こっちの日本昔ばなし #3 桃太郎
岡山県庁の地下には、一般人が決して入れない部屋がある。
その名も――
「桃太郎ブランド戦略室」。
ここでは、桃太郎を“永遠の英雄”として維持するための
情報操作・イメージ管理が行われていた。
ある日、新人職員のモモ川が室長に呼ばれた。
「最近、鬼ヶ島側から“桃太郎は侵略者だ”という声が上がっている。
ブランド価値が下がる前に対策しなさい」
モモ川は胸を張った。
「任せてください。英雄の物語は、国の資産ですから」
まず、鬼ヶ島の資料を調べた。
そこには、桃太郎が奪った宝物のリストがあった。
『金銀財宝:島の公共予算
着物:伝統工芸品
酒:地域特産品』
モモ川は眉をひそめた。
「……これ、完全に略奪では?」
次に、桃太郎本人の記録を調べた。
『犬・猿・雉への報酬:きびだんご1個
鬼ヶ島への上陸:無許可
戦闘理由:特になし(“悪そうだったから”)』
モモ川は震える声で言った。
「室長……桃太郎、ただの武装強盗では?」
室長は静かに笑った。
「だからこそ、ブランド戦略が必要なのだよ」
室長はホワイトボードに書いた。
『悪いのは鬼 → 正義は桃太郎
疑問を持つ者 → “非国民”扱い
物語を全国に普及 → 教育で固定化』
モモ川は青ざめた。
「こんな操作、許されるんですか」
室長は淡々と言った。
「許されるさ。
“昔話”という形にすれば、誰も疑わない」
その日から、全国の幼稚園に新しい教材が配られた。
『桃太郎は正義の味方!
鬼は悪いことをしていました!
だから退治されて当然!』
数日後、鬼ヶ島の抗議声明はすべて“デマ”として処理された。
室長は満足げに言った。
「よし、これで桃太郎ブランドは安泰だ」
だがモモ川は小声でつぶやいた。
「室長……本当の歴史はどうなるんですか」
室長は目をそらした。
「……歴史とは、語り継がれたほうが正しくなるものだ」
