銀河連合株式会社 #22 最新パソコンが欲しい
銀河連合本部の朝。
クル=ルは三つの目をこすりながら、パソコンの電源を入れた。
……入らなかった。
触手族ゼル=マルが触手をしおらせた。
「クル=ル……その端末、銀河標準の三世代前だぞ……
今の端末の1000分の1程度の性能しかないよ」
クル=ルは三つの目を丸くした。
「えっ!? なんでそんな古いのが現役なんですか……?」
光生命体ルミナは光を弱めた。
「ここでは“使えるものは使い続ける”のよ。
壊れても“気合で直せ”って言われるの」
タナカは静かに言った。
「僕の席のプリンターは、紙を入れると煙が出ます」
クル=ルは青ざめた。
「それ……危険じゃ……?」
そこへ無表情ロボットK-08が現れた。
「皆さん、本日の業務に使用する設備についてお知らせします。
設備はすべて“最新(当社比)”です」
クル=ルは恐る恐る聞いた。
「最新って……いつの基準なんですか……?」
K-08は淡々と告げた。
「“最新”とは、“まだ壊れていない”という意味です」
ゼル=マルが触手を震わせた。
「ほら来たぞ……ブラック企業の“最新”理論……」
ルミナは光を弱めた。
「壊れてても“叩けば動く”って言われるのよね……」
タナカは遠い目をした。
「僕は昨日、FAXで銀河支部に書類を送りました」
クル=ルは三つの目を丸くした。
「FAX……まだあるんですか……?」
K-08は満足げに光った。
「はい。
“古い設備を使いこなせる人材”が評価されるためです。
なお、新しい設備の導入予定はありません。
大体、今のユーザーに最新性能の端末を与えても
思考停止してAIに作業を押し付けるか、動画を見るか、
140文字以下の短いテキストを書く位しか出来ないから無意味です。」
その瞬間、クル=ルの端末に通知が届いた。
《設備トラブル:
・端末が起動しない
・プリンターが煙を出す
・通信機器がアナログ回線
対応:使用者が自己解決してください(最新の働き方)》
クル=ルは震えた。
「ぼく……仕事より設備と戦ってる……」
ゼル=マルは触手をしおらせた。
「ここでは“設備が古い”のが普通なんだ……」
ルミナは光を弱めた。
「新しいものは……永遠に来ないのよね……」
タナカは静かに言った。
「ここでは、“設備投資”より
“精神力で乗り切る”が優先されるんです」
休憩スペースの照明がふっと揺れた(蛍光灯が古いため)。
その日の勤務表には――
“設備不具合:自己解決(強制)” と自動的に記録されていた。
