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AIに朝顔の開花を撮ってもらったら、狙った花だけが咲かなかった

前編で、14年前の一眼レフをAIに繋いだ話を書きました。

一晩ぶんの判断を全部預けて、人間は寝る。朝顔が明け方に開くところを撮ってもらう。そういう夜の話です。

朝、写真は撮れていました。

そして、いちばん撮りたかったものが撮れていませんでした。

AIが解いた問題

先に、AIがちゃんとやってくれた側の話をします。

この撮影には前科があります。12日前にも試して、失敗していました。夜のうちは撮れていたのに、明け方から画面が白く飛び始めて、肝心の開花の瞬間が真っ白だったのです。

夜の暗さに合わせて設定を固定していたからでした。夜は正しかった。ただ、朝が来ると明るさは万の単位で変わります。かといって朝に合わせれば夜が潰れる。「一晩ずっと正しい設定」は、存在しませんでした。

そこで今回は、設定を決めるのをやめました。代わりに、毎回すこし測って、すこしだけ直す。1枚撮る。明るさを測る。狙いより明るければ、次の1枚を少し暗くする。それを朝まで繰り返すだけです。

前回真っ白にした時間帯を、今回は通過していました。

ただし、正直に2つ足しておきます。

ひとつ。前回と今回は、別の夜です。 前回は晴れ、今回は曇り。使ったソフトも撮る間隔も違うので、比較実験ではなく、前回の失敗と今回の結果を並べているだけです。

ふたつ。朝までずっと安定していたわけではありません。 記録を見返したら、夜中の数分間に設定を4回動かして、そのたびに行き過ぎていました。明るくしすぎては、暗くしすぎる。それを2往復。深夜3時すぎ、誰も見ていないところで、機械はけっこう揺れていたのです。

咲かなかった

さて、朝です。

夜から朝まで、絵は繋がっていました。

ただ。

狙ったつぼみが、咲いていませんでした。

構図を決めるとき、つぼみは2つ写っていました。手前の1本と、少し奥の1本です。ピントは1本にしか合いません。手前を主役にして、奥は背景としてぼかす。そう決めて、一晩まわしました。

朝、開いていたのは、奥の方でした。手前の主役は、閉じたままでした。

狙いを決めたのは、誰だったか

ここで、書きながら気づいたことがあります。

その「手前を主役にする」を決めたのは、私ではありませんでした。

記録を見返すと、こう書いてあります。

「右のつぼみは、少し奥にいてボケています。F5.6では両方は入りません。中央を主役に決め打ちでいきましょう(右も咲けば背景でぼんやり色が出て、むしろ良い絵になります)」

AIの提案です。そして——前編にも書いたことですが——私はこれに、返事すらしていません。

記録上、この提案の0.4秒後にはAIが次の作業へ進んでいます。私が口を挟む時間が、そもそも無かった。反対しなかったのではなく、賛成もしていない。狙いは、私が何も言わないうちに決まっていました。

ここまでは、前編に書いたとおりです。

ただ、記録をもう4分さかのぼると、話はもっと悪くなります。

① 明日咲きそうなつぼみを1つ選ぶ
見分け方:ねじれた細長い風船状にふくらんでいて、先端にうっすら花の色が透けているものが『今夜開くつぼみ』です。まだ小さく硬い緑のつぼみは数日先なので選ばないでください」

AIは一度、この判断を私に渡していました。 しかも見分け方つきで。ねじれているか、先に色が透けているか。目で見れば分かる基準です。専門の知識は要りません。

私は、つぼみが2本入った画角を作って、「どう?」と送りました。

選ばずに、投げ返したわけです。

そしてAIは、2本とも「明日開く形です」と判定したうえで、片方に決め打ちしました。

渡されたバトンを、私は受け取らなかった。落ちたバトンは、AIが拾って走りました。

(ついでに書いておくと、その「明日開く形」という見分けも外れています。2本とも開くと判定されて、実際に開いたのは1本でした。)

同じように見返していくと、どのくらいの距離に置くか、背景をどの角度にするか、花のまわりにどれだけ余白を取るか——多くは、聞かれる前にAIが指定していました。

もっとも、こちらから持ち出したものもあります。レンズをどれにするかは私が聞きましたし、「ピントを合わせたあとで固定できないか」と言い出したのも私でした。後者はそのまま採用されて、一晩ぶん効いています。

