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不動産売却は「良いところを見せる仕事」だけではない。販売前に悪いところまで確認する理由

福岡で不動産売却を専門にしております、野口と申します。

不動産売買の仕事に携わって10年目となり、これまでマンション、戸建、土地、収益物件など、累計300件を超える売買を担当してきました。

今回は、不動産の販売を始める前に行う「物件状況」と「設備」の確認について書きたいと思います。

物件状況報告書や設備表という書類は、売主様からすると、細かい項目が並んだ面倒な書類に見えるかもしれません。

しかし、私はこの2つを単なる契約書類とは考えていません。

売主様を将来のトラブルから守り、買主様が安心して判断するための「説明の設計図」だと考えています。

長く住んだ家の「悪いところ」を書くのは、簡単ではない


不動産の売却は、単なる資産の現金化ではありません。

親から相続した実家、子どもたちと長く暮らしたマンション、家族で手入れをしてきた戸建。

そこには、金額だけでは測れない記憶や愛着があります。

だからこそ、売主様が自分の物件について、

「以前、雨漏りしたことがあります」

「給湯器の調子があまり良くありません」

「近隣との間で、少し気になることがありました」

といった不利になりそうな情報を伝えるのは、勇気がいることだと思います。

少しでも良い条件で売りたいのであれば、できるだけ良い部分を見てもらいたいと思うのは当然です。

ただ、不動産売却では、不具合があること自体よりも、説明されていなかったことの方が大きな問題になります。

古い家であれば、多少の劣化や設備の故障があるのは不自然なことではありません。

買主様も中古住宅であることを理解しています。

ところが、契約後や引き渡し後になって、初めて聞く問題が出てくると、

「ほかにも隠していることがあるのではないか」

という不信感につながります。

一度生まれた不信感は、設備を一つ修理しただけでは、なかなか消えません。

物件状況報告書は、物件の「履歴書」


マンションの管理費、修繕積立金、管理規約、長期修繕計画などは、不動産会社が管理会社などへ調査すれば、ある程度確認できます。

しかし、室内で実際に起きたことは、登記簿や管理資料には書かれていません。

例えば、過去の雨漏りや漏水、地震によるひび割れ、火災や浸水、シロアリ被害、給排水管の故障、近隣とのトラブルなどです。

こうした情報は、売主様への聞き取りと現地確認を行わなければ分かりません。

「物件状況報告書」は、売主様が把握している物件の現在の状態や、過去に起きた出来事を買主様へ伝える書類です。

私は、物件状況報告書を物件の「履歴書」のようなものだと考えています。

履歴書に良い経歴だけを書き、重要な事実を省いてしまえば、後から問題になります。

不動産も同じです。

過去に問題があったとしても、すでに修理が終わっているのであれば、その修理内容や時期まで説明することで、むしろ買主様の安心材料になることがあります。

大切なのは、問題が一度もなかったように見せることではありません。

何が起きて、どのように対応し、現在はどのような状態なのかを整理することです。

契約不適合責任は、売却後にも関係する


物件状況の確認は、売買契約における「契約不適合責任」にも関係します。

簡単に言えば、契約で説明されていた内容と、実際に引き渡された物件の状態が異なっていた場合に、売主様が責任を負う可能性があるというものです。

一般的な個人間の中古住宅売買では、契約書によって責任を負う範囲や通知期間を定めることがあります。

例えば、契約によっては引き渡しから3か月以内に通知された雨漏り、シロアリ被害、給排水管の故障などを対象とすることがあります。

ただし、「3か月」という期間が法律で一律に決まっているわけではありません。

売主様と買主様の立場や、実際の契約条件によって責任の内容は変わります。

また、売主様が把握していた問題を買主様へ伝えていなかった場合には、契約書に免責の記載があったとしても、責任を免れない可能性があります。

なお、宅地建物取引業者が自ら売主となり、一般の買主様へ販売する場合には、買主様に不利となる契約不適合責任の特約が制限されています。単に売主が法人だから一律に2年間というわけではなく、「宅地建物取引業者が自ら売主となる場合」である点に注意が必要です。

