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NOHTE 伊純の一週間 #1

はじめに


はじめまして。能楽師の山田伊純(やまだいすみ)と申します。日本の伝統芸能の能の役者です。このたび、宝生流能楽師の田崎甫(たざきはじめ)さんと一緒に、「NOHTE」というnote記事配信を始めることになりました。

「NOHTE」というタイトルは、「能」と「note」を掛け合わせたものです。能楽にまつわる あれこれ はもちろん、能楽師だからこそ書ける、よもやま話、忖度なき次月のおすすめ公演、過去やこれからの舞台の裏話などを、noteメンバーシップにて、記事やオンラインサロンを通してお届けしていく予定です。

これから私の記事と田崎甫さんの記事を、合わせて全8本(4種類のトピック×2人)を一部公開いたします。それ以降の記事からは、メンバーシップ限定でご覧いただけます。お読みいただいて、気に入って頂けましたら、是非メンバーシップへのご登録をお願いいたします。

こちらでは、記事配信の他に月1回のオンラインサロン(これがメイン・第1回目は9月を予定)や、音声コンテンツ配信などがお楽しみいただけます。メンバーシップにご参加いただければ、能をより身近に感じていただき、公演を観る楽しみも、きっと今まで以上に広がっていくと思います。

伊純の一週間


記念すべき最初の投稿は、私、山田伊純の一週間をご紹介します。“能楽師の一週間”と言っても、本当に人それぞれだと思います。よく「先生方は毎日お稽古三昧なんでしょう?」と言われるのですが、とんでもない(笑)。もし丸一日、お稽古だけに使える日があるとしたら、なんて贅沢なんだろうと思います。実際、道成寺の稽古ですら丸一日費やすことなんてできませんでした。何かと何かの予定の合間、一、二時間だけ稽古をする、なんてことはザラです。……あ、話がそれました。

月曜日

午前中はトレーニングをしました。午前中に予定がない日は、事務仕事をしたり、ジムで身体を鍛えたりするのが私のルーティーンです。午後からは京都のお弟子さんたちのお稽古。今は、自宅近くの和室をメインのお稽古場に、ときどき烏丸御池にある「こどもみらい館」の和室を借りてお稽古をしています。この日は後者の稽古場。ここは御所南にある施設で、名前の通り建物の中は幼児たちの元気な声でいっぱいです。放課後になると小学生もグラウンドにやって来て、いよいよとんでもないエネルギーの溜まり場になります。そんな場所で、能のお稽古をしているとは誰も思わないでしょう。何が良いって、どんなに大きな声で謡っても大丈夫なところ。実際、能楽師がお稽古場を探すとき、この「音」の問題は意外とネックになります。家に稽古舞台を持たない僕のような能楽師は、お稽古場探しにも結構苦労しています。夕方にはへとへとで、稽古を終えて帰宅。めちゃくちゃご飯を食べて寝ます。


火曜日

奈良教室のお弟子さんたちのお稽古日。朝10時頃から稽古が始まるので、前日のうちから準備を整え、すぐに家を出られるようにしておきます。準備というのは持ち物を揃えるだけではありません。それぞれのお弟子さんが何のお稽古をしているのかを確認することも欠かせません。仕舞なら「田村」、謡なら「鞍馬天狗」という具合です。重い演目を稽古中の場合は、型や段取りなども思い出しておきます。

午前のお稽古を終え、昼食を済ませると、奈良でのお稽古の合間には必ずと言っていいほど立ち寄る喫茶店へ向かいます。この喫茶店のコーヒーは格別に美味しい。一杯ずつ丁寧にドリップしてくださるのですが、とにかく時間がかかります。前に3〜4人お客さんが待っていたら、30分は出てきません。まず、お水が出てくるまでに10分くらいかかる。そういうお店です。それに、とても静かな空間なので、複数人で来る方にはあまり向かないかもしれません。僕のように、ひとりで謡本を片手にのんびり過ごす人にはぴったりのお店です。いつか皆さんにもご紹介したいと思っています。

この日は翌日から東京で予定があったので、お稽古が終わると京都へ戻り、そのまま新幹線に飛び乗って東京へ。ホテルにチェックインして一日を終えました。


水曜日

東京のホテルを出発。午前中は打ち合わせが一件あり、お昼からは日本橋界隈を散歩。すると突然、猛烈に魚が食べたくなり、お寿司屋さんへ入りました。一人でゆっくりと江戸前寿司を堪能。寿司は子どもの頃から大好きです。皆さんのお好きなネタは何ですか? 私はアジとゲソ。

夕方からは「日々を彩る能楽お稽古体験2026」のお稽古。日本橋のコレドにある和室で行っています。この教室は、半年間にわたって能楽師と一緒に稽古を重ね、最後に発表会の舞台へ立つという企画です。参加者の皆さんには、宝生流の謡コースか、金剛流の舞コースのどちらかを選んでいただきます。もっとも、3年間続けてきて感じるのは、圧倒的に人気なのは、どちらも受講する「両コース」だということ。参加者は毎年20〜25名ほど。謡は個人指導、舞は団体稽古という形で進めています。今回で3年目になりますが、いろいろな事情が重なって毎年会場が異なります。今年は日本橋での開催。参加者の皆さんからもアクセスが良いと好評ですし、僕にとっても東京駅が近く、京都へ戻りやすいので、とてもありがたい会場です。


木曜日

この日は東京教室のお弟子さんたちのお稽古日。午前中は五反田で、夕方は門前仲町へ移動しました。2年ぶりくらいに稽古を再開したお弟子さんもいて嬉しかったです。能を忘れていなくて有難う。19時頃まで稽古があり、すぐに新幹線に飛び乗って京都へ移動。翌日は京都若手能の申合(もうしあわせ・リハーサルのこと)があるためです。

新幹線では小さくした謡本を片手に、声を出さずに謡を唱えて覚えます。この移動時間に覚える能楽師は多いと思います。謡の覚え方というのも人それぞれなのでしょう。散歩など道中を歩きながら覚える人、コーヒーを飲みながらじっくり覚える人。布団の中に潜って覚える人など、いろいろ聞いたことがあります。能楽師には、毎週のように覚える演目が降ってくるので、いかに効率よく覚えられるかは大事なことだと思います。ただ、この年齢になると、新しく覚えることよりも、以前に謡ったことがあるものを思い出す作業の方が格段に多くなってきました。毎年のように出る演目であれば、思い出す必要もなく、前日にちらっと見るだけで済むこともありますが、2、3年空いてしまうと、僕の場合は一週間はかかります。あ、話がそれました。


金曜日

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