【ショートショート】「サンタさんがくれた最高のプレゼント」
第一回灯火杯でサンタ賞を頂いたこちらの作品の続編です。
よろしくお願いします!
前作を読んで頂いてからこちらをお読み頂くと内容が分かりやすいと思いますので、良かったらご覧下さい。
人を思う優しさが最高のプレゼント。
サンタさんに会った私——紬は、その言葉の意味を考えていた。
あの日からずっと。
どれだけ思っても届かないときがある。
良かれと思ってしたことでも、それが迷惑なときもある。
優しさって何だろう?
プレゼントって何だろう?
「考えれば考えるほど難しいんだよね」
大学生になった私は、高校から付き合っている彼——広太に相談した。
秋を彩った葉っぱたちが、これから帰る場所の色へと変わり始めた木の下で。
「そんなの考える必要ねーよ」
興味なさそうな顔で、すげなく返す広太。
冷たい風が木に当たって、落ち葉が緩くつむじを作る。
「なんでそんなこと言うの?私は真剣なの!」
「はいはい。サンタに会った話だろ?何回も聞いたよ。それよりさ、飯食いに行こうぜ」
幼なじみでもある広太。
小さい頃から一緒だから、彼氏と言っても新鮮味はない。
ほぼ無言のまま、お互いスマホをいじって時間を過ごし、注文したパスタを食べながら授業の話を二言三言。
食べ終わると、
「俺バイトだから。じゃあな」
広太は足早に去って行った。
私たち……
もう終わりかな……
木から千切れた茶色の葉が一枚、ヒラヒラ舞って歩道のタイルに落ちた。
※
アパートに戻ってベッドに寝転び、何気なくスマホに手を伸ばす。
"最高のプレゼント"
と検索窓に打ち込んでみた。
【人生最高のプレゼント】と題したページがヒット。
気になってクリックしてみた。
中は幸せそうなコメントでいっぱいだった。
ブランド物のバッグ。指輪。……えっ車?
プレゼントが?ヤバッ。セレブじゃん。
クリスマス告白。プロポーズ。
いいなぁ。
キュンキュンしちゃう。
……ん?
『クリスマスに彼女が作ってくれた手料理』?
私も作ったなぁ。
去年のクリスマス。
気合いを入れて頑張って。
それなのに、
「来年からはこんなことしなくていいからな」広太にそう言われちゃったときはガッカリだった。
でも、この人にとっては最高のプレゼントだったんだ……。
※
それからも広太との関係は続いていた。
恋人というより、腐れ縁の友達のような感覚で。
「広太、クリスマスどうする?」
「ああ、バイトだなぁ……」
「そっか」
あまりショックはなかった。
なんとなく分かっていたから。
クリスマスの夜。
アパートで一人過ごしていた。
照明を落としてランタンを灯す。
オレンジ色の光が部屋を淡く照らした。
雰囲気だけでも味わいたかった。
ご馳走もプレゼントもなくても。
部屋に一人だとしても。
薄暗い室内で、前に見た【人生最高のプレゼント】のサイトを開く。
スクロールさせながら飛ばし読みしていると、
『クリスマスに彼女が作ってくれた手料理』
と答えていた人のリンクを見つけた。
どんな人なんだろう?
気になってクリックしてみる。
"KNOTE" という題字が現れた。
これはある人へ向けたメッセージ。
恥ずかしくて面と向かって言えねーからここに書き留める。
なんかピュア。
顔がほころんじゃう。
たくさんの記事があった。
『ずっと好きだった人に告って付き合うことになった話』
嬉しさ天上級!今も手が震えまくり!
——フフッ。可愛い。
『同じ大学に合格できた話』
っしゃあああ!これでまた一緒にいれるぜ!
——ホントにその人が好きなんだなぁ。
その他にも、
一生そばにいるぜ!
俺はお前に会うために生まれた!