そのため、契約書の文言だけを見て判断するのではなく、物件の状態と契約条件を一つずつ整理する必要があります。

現地では、書類だけでは分からない部分を見る


物件状況報告書は、売主様に記入していただくだけで完成するものではありません。

私自身も現地を確認します。

天井や壁に雨漏りや漏水と思われる染みがないか。

窓枠やサッシ周辺に腐食や結露の跡がないか。

床に大きな傾きや沈みがないか。

扉や建具が正常に動くか。

戸建であれば、水平器を使って床の傾きを簡易的に確認することもあります。

もちろん、不動産会社による確認は、建築士や専門業者による建物検査とは異なります。

目視や簡易確認だけでは、建物内部のすべてを把握することはできません。

だからこそ、自分たちが分かる範囲と分からない範囲を整理することが大切です。

分からないことを無理に断定するのではなく、必要であれば建築士、設備業者、シロアリ業者などの専門家につなぐ。

不動産会社の役割は、何でも自分で判断することではありません。

売主様と買主様が判断できる状態を整えることだと思っています。

設備表は、故障の採点表ではない


もう一つ、販売前に作成するのが「設備表」です。

設備表には、キッチン、コンロ、食器洗浄乾燥機、給湯器、浴室、追い焚き機能、温水洗浄便座、エアコン、照明、インターホンなどの有無や状態を記載します。

契約によっては、主要設備について、引き渡し後7日以内に買主様から通知を受けた不具合を売主様が修復するという内容が定められることがあります。

こちらも、法律で一律に7日間と決まっているものではありません。

どの設備を対象にするのか、どこまで修復するのか、いつまでに通知するのかは、売買契約書によって変わります。

設備表で大切なのは、すべての設備を新品同様の状態にすることではありません。

最初から壊れていることが分かっているのであれば、

「食器洗浄乾燥機は故障しており、使用できない状態で引き渡します」

と説明し、買主様が了承したうえで契約する方法があります。

つまり、問題なのは故障していることではなく、故障していることを双方が認識しないまま引き渡すことです。

設備表は、設備を採点するための書類ではありません。

「どの設備があり、現在どのような状態で、どの状態のまま引き渡すのか」を合意するための書類です。

特に水回りは、実際に動かしてみる


引き渡し後のトラブルで多いのは、やはり水回りです。

キッチンのコンロに火がつかない。

食器洗浄乾燥機が動かない。

シャワーホースから水が漏れている。

追い焚き機能が使えない。

給湯器からお湯が出ない。

浄水器が付いていると思っていたが、内部にカートリッジが入っていない。

こうした不具合は、見ただけでは分からないことがあります。

そのため、可能な範囲で水を出し、火をつけ、ボタンを押し、実際に設備を動かします。

特に注意が必要なのが、長期間空き家になっている物件です。

オーナー様が最後に使用したときには正常でも、空き家の間に給湯器や水栓、排水設備などが劣化していることがあります。

「以前は使えていた」という記憶と、「現在も使える」という事実は、同じではありません。

土地として売る予定でも、建物があれば確認する


以前、古い建物が残っている不動産を、買主様が解体して土地として利用する前提で売買を進めたことがありました。

建物は解体される予定だったため、ジェットバスなどの設備については、簡易的な確認にとどめていました。

ところが、契約直前になって買主様から、

「やはり建物も使いたい」

という話が出ました。

建物を使用するのであれば、故障している設備を誰が修理するのかという問題が発生します。

土地として売っているから、建物の設備は関係ない。

そう考えていた前提が、買主様の一言で変わったわけです。

この経験以降、たとえ土地としての売却であっても、建物が残っているのであれば、建物や設備をどのような状態で引き渡すのかを、できる限り明確にするようにしています。

一度の失敗やトラブルを、その場限りの反省で終わらせない。

確認項目に加え、次の取引では同じことが起きない仕組みに変える。

年間30件前後の売買を行う現在でも、この積み重ねを大切にしています。

不動産購入は、基本的に「減点方式」


私は、不動産購入は加点方式ではなく、減点方式だと考えています。

買主様はインターネット広告を見て、

「立地が良い」

「室内がきれい」

「価格も予算内」

