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【片想い文芸部】星のイタズラ

星が揺れた夜。
私、黒川愛菜絵まなえは恋をした。

見上げる夜空。
文字通り星の数ほどのきらめき。

ナイトモードで撮影して、SNSにアップしよう!

『スマホで撮影。もっともっと綺麗だったのに、伝わらないよね~』

……と、書いたところで気が変わった。

やめた。
私の場合、この手の投稿をアップしたときの反響は少ないから。

他の人がアップした星の投稿を何気なく開いた。

この星の写真……
私が撮ったのと似ている。

『スマホで撮影。もっともっと綺麗だったのに、伝わらねー』

何この文面?
さっき私が消したのとほとんど同じ。

誰?
消したのに流出した?
そんなバカな。

気になってプロフィールを見る。
"天音"
あまね?
男子?女子?

他の投稿も見た。
テニスをしている人だ。
顔を塗りつぶしているけど男子。
本当は私もテニスを続けたかった。
でも中学で大きな怪我をして諦めた。

身長が低いという悩み。
ボレーが上手くならない悩み。
バックハンドが苦手な悩み。

私が抱えていた悩みと同じだった。
でも、この人は前向きに頑張ろうとしている。
いつの間にか、食い入るように見ていた。

大会の書き込み。
応援したくなった。

負けたときの書き込み。
自分のことのように悲しくなった。

気づけば、天音のページを見るのが日課になっていた。

どこの誰かもわからない人に、私は恋をしていた……。

フォローしよう。
だけど、その勇気が出ない。
クリック1つだけなのに。

震える手。
戸惑う心。
変な人だと思われたらどうしよう。
ブロックされたらどうしよう。

そうだ。
コメントを書き込もう。
いきなりフォローするよりも、まずはコメントしてみよう。

コメント欄に書いてみる。
『はじめまして。私もテニスをしていたんです!悩みも似ていて、すごく親近感が湧きました!フォローしてもいいですか?』

こんな文面でいいかな?
『なんだこいつ?』とか思われないかな?

どうしよう?

動揺で手が震えて、その拍子に書き込みボタンを押してしまった。

あっ!!!

"送信しました"

やって……しまった……

今から取り消したらダメだよね?
通知行ってるよね?

どうしよう……。

天を仰ぐ。
星が揺らめいていた。

でも、明るそうな人だし。
『コメントありがとう』とか、返信くれるかもしれないし。

不安と期待が入り混じって、ドキドキしながら通知を待った。

だけど次の日になっても、通知は来なかった。

気になって何回もアプリを立ち上げる。
やはり返信は来ていない。
気が気でなくて、天音のページに行ってみた。

"このページは存在しません"

……え?

ブロック?
ブロックされると、こんな感じ……なの?

心が沈んだ。
沼の奥の奥まで……沈んだ。

コメントなんてしなければよかった。
そうすれば、今まで通りだったのに。
やっぱり変な人と思われたんだ……。

胸がギュッと締め付けられる。
頬に流れる小さな川。
目に込み上げる熱いものが堰を切ったように止めどなく溢れ続けた。

泣き疲れて眠ってしまい、気づくと東の空が明るさを運び始めていた。
まだ涙が残っていたのか、窓から見える星が揺らいだように見えた。

その時、通知が来た。
スマホを手に取って見たら……

天音からの返信!!

『コメントありがとう!同じ悩み抱えてたなんてびっくり!フォローもぜひ!って、俺もうフォローしちゃいました。よろしく!』

ブロックじゃなかったの?
あの画面はなんだったの?
疑問だらけだけど……

やったー!!

ただ嬉しくて嬉しくて。
そんなのどうでもよかった。



それから、天音とは何回もメッセージのやりとりをした。

でも星が揺らぐとつながらなくなり、また揺らぐとつながる。

天音のページだけ。

他にも不思議なことがあった。
メッセージを交わせば交わすほど、彼は "私" だった。
性別は違うけど、趣味も特技も好きな教科も同じだった。

星が好きなことも、家族構成も、好きな食べ物も、嫌いな食べ物も。
嫌いな先生の名前やペットの名前まで全部同じだった。

『こんなに共通点があるなんて奇跡じゃね?』
そう言いながら、天音も不思議に思っているのは感じていた。

『今度、鴨谷コートで大会があるんだけど来てみない?』
天音から、顔写真付きでDMが届いた。

そのコート……家の近所だ。

『うん、行ってみる!』

と、返事をしたものの……怖かった。
どうしても会える気がしなかった。

また星が揺らいだ。
そのまま大会の日まで、天音と連絡は取れなかった。

大会の日。
鴨谷コートに行った。

期待と共に高鳴る鼓動。

コートに到着した。
……が、そこには誰もいなかった。

———やっぱり……

なんとなくわかっていた。

天音は同じ空間の人じゃないって。

送られてきた顔写真を、少し白く加工して髪を長くするとそれは……

私だったから。



夜に星を見上げると、また揺らめいた。

天音のページに行ってみる。
今日行われた大会の様子がアップされていた。

それは間違いなく、あのコートの写真。
昼間行った時、誰もいなかったはずの鴨谷コートの写真だった。

天音。
あなたの空間では、今日鴨谷コートで大会があったんだね。
私の空間ではね、その大会は来週らしいよ。

天音。
ローマ字で書くとAmane。
並び替えると私の名前。
愛菜絵———Manae。

私が男で、怪我してなくて、今も元気でテニスを続けている空間が存在する。
嬉しく感じながらも、切なさに打ちひしがれた。

私はパラレルワールドの私——天音に恋をしていた。

星の揺らぎがくれた恋。
星たちがもたらした、ときめきの幻。

なんて残酷なイタズラだろう。

どうしようもなく溢れる涙。

永遠に叶うことのない恋が幕を閉じた。

揺らめき流れる星屑が、雫となって闇に溶けた。




こちらに参加させて頂きました!
『星』で参加しました。
私が星が好きだから😊
安直!!!

ストーリーは星らしく(?)ファンタジックなテイストにしました。
片想いとして成立してる……かな?😅

よろしくお願い致します🙇


#片想い文芸部

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