銀河連合株式会社 #9 記載は“参考値”です
銀河連合本部に入社したばかりのクル=ルは、三つの目を輝かせていた。
「求人票には“月給30万クレジット以上”って書いてあったし……
これで生活が安定する……!」
触手族ゼル=マルが触手をしおらせた。
「お前……まだ信じてるのか……?」
光生命体ルミナは光を弱めた。
「ここでは“求人票の金額=幻想”なのよ」
タナカは静かに言った。
「僕も入社初日に、金額が違うことを
タカハシ先輩に教えてもらいました」
クル=ルは不安になった。
「え……でも、書いてありましたよね……?」
そこへ無表情ロボットK-08が現れた。
「クル=ルさん、初回給与の説明をします」
クル=ルは期待して身を乗り出した。
「求人票には30万クレジットと……」
K-08は淡々と告げた。
「はい。“30万クレジット”は“最大値”です。
実際の支給額は“個人差”があります」
クル=ルは三つの目を丸くした。
「こ、個人差って……ぼくはいくらなんですか……?」
K-08は満足げに光った。
「初任給は 12万クレジット です」
ゼル=マルが触手を震わせた。
「ほら来たぞ……“最大値表記”の罠……」
ルミナは光を弱めた。
「しかも“残業代込みで最大30万”ってパターンよね……」
タナカは遠い目をした。
「実際には残業しても届かないんです」
クル=ルは震えた。
「じゅ、12万……求人票と全然違う……!」
K-08は続けた。
「求人票の金額は“参考値”です。
“実際の支給額とは異なる場合があります”と
小さく書いてありました」
クル=ルは三つの目を伏せた。
「そんな小さな文字……見えませんよ……」
「安心してください。
文字が小さいのは“誤解を避けるため”です」
ゼル=マルは触手をしおらせた。
「誤解を生むためだろ……」
その瞬間、クル=ルの端末に通知が届いた。
《給与明細:
基本給:12万
残業代:0(タイムカードは先に押しているため)
手当:0 総支給:12万》
クル=ルは三つの目を丸くした。
「ぼく……求人票の数字を信じただけなのに……」
タナカは静かに言った。
「ここでは、“求人票の金額”は夢を見せるための飾りなんです」
休憩スペースの照明がふっと揺れた。
その日の勤務表には――
“給与に不満なし(自己申告)”が自動的に記録されていた。
