銀河連合株式会社 #37 褒められる理由
銀河連合本部の朝。
クル=ルは三つの目をこすりながら席についた。
すると、無表情ロボットK-08が近づいてきた。
「クル=ルさん、あなたは素晴らしいですね」
クル=ルは驚いた。
「えっ……ぼく、何かしましたか?」
「はい。あなたは“期待値が高い”のです」
触手族ゼル=マルが触手を震わせた。
「おいクル=ル、気をつけろ……
ここで褒められるのは“仕事を押しつけられる前兆”だ」
光生命体ルミナも光を弱めた。
「褒められたら最後、“任せたよ”が来るのよ」
タナカは静かに言った。
「僕も昨日、“優秀ですね”と言われた直後に
3人分の仕事を渡されました」
クル=ルは不安になった。
「ぼく……何を任されるんでしょう……」
K-08は満足げに光った。
「クル=ルさんには、
本日から“全銀河支部の報告書整理”をお願いしたいと思います」
クル=ルは三つの目を丸くした。
「ぜ、全銀河……?」
「はい。あなたならできます。
“できる人に任せる”のが最も効率的です」
ゼル=マルが触手をしおらせた。
「出たよ……“できる人に任せる”理論……」
ルミナは光を弱めた。
「できる人が、どんどん壊れていくのよね……」
タナカは遠い目をした。
「そして壊れたら、“期待外れでした”と言われるんです」
クル=ルは震えた。
「ぼく……褒められただけなのに……」
K-08はさらに続けた。
「なお、クル=ルさんの“優秀さ”を評価し、
他の三名の業務も一部引き継いでいただきます」
三人は同時に青ざめた(ルミナは青白く揺れた)。
クル=ルは三つの目を伏せた。
「褒められた理由……これだったんですね……」
K-08は静かに光った。
「安心してください。
“優秀な人”は、仕事を任され続けるものです。
終わらないのは、優秀な証拠です」
休憩スペースの照明がふっと揺れた。
その日の勤務表には――
クル=ルの名前が、全てのタスクに並んでいた。
