風まかせ文芸部 | 3秒後
「なんでUターンして、100円高い隣の駐車場へとめるのっ‼️」
小さな駅のそばにある、平地の駐車場。
駅まで歩くには遠い通勤客用の月極と随時客用の一日単位貸しが、混在した駐車場。利用したかったのは一日貸しの方だ。田舎なので驚くほど安い。
なじるように言い募って来たのは、その駐車場を経営するおばさんだった。
「月極しか空いてなかったから」
「あそこの人は、土日は使わないの。
だから、とめてもらって構わないの。
誘導したじゃないの」
「………」
先日…同様のパターンでオーナーであるおばさんが言うのなら、と安心してとめさせて貰った。
帰って来たら、ワイパーの間に紙切れが挟まっていた。嫌な予感通り"ここは月極駐車場だ、無断駐車するな!"の警告だった。
すぐさま、隣に住まいするらしいオーナーおばさん宅を訪ねたが、反応がない。しばらく待つも反応がない。
ナンバーを控えられていて、やっかいなことになるのも面倒だ。致し方なく翌日改めて、おばさん宅を訪ねた。
愛想良くお詫びを言いつつ、聞いてもいない駐車場にした経緯などを話した上、粗品のようなものをくれたのだった。
そのいきさつを話したが、私の顔も覚えていないふうだ。
楽しく過ごした後の帰りぎわ、無用のトラブルを予想させる事態は不愉快以外なにものでもない。
「そういうこともある」
覚えていないどころではなく、常習か。
月極で借りてる方からすれば、土日は使わないとは限らないのだから。アパートオーナーが、借主の長期不在に無断で民泊営業するようなもんだ。
話は終わったはず、と歩き始めたところ、
「ふん、ほこりだらけになればいいわっ!」
どういうこと??
あぁ、隣の駐車場は100円高いが舗装されていない。クルマがほこりだらけになるということか。おかしなおばさんだが、そこまで心配してくれる心根も持ち合わせているのか?
皮肉はまぁいい、最後の捨て台詞がなければ、スルーだった。追加されたコンプライアンス講習は記憶に新しい。
私に瑕疵があるならば、おばさんの駐車場にとめようとしたこと、だけだろう。他責思考の発動は避けておきたい。
いち……に……さん。
みっつ数えて振り返ると、憤怒の表情の消えぬまま、静止画のようにおばさんは固まっていた。
石になったのだ。
どれだけの往来の人に、その姿をさらすのかはわからない。異変に気付いた誰かが救急車でも呼ぶかもしれない。
この魔法は三分経過で元に戻る。おばさん含め、周囲は狐につままれたような気分になるだけで、なんら影響はない、瑣末な魔法だ。
ただ…
石になった情報は、「閻魔帳」「浄玻璃の鏡」では時間がかかりすぎると、タイパにこだわった閻魔の鶴の一声で、またたく間に構築されたという閻魔ネットワークシステムを通じて瞬時に伝達され蓄積される。
当時のSEたちのぼやきは、今なお伝説になっているようだ。
同時に業務の一端は、私たち魔女界にアウトソーシングされた。閻魔の手下になったようで、なにやら鼻白みもするが、ご丁寧に閻魔ルールのコンプライアンス講習まで準備されていた。まぁ何事も協力体制は必要だ。
ポイント制だという噂もあるが正確なところは知らない。閻魔の裁量も大きいに違いない。
希少価値もあるらしい地獄とやら…への、片道チケットを手に入れるチャンスが与えられるということらしい。
ポイントが足りないと一日観光で帰されるとも聞く。結果は閻魔の極秘事項らしく、私たちが知らされることはない。
すでに私の手は離れた、駅への足取りは軽い。
iさんの企画に参加させて頂きます。
いつもありがとうございます😆