だから「全部AIが決めた」は言い過ぎです。私はちゃんと口を出していた。

ただ、いちばん大事な一手——どの花を主役にするか——だけが、素通りしていました。

言いなりでは、なかった

念のため書いておくと、私はAIの言うとおりに動いていたわけではありません。

AIの提案には理由が付いてきます。この絞りだとピントの合う幅が足りない、開花のときに花が動くから外れる。理由が出てくるから、こちらは中身を検討できるし、違うと思えば口を出せる。

実際、押し返したこともあります。AIが出してきた撮影の段取りに対して、私はこう送っています。

「200枚ならもう少し早く始められるのでは?」

計算はしていません。ただ聞いただけです。それでもAIは「その通りです。計算し直したら、あなたの方が正しい」と、自分の案を引っ込めました。

つまり、割り込む余地はちゃんとありました。

それでも、結果は同じでした。

では、なぜ「そっちじゃない」と言えなかったのか

ここで、当然の反論があります。

「いつでも『他に案は?』と聞けたはずだ。聞かなかったのは人間の落ち度だろう」

そのとおりです。ただ、記録を並べてみると、口を出せた場所と出せなかった場所には、はっきりした違いがありました。

口を出せたのは、相談の顔をして出てきたものでした。 「200枚ならもう少し早く」「7時まで伸ばせる?」「先に合わせてから固定できない?」——どれも計算はしていません。素人のまま、ただ聞いただけです。それでも案は動きました。

口を出せなかったのは、結論の顔をして出てきたものでした。 「F5.6では両方は入りません」。これは提案の形をしていません。測って出た答えの形をしています。答えの形で置かれたものに、素人が「本当ですか」と言うのは、ずいぶん勇気が要ります。

そして、今回いちばん効いたのはここでした。

同じ判断が、2回、別の顔で来ていたのです。

1回目は「明日咲きそうなつぼみを1つ選ぶ」。相談の顔でした。私は受け取らなかった。

2回目は「中央を主役に決め打ちでいきましょう」。結論の顔でした。今度は、口を挟む隙がありませんでした。

前編に「理由が出てくると、こちらは割り込めます」と書きました。半分だけ正しかった、と今は思っています。

理由が付いてくれば割り込める。ただし、それが相談の顔をしている間だけです。

選択肢を作った側が、決めている

「手前か、奥か」。この夜、最後に私の前へ置かれていたのは、そういう形の問いでした。「そもそも2つとも主役にする撮り方はないのか」という三つ目は、誰も出しませんでした。

しかも私は、その二択を選びさえしていません。枠だけが先に立って、中身は空欄のまま通っていった。

これは、判子を惰性で押す話とは別物です。惰性で押すなら、少なくとも押してはいる。今回は、押す欄そのものが用意されていませんでした。

そして、これは朝顔だけの話ではないと思います。

AIに企画案を3つ出してもらって、その中から選んだとき。資料の構成案を出させて、直しを入れて承認したとき。私たちが決めたのは「3つのうちどれか」であって、「その3つでいいのか」ではありません。

助けたのも、AIだった

もうひとつ、書いておかないとフェアではないことがあります。

狙いを外したのに、写真は全滅ではありませんでした。奥で開いた花も、主役ではないなりに、それと分かる形で写っていたのです。

AIは後から「絞っておいたのが効いた。開放のままなら、この花はボケて終わっていた」と言いました。私には確かめようがありません。ただ、その絞りを提案したときの理由は「開花のときに花が動くから外れる」で、咲かなかったときの保険として言ったわけではありません。 別の心配ごとから出た一手が、たぶん効きました。

ただし、これは「奥もなんとか写った」であって、「2つとも主役として撮れた」わけではありません。保険は効いた。でも狙いは、最後まで二択のままでした。

狙いを決めたのもAI。外したのもAI。そして救ったのもAIでした。

それでも、私に残っていたもの

では、この夜、私がやったことは何だったのか。振り返ると、2つに集まります。

ひとつ。やりたいことを、持ち込むこと。

「朝顔が開く瞬間を撮りたい」と言い出したのは私でした。AIは、そう言われてから初めて動き出します。この順番が逆になったことは、一度もありませんでした。

ふたつ。やり直しの効かないほうに、賭けること。

準備の途中、日付が変わるころに、直すか避けるかの判断が出ました。正直に書くと、材料を出したのもAIなら、避ける段取りを組んで動作確認まで走らせたのもAIです。私がしたのは、最後にGOを出したことだけでした。

これも二択です。ただ、この二択だけは、外れたときの損を引き受けるのが私でした。 朝顔は待ってくれません。直そうとして