こっちの日本昔ばなし #28 迷子のヒーローたち
日本政府には、一般人が決して知らない部署がある。
その名も
——「昔話統合庁」
ここでは、各地の昔話キャラクターの“その後”を監視し、
物語の整合性とブランド価値を維持するための
再配置・再解釈・監査が行われていた。
新人職員のフルカワは、初日に課長から説明を受けた。
「最近、昔話キャラたちが勝手に動きすぎている。
物語の境界を越え、互いの世界に干渉している。
統合処理をしなさい」
フルカワは胸を張った。
「任せてください。
昔話は国の資産ですから」
■ 桃太郎
「鬼ヶ島から“侵略者疑惑”で訴えられた。
ブランド戦略室が歴史を塗り替えようとしてるんだ」
■ 浦島太郎
「玉手箱の新型で記憶を消されたらしい。
竜宮城のこと、全部忘れた。観光被害者扱いだよ」
■ かぐや姫
「私は月の“試験体”なのに、
地球人が勝手にロマンチックにしてくる。
イメージをキープし続けるのに疲れたわ」
■ 金太郎
「山林活動禁止命令だって。
動物と遊ぶのも“労働”扱いらしい」
■ 一寸法師
「鬼を刺したら“労災の原因”扱い。
英雄のはずなのに危険源って言われた」
■ 鶴の娘
「恩返ししたら“違法労働”扱いで保護されて、
男の家に戻れなくなりました……」
フルカワは頭を抱えた。
「……あなたたち、物語より現実のほうが過酷じゃないですか」
課長が現れ、淡々と言った。
「だから再配置する。
全員まとめて“昔話異常事案”として新しい物語にまとめる」
フルカワは静かに言った。
「……あなたたち自身で新しい物語を作り直してください」
6人はとまどいながらも、
庁の自動ドアを抜けて夜の街へ歩き出した。
“昔話”という檻の外側へ。
風が吹き、
新しい物語の始まりを告げた。
Fin.