——あはは。クサッ!……でも、まっすぐな愛情。私も言われてみたいかも。
雑だけど、すごく惹きつけられる文章。
多分、彼女さんに向けて書いているんだろうな。
……心に響く。
春夏秋冬、色々なところに行った風景写真。
——ここ、私たちも行ったっけ。懐かしいな。
——あ、ここも。え、ここも?
見たことある風景ばかり。
偶然……だよね?
……ハッ!
その下にある文字が私の目を引いた。
『サンタさんとお話ししちゃった』
このタイトル……
クリックしようとする手が震える。
押した瞬間、柔らかい風を感じた。
「あ……」
サンタクロスに会ったことあんだよな?
でも俺らは子供じゃねーし、もう会うことはできねーぞ。多分。
だからさ、
バイト頑張って、めっちゃ頑張って、俺がサンタクロスになる!
お前の料理、最高に美味しくて、めっちゃ感動して。俺、胸いっぱいになって。
でもさ、もう作らなくていいからな。
今度は俺が最高のプレゼントをお前にやるんだ。
俺がお前だけのサンタクロスになるんだ!
「……広太?」
まさか……と思いながらも目が潤む。
文字がぼやけてよく見えない。
人を思う優しさが最高のプレゼント。
サンタクロスはそう言ったらしい。
お前、いっつも考えてるよな。
「難しい」って。
お前はそんなの考える必要ねーんだよ。
お前はもう、みんなを優しく包むサンタクロスなんだから。
普段は恥ずかしくてこんなこと言えねーけど……。
俺はそんなお前が大好きだ。
「……バカ。『サンタクロース』だよ」
笑顔で濡れる私の顔が小刻みに震え、スマホに落ちた滴が画面を伝う。
ピンポ〜ン
モニターに映るサンタクロース?
「メリークリスマ〜ス!」
白い髭に包まれた顔が少しずつ姿を現す。
そこには、昔からずっと変わらない懐かしい笑顔があった。
玄関のドアを開けた。
「広太……」
温かいものが、上から下へと頬をくすぐる。
「あ!な……泣くな!ごめん!サプライズしようとしてさ。もっと早くバイト終わると思ったらこんな時間になって」
喜ぶ顔が見たくて
その人のために
一生懸命になれる人
私はふわふわした赤と白の温もりに身を預けた。
「……紬?ごめん。店開いてなくて、プレゼント何も買えなくて……」
たとえプレゼントを
持っていなくても
人の幸せを願う人
広太の胸の中で首を横に振った。
「今日給料日だからさ、何か買ってこようと思ったんだけど」
自分ができることで精一杯
人に寄り添おうとする人
「何もいらない!何もいらないよ」
顔を伏せたまま叫んだ。
「でも、プレゼントがなきゃサンタクロースになれないよぉ」
広太の声が心を包む。
私はゆっくり顔を上げた。
「プレゼントなんかなくたって、広太は私のサンタクロースだよ。それにもう、いっぱいプレゼントもらったし」
スマホの画面を広太に向けた。
「あっ!そ……それは!」
慌てふためく広太が愛おしかった。
そんな人はみんな
サンタクロースなのじゃよ
広太。
いいねの数は5以下の記事ばかり。
だけど私にとって、そんな記事がぜーんぶ最高のプレゼント。
心にある暖炉に火を灯す人は
みんなサンタクロースなのじゃよ
私、またサンタさんとお話ししちゃった。
今度のサンタさんはね、ちょっと雑で不器用で、ぶっきらぼうなサンタさんなんだ。
でも、最高に優しいサンタさんなの。
これからもたくさんお話ししようね。
ねっ、コウくん。
終
こちらに参加させて頂きました!
「Re:クリスマス」ということで、もうこれしかない!って勢いで創作しました。
いいねとかスキとかじゃない。
伝えたい人に伝わることが大切。
そんな気持ちで書きました。
よろしくお願いします🙇
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