「AIに仕事を奪われる」は100万年遅い — 第6章:イーロンのハイ・インカムは来ない
本記事は書籍『「AIに仕事を奪われる」は100万年遅い — 100万年の観察者が語る、8回目の外部化』の第6章です。
序章から読む → 序章「俺は飽きている」(無料)https://note.com/noglin/n/n8045990e066f
第1章から読む → 第1章「8回の外部化」(無料)https://note.com/noglin/n/n316255dad734
「全員が豊かになる」——イーロン・マスクもサム・アルトマンもそう言っている。
ちょっと落ち着いてほしい。
ここまでは「何が起きるか」の話をしてきた。この章は「何が起きないか」の話をする。
具体的に言うと、イーロン・マスクの「ユニバーサル・ハイ・インカム(UHI)」は来ない。サム・アルトマンの提案も、そのままでは機能しない。「全員に配れば解決」は、構造的に無理がある。
100万年見てきて、「配る」で解決した例は一度もない。
UBIの歴史——500年の夢
まず歴史から入ろう。
「全員に一定額を配る」というアイデア自体は、実は500年前からある。1516年、トマス・モアが『ユートピア』で「窃盗を罰するより、全員に生活の手段を与えるべきだ」と書いた。当時のイングランドでは囲い込み運動(エンクロージャー)で農民が土地を追われ、都市に流入して浮浪者になっていた。窃盗は絞首刑で罰せられていたが、それでも犯罪は減らない。モアの主張は「罰するより配れ」だった。
その後も繰り返し浮上している。
・1795年 トマス・ペインが『土地の正義(Agrarian Justice)』で基本所得を提案。「地球はすべての人間の共有財産である。だから土地の私有から利益を得ている者は、共有地の使用料を全員に支払うべきだ」。
・1960年代 ミルトン・フリードマンが「負の所得税(Negative Income Tax)」を提唱。一定所得以下の人には、税金を「取る」のではなく「渡す」。
・1970年代 ニクソン大統領が家族支援計画(FAP)として実現しかけた。4人家族に年間1,600ドル。下院は通過。上院で否決。左右から挟まれて潰れた。
・2017年 アンドリュー・ヤンが「フリーダム・ディビデンド」(月1,000ドル)を掲げて一躍有名に。
・2017-18年 フィンランドが世界初の国家レベルUBI実験を実施
500年間、知的な人間がずっと考えてきた。でも一度も大規模に実現していない。なぜか。理由は一つ。財源。
そしてもう一つ。政治的合意が取れない。「全員に配る」は、全員が反対する稀有な政策だ。
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