と期待した状態で問い合わせをされます。

問い合わせ時点では、物件に対する期待値が100点、場合によっては120点になっています。

そこから実際に内覧をして、

「思ったより暗い」

「設備が古い」

「収納が少ない」

「ここが壊れている」

と、少しずつ減点していきます。

そして、最終的に自分たちの合格点を上回っていれば、購入に進みます。

この途中で、説明されていなかった大きな問題が見つかると、物件の点数だけではなく、不動産会社や売主様への信用まで一気に下がります。

反対に、最初から気になる点を説明していれば、買主様はその内容を含めて判断できます。

不具合があることを早く伝えると、売れにくくなるように感じるかもしれません。

しかし、私の経験では逆です。

隠して高く見せるより、開示したうえで納得して買っていただいた方が、契約は強くなります。

良い売却は「高く見せること」ではなく「納得をつくること」


不動産売却では、価格は非常に重要です。

ただし、高い価格で売り出すことだけが、売主様にとっての価値ではありません。

売却後にトラブルが起きないこと。

予定した時期に引き渡せること。

買主様が納得して契約すること。

売却代金を使って、住み替えや相続、老後の生活など、次の段階へ進めること。

ここまで含めて、初めて良い売却になると考えています。

売主様によっても希望は異なります。

1か月以内に売りたい方もいれば、1年かかってもよいので、できるだけ良い条件を目指したい方もいます。

近隣に知られずに売却したい方もいれば、インターネットに広く公開し、多くの買主様へ届けたい方もいます。

仕事が忙しく、何度も内覧に対応できない方であれば、写真や動画、資料を整え、購入判断が早い買取業者などへ限定して紹介する方法もあります。

不動産会社が一方的に販売方法を決めるのではありません。

物件の状態、売主様の事情、希望する時期、価格、公開範囲を整理し、選択肢を提示する。

最終的にどの方法を選ぶかは、オーナー様が決めることです。

営業は、お客様の判断を奪う仕事ではありません。

情報を整理し、メリットとリスクを伝え、判断しやすい状態をつくり、最後に背中を押す仕事だと思っています。

伝えるべきか迷ったら、まず担当者に話してください


物件について気になることがあっても、それを買主様へ伝える必要があるのか、どのように説明すればよいのか、売主様だけで判断するのは難しいと思います。

すべてを無条件に公開すればよいわけでもありません。

プライバシーに関わる事情や、取引とは直接関係しない内容まで、不特定多数へ伝える必要はありません。

だからこそ、まず担当者に話してください。

その情報が購入判断に影響するのか。

契約書や物件状況報告書に記載するべきなのか。

限られた相手にだけ説明するべきなのか。

専門家の調査を入れるべきなのか。

一つずつ整理していけばよいと思います。

そのためには、売主様が安心して事情を話せる担当者を選ぶことも大切です。

物件の良いところだけを聞く担当者ではなく、不利な点や心配な点まで聞いたうえで、守秘義務を守り、現実的な提案をしてくれる担当者であるか。

私は、査定価格の高さ以上に、ここが不動産会社選びの重要な基準だと考えています。

物件の悪いところを確認することは、物件の価値を下げることではない


販売前に不具合や過去の問題を確認することは、物件の価値を下げる作業ではありません。

曖昧だった情報を整理し、買主様が安心して判断できる状態に変える作業です。

長く住んできた愛着のある物件だからこそ、最後まで丁寧に状態を確認し、次の所有者へ引き継いでいく。

売却によって、売主様やご家族が次の生活へ進み、その物件もまた、新しい家族や事業の場所として使われていく。

不動産会社の仕事は、物件を右から左へ動かすことではありません。

物件の状態と、そこに関わる人の事情を整理し、納得できる形で次の方へつないでいく仕事だと思っています。

福岡で不動産の査定や売却をご検討されている方は、野口までお気軽にご相談ください。

物件の良いところだけでなく、気になることや伝えるべきか迷っていることも含めてお話しいただければ、売主様にとって最適な売却方法を一緒に整理いたします。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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