狐の肝煎り
"狐の肝煎り"という名の銀杏を食べたことがあるだろうか
いちょう並木が美しい狐里村の名産品である
なぜそんな名称なのか?
諸説ある中のひとつを紹介したい
むかし……
狐里村では、滋養に良いと言われる狐の肝を煎って食す風習があった
ついでに毛皮を襟巻きにしたりもする
ある日、狐里村を訪れた若者は"狐の肝煎り"を知り、憂いた
こんなことをしていれば、村人達はそのうちエキノコックス症になってしまうかもしれない
この村にふんだんにあるいちょうの木
いちょうの実は狐の肝に似ていることに気が付いた若者は、実を煎り、
"狐の肝煎り"と銘打って販売を開始した
銀杏は、強い抗酸化作用があり免疫力も向上する
口コミで噂は広がり、狐を狩る手間もなくなり
売れ行きが好調になったころ、美しい女性が手伝いを申し出て来た
しばらく村に滞在していたものの、若者は知らない女性だった
山の奥に暮らし、足が悪いので村にはほとんど出てこないから、
と彼女は説明した
自分一人では回らなくなっていたので、若者は歓迎し
二人で"狐の肝煎り"銀杏を、煎っては販売するうち、
若者は彼女のひたむきな姿に惹かれて恋をした
美しいいちょうに囲まれたこの村で、生涯を終えるのも悪くないと
若者は彼女に求婚した
足が悪いこと、この村から出ることはないこと、を理由に彼女は固辞した
若者にとっては想定内、いつまでも待つつもりだった
そんなある日、狐の襟巻きはしていないものの、長老の風格を持つおばあさんがやって来た
やはり若者は見かけたことがなかった
おばあさんは、彼女が自分の娘であること、足は罠にかかりかけた際のけがが原因であること、自分達は狐族であることを話した
絶滅の危機を救ってくれた若者に感謝し、娘が自ら手伝いに赴いたのだと…
若者は…彼女が狐だと気付いていた
銀杏を煎っている姿の影は、狐だったから…
昔から狐は人間を騙すらしい
若者は風呂に入ったつもりが肥溜めだった、
ってのは絶対にいやだったので、村に入る際は充分に警戒していた
だが、彼女は真摯でひたむきで、人間が忘れてしまっていることを
思い出させてくれたような気さえする
たとえ種族が違っても、彼女と添い遂げるのも悪くない、
覚悟して求婚したのだと…
正直に話す若者に、母娘狐は涙を流し、種族を超える決意をした
宵闇に浮かぶ、黄色に光るいちょうの樹々に見守られ、彼女は若者に嫁いだ
いちょうの樹々の向こうで、長老おばあさんを中心に狐族も見守る
日中、しのついていた雨は、その時きれいに晴れて、
無数の星々までもが、祝うかのようにまたたいていた
天気雨が"狐の嫁入り"と言われるのは、またのちの話である
おしまい
もちろん、ホラバナですので、よしなに…
🙅銀杏は、食べ過ぎると中毒を起こすようです。ご注意くださいね。
📝見出し画像は、優谷美和様の作品です。ありがとうございます。

作ったホラバナです😆
