こっちの日本昔ばなし #21 三年寝太郎
寝太郎は、三年間ずっと寝ていた。
村人たちは呆れ、役所に通報した。
「三年も働かないなんて、前例がありません」
スリープ管理局の職員が、寝太郎の家にやってきた。
寝太郎は布団の中から言った。
「寝ているだけで迷惑かけてないだろう」
職員は淡々と答えた。
「あなたの“生産性”がゼロのままです。
村の平均値を下げています」
寝太郎は連行され、
“睡眠行動改善プログラム”を受けることになった。
内容は、起床訓練、勤労意欲の可視化、そして“やる気ポイント”の付与だ。
だが、寝太郎はどれもクリアできなかった。
起きる気がないのだ。
職員は困り果て、上司に相談した。
「どうしましょう。彼は起きる意思がありません」
上司は書類をめくりながら言った。
「では、“特例措置”を適用しましょう」
翌日、寝太郎は村の広場に連れてこられた。
巨大なスクリーンに、彼の“怠惰エネルギー”が表示される。
村人たちはざわついた。
「こんなに寝てるなんて非常識だ」
「働かざる者、食うべからずだ」
「見てるだけで腹が立つ」
寝太郎はあくびをした。
「そんなに怒ることかね」
すると、スクリーンが切り替わった。
《特例措置:寝太郎氏の“怠惰エネルギー”を村の発電に利用します》
寝太郎はベッドごと巨大な装置に接続された。
寝れば寝るほど、村の電力が増える仕組みだ。
村人たちは歓声を上げた。
「寝太郎、もっと寝ろ!」
「昼寝も夜更かしも大歓迎だ!」
寝太郎は目を閉じた。
「やっと理解者が現れたな」
その瞬間、装置の警告灯が点滅した。
《注意:寝太郎氏の“怠惰エネルギー”が基準値を超えました。
過剰な怠惰により充電容量があふれようとしています》
職員は慌てた。
「寝太郎さん、少し起きてください!」
寝太郎は言った。
「いやだ。今さら起きる理由がない」
システムは限界を迎え、村全体が停電した。
村人たちは暗闇の中でつぶやいた。
「結局、寝太郎が悪いのか」
「それとも、利用しようとした私たちか」
暗闇の中で、寝太郎だけが静かに寝息を立てていた。
三年どころか、永遠に起きる気はなさそうだった。
