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こっちの日本昔ばなし #24 分福茶釜

ある古物商が、奇妙な茶釜を拾った。
夜になるとタヌキが化けて踊り出す——
あの有名な“分福茶釜”だった。

古物商は見世物小屋を開き、
茶釜タヌキの踊りは大人気となった。

「分福だ、分福だ!」
「福が湧く茶釜だ!」

客は押し寄せ、
古物商は毎日札束を数えて笑った。

しかし、福は長く続かなかった
ある日、町の商人が駆け込んできた。
「大変だ!
 鉄鉱石の先物が暴騰している!
 鉄製品の価値が跳ね上がるぞ!」

古物商は目を輝かせた。
「鉄製品……つまり茶釜もか?」

商人はうなずいた。
「今なら、茶釜一つで屋敷が買えるほどだ!」

古物商は茶釜を見つめた。
タヌキは中で眠っている。

「……見世物より、売ったほうが儲かるな」
欲が、静かに心を侵食した。

古物商が茶釜を抱えて市場へ向かうと、
タヌキが中から声を上げた。

「旦那、やめておくれよ!
 あっしは踊って稼ぐから、
 売らないでおくれ!」

古物商は言った。
「踊りじゃ屋敷は買えん。
 鉄鉱石バブルのほうが確実だ」

タヌキは震えた。
「バブルは……いつか弾けるでござんすよ……」

古物商は鼻で笑った。
「弾ける前に売ればいいだけだ」

市場の商人が茶釜を見て叫んだ。
「これは……鉄の質がいい!
 今なら高値で買おう!」

古物商は満面の笑みで茶釜を差し出した。

その瞬間——
市場の鐘が鳴った。

「鉄鉱石バブル崩壊!
 価格が急落!」

商人は手を引っ込めた。
「悪いが、もう価値はない。
 ただの古い茶釜だ」

古物商は青ざめた。

茶釜の中からタヌキが飛び出した。
「だから言ったでござんしょう!
 欲をかくと、福を逃すって!」

古物商は膝から崩れ落ちた。

タヌキはため息をついた。
「分福茶釜は“福を分ける”茶釜でござんす。
 欲をかく者には、福は分けられません」

古物商は泣きながら茶釜を抱えた。
しかし、もうタヌキは踊らなかった。

町人たちは噂した。
「分福茶釜を売ろうとした古物商、
 結局一文にもならなかったらしい」

「欲をかくと、福が逃げるんだな」

風が吹き、 茶釜は静かに冷えたままだった。


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