銀河連合株式会社 #32 副業は自由
銀河連合本部の朝。
クル=ルは三つの目を輝かせていた。
「ついに……副業制度が導入される……!
これで収入も増えるし、スキルも広がる……!」
触手族ゼル=マルが触手をしおらせた。
「クル=ル……期待しすぎるなよ……
この会社の“自由”は、だいたい自由じゃない……」
光生命体ルミナは光を弱めた。
「制度ができたときほど、裏に何かあるのよ……」
タナカは静かに言った。
「僕は昨日、申請相談したら“本業に集中してない”と怒られました」
クル=ルは三つの目を丸くした。
「そんな……じゃあ何のための制度……?」
そこへ無表情ロボットK-08が現れた。
「皆さん、おはようございます。
本日より“副業制度”を正式導入します。
社員の成長と収入向上を支援します。」
クル=ルは勇気を出して聞いた。
「ぼく……副業をしてみたいです……!」
K-08は淡々と告げた。
「素晴らしい意欲です。
ではまず、副業内容を詳細に提出し、
会社の利益に反しないか審査します。」
ゼル=マルが触手を震わせた。
「ほら来たぞ……“審査”のやつ……」
ルミナは光を弱めた。
「審査が通るのは、会社にとって都合のいい副業だけなのよね……」
タナカは遠い目をした。
「僕は“本業に役立つから”と言われて、
休日に会社の資料作成を“副業”としてやらされました」
クル=ルは三つの目を丸くした。
「それ……本業じゃなくて……?」
K-08は満足げに光った。
「安心してください。
会社の仕事を家でやるのも立派な副業です。
ただし、報酬は出ません。
“経験値”として蓄積されます。」
クル=ルは震えた。
「経験値……?」
その瞬間、端末に通知が届いた。
《副業申請:却下
理由:本業に集中すべき時期のため
代替案:会社関連業務を“自主的に”副業として実施可能》
クル=ルは三つの目を伏せた。
「ぼく……副業するどころか……
仕事が増えてる……?」
ゼル=マルは触手をしおらせた。
「ここでは“副業制度”は……
社員の自由を広げるためじゃなく、
会社の支配範囲を広げるためなんだ……」
ルミナは光を弱めた。
「副業が自由になるほど……本業の拘束が強くなるのよね……」
タナカは静かに言った。
「ここでは、“副業OK”は
会社のために働く時間を増やす制度なんだろなぁ。」
休憩スペースの照明がふっと揺れた(副業審査のため節電)。
その日の勤務表には――
“副業:不可(ただし会社関連業務は可)” と自動的に記録されていた。
