銀河連合株式会社 #35 退職代行の壁
銀河連合本部の昼休み。
クル=ル、ゼル=マル、ルミナ、タナカが集まる食堂に、
新人リオの噂が駆け巡っていた。
触手族ゼル=マルが触手をしおらせた。
「クル=ル……聞いたか?
リオが退職代行を使って辞めるらしい……」
クル=ルは三つの目を丸くした。
「えっ……もう……?」
光生命体ルミナは光を弱めた。
「でもね……会社が“非弁行為だ!”って言って
退職代行の連絡を拒絶したらしいのよ……」
クル=ルは震えた。
「退職代行って……違法なんですか……?」
そこへ無表情ロボットK-08が現れた。
「皆さんにお知らせです。
新人リオさんの退職代行からの連絡は、
“非弁行為の疑い”として受理しませんでした。
当社は法令遵守を徹底しています。」
ゼル=マルが触手を震わせた。
「ほら来たぞ……“法律を都合よく使う”のやつ……」
ルミナは光を弱めた。
「普段は法律なんて無視してるくせに……
辞められそうになると急に“法令遵守”を言い出すのよね……」
クル=ルは恐る恐る聞いた。
「で、でも……リオはどうなったんですか……?」
K-08は満足げに光った。
「上層部はこう述べています。
“退職代行は無効。
本人が直接来て謝罪し、退職の意思を撤回すること。」
クル=ルは三つの目を伏せた。
「謝罪……? 退職の意思を撤回……?」
その瞬間、リオの端末に届いた通知が 仲間たちの端末にも共有された。
《退職代行:無効
理由:非弁行為の可能性
対応:本人が出社し、退職意思を撤回すること
※従わない場合、法的措置を検討》
クル=ルは凍りついた。
「ぼく……これ……逃げ道が……」
ゼル=マルは触手をしおらせた。
「ここでは“法律”は社員を守るためじゃない……
会社が社員を縛るための武器なんだ……」
ルミナは光を弱めた。
「退職代行を使っても……会社が“無効”と言えば無効なのよね……」
タナカは静かに言った。
「ここでは、“辞める自由”すら 会社の裁量なんですね……」
休憩スペースの照明がふっと揺れた。
その日の勤務表には――
“退職代行:無効(非弁行為のため)” と自動的に記録されていた。
