関する書類に署名して下さい。」

二人は命からがら店を出た。
山道を歩きながら、ひとりがつぶやいた。
「……あれ、料理店だったよな?」

「いや、もう分からん。
 ただ一つ言えるのは、食われるより先に
 書類の山に殺されるところだったよ」

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