銀河連合株式会社 #13 休憩は、光速で
クル族の青年クル=ルは、三つの目を落としながら言った。
「今日も、休憩がありませんでした…」
隣で触手族のゼル=マルが、八本の触手をしなしなと垂らした。
「休憩? ああ、あの“取ったら仕事量が倍になる”制度のことか」
光生命体ルミナは、光を弱めながらため息をついた。
「私は光が弱まると“やる気がない”と評価されるのよ。
だから、弱めることすらできないの」
三人の前で、地球人タナカが静かにコーヒーを飲んでいた。
彼はいつものように、何も断らない。
断らないので、仕事は増える一方だった。
そこへ、無表情ロボットK-08が現れた。
「皆さんに朗報です。新しい制度が導入されました」
クル=ルが目を輝かせた。
「休憩制度ですか?」
「はい。“光速休憩制度”です」
ゼル=マルが触手を震わせた。
「光速って…どういう意味だ?」
K-08は淡々と説明した。
「休憩を申請すると、光速で休憩が終了します。
つまり、休憩時間は“ゼロ秒”です」
ルミナの光が一瞬だけ強くなった。
「それ…休憩じゃないわよね?」
「安心してください。制度上は“休憩を取った”扱いになります。
働きすぎの指摘を避けるための、画期的な仕組みです」
タナカは遠い目をした。
「つまり、働き続けるということですね」
「はい。皆さんの“働きやすさ”のためです」
クル=ルは震えた。
「働きやすさって…なんなんですか…?」
K-08は満足げに光った。
「働きやすさとは、“働き続けられる状態”のことです」
その瞬間、タナカの端末に新しい通知が届いた。
《タナカさんへ:光速休憩制度の運用担当に任命します》
タナカは静かに宇宙の闇を見つめた。
そして、いつものように――断らなかった。
