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パウル・クレー~音楽が聴こえる絵画

静岡市美術館で「パウル・クレー展~創造をめぐる星座」を鑑賞しました。

パウル・クレーと聞いて、皆さんはどんな絵を思い浮かべますか?
抽象的で掴み所がない…といった印象をお持ちの方もいるかもしれません。
そもそも、クレーの作品を“絵”と断定的に言い表して良いものか。一連の作品を見て、わからなくなってしまったというのが私の正直な感想です。
クレーの絵には音があって、何か音楽を伴うインスタレーションを鑑賞しているような感覚があったからです。

たとえばこの作品。

パウル・クレー:女の館(1921,191 油彩 厚紙)

解説によると、薄青色のドレスをまとったふたりの女性が、舞台の幕を左右に開いている(よーく目を凝らして、ようやく見えた…)。舞台のすぐ上には三角屋根の館があり、左右には同じく三角屋根の塔のような姿が見える。周囲には、赤、緑、淡い黄色といった、色とりどりの樹木が点在していて、小さな舞台を備えた館の内観と外観、そしてその庭の風景が重なり合っている、と。

それから、写真だと分かりにくいのですが、立体的な凹凸のある点線が描かれていて、画面を水平に分節しています。樹木の樹冠と幹、幕に付された円形の装飾などの形が、五線譜の中に収まる音符を連想させますね。
どんな音楽が聴こえてくるでしょうか。

他にも印象に残ったのが、この作品。

パウル・クレー「座っている少女」(1909,71 ペン・油彩 キャンバス:厚紙に貼付:水彩とペンによる縁取)

クレーが色彩による表現を模索していた時期に描かれたものですが、作画の手順が独特なんです。
皆さんが絵を描くとしたら、まず輪郭線で具体的な形を描いてから、ぬり絵のように色を付けていくのではないでしょうか?
ところがこの作品は、純粋に美的な感覚に従い、即興的に色彩をのせていくことからスタート。そのなかに「座っている少女」を読み取り、少女の姿を輪郭線と明暗によって浮かび上がらせる、という手順で進められました。

確かに特殊。
けれど、自分が音楽を聴く時も、自ずとこういうアプローチをしているのでは?ということにふと気がつきました。特にオーケストラの演奏会で。
私はまず、指揮者の棒の先に広がる空間がどういう色彩に染まっているかを心の目で見て、「ああ、今日の指揮者はこの曲をこういう色で創り上げようとしているのだ」というのを掴みます。
曲の解釈や作曲の背景など、知識面は二の次。まずは色彩を捉えて、その場の音楽を存分に浸かりたいと思ってしまうんですね。

こちらの絵も素敵でした。

パウル・クレー「蛾の踊り」1923,124 油彩転写・鉛筆・水彩、紙:厚紙に貼付:下部に水彩とペンによる帯:グアッシュとペンによる縁取

〝天を仰ぎ見ながら上昇してゆこうとする女性に擬人化された蛾〟が描かれた作品。
暗から明への段階的な移行が垂直・水平方向に重ね合わされて、白く塗り残された上下2つの中心に光のエネルギーを集束させています。
色彩の変化で浮かび上がる十字架が、間もなく訪れる死を暗示しているよう。私の頭の中で、荘厳で美しいフォーレの「レクイエム」が鳴りました。

スイスのパウルクレー・センターに行きたい


ここまで見たら、スイスにあるパウルクレー・センターにも行きたくなってしまいました。
建物の形状がスラーのようにも、強弱のようにも見える流線形で音楽的。
手がけた建築家が〝レンゾ・ピアノ〟であるところにも音楽を感じます。完全にこじつけですが。
(ロゴもおしゃれ↓)

波打つようなパウルクレー・センターのロゴ

いくらなんでもスイスは遠いよ~という方で、静岡近郊にお住まいの方(そうでない方も)は、まずは静岡市美術館で開催中の展覧会に足を運んでみてください。会期は8月3日(日)までです。
ミュージアムショップも充実しているのでおすすめですよ!


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