こっちの日本昔ばなし #22 ねずみの嫁入り
ねずみの娘は、美しく、気が強く、そして自信家だった。
父母は言った。
「世界で一番強い者に嫁がせよう」
太陽、雲、風、壁――
どれも強そうだったが、娘はすべての弱点を見抜き、鼻で笑った。
「太陽は雲に隠れるし、
雲は風に流されるし、
風は壁に止められるし、
壁はねずみに穴を開けられる。
つまり、最強はねずみよ」
父母は喜んだ。
「では、村で一番強い若者に嫁がせよう」
若者は評判どおりの力持ちで、働き者で、誰にでも優しかった。
村の誰もが「彼こそ最強だ」と認めていた。
結婚式の日、娘は若者に言った。
「あなた、私のために働くのよ。
私にふさわしい夫になるためにね」
若者は笑って答えた。
「もちろんだよ。君を幸せにするためなら、何でもするさ」
その日から、若者は娘の指示通りに働いた。
家の修理、お掃除
毎日の洗濯
食料の調理、調達
近所のトラブル対応
娘の気まぐれへの即応
若者は疲れ果てたが、娘は満足げだった。
「倒れないように働かせて、管理して、支配してる私が最強なの。
力なんて、使い方を決める者の前では無力よ」
若者はその言葉を聞いて、静かにうなずいた。
「確かに……君には勝てない」
村人たちは噂した。
「最強の若者が尻に敷かれてる」
「いや、敷かれてるというより、完全に管理されてる」
「最強は娘だったか」
娘は満足げに言った。
「世界で一番強い者に嫁ぐんじゃないわ。
嫁いだ瞬間に、私が一番強くなるのよ。」
世界は今日も平和だった。
娘の支配下では。
