こっちの日本昔ばなし #10 笠地蔵(再作成)
オチもひねりもなく展開が気に入らなかったので作り直してしまいました。
先にスキをいただいていた17名の方、大変申し訳ありません。
わがままをお許し下さい。
雪の降る大晦日、貧しい老人は笠を売り歩いていた。
しかし一つも売れず、帰り道で六体の地蔵に出会った。
老人は言った。
「寒かろう。せめて笠をかぶせてやろう」
笠をかぶせ、最後の一つは自分の手ぬぐいを巻いた。
老人は家に帰り、静かに年を越した。
翌朝、家の前に米俵や餅が積まれていた。
村人は言った。
「地蔵さまの恩返しだよ」
老人は涙を流した。
「ありがたいことじゃ」
しかし、その夜。
六体の地蔵が家の前に立っていた。
雪の中、動かず、ただ静かに並んでいた。
老人は震えながら言った。
「お礼なら、もう十分じゃ……」
地蔵の一体が、かすかに口を開いた。
「恩返しではない。
あなたは“六道の入口”に触れたのです」
老人は息を呑んだ。
地蔵は続けた。
「我らは地獄道、餓鬼道、修羅道、畜生道、人道、天道。
六つの道を行脚し、
迷える魂を黄泉へ導く役目を持つ」
老人は後ずさった。
「わしは、ただ笠を……」
「笠をかぶせた時、あなたは“道を選ぶ資格”を得た。
六道のどれかへ進むことができる」
老人は震えた。
「選ばなければどうなる」
地蔵は静かに答えた。
「選ばぬ者は、六道すべてを巡る。
永遠に」
老人は叫んだ。
「そんなつもりはなかった!
わしはただ、寒そうだと思って……」
地蔵は首を振った。
「善意は、時に門を開く。
閉じることはできない」
六体の地蔵が一歩、老人に近づいた。
雪が音もなく積もる。
老人は泣きながら言った。
「どの道を選べばいいんじゃ……」
地蔵は答えなかった。
六つの道は、どれも静かに開いていた。
老人は雪の中へ消えた。
六体の地蔵も、ゆっくりと後を追った。
翌朝、家の前の米俵は消えていた。
老人もいなかった。
村人は言った。
「地蔵さまが連れていったんだろう。
きっと天国へ行ったんだ」
誰も知らなかった。
六体の地蔵が案内するのは、
天国ではなく、六道の果てにある黄泉の国だということを。
世界は今日も平和だった。
表面上は。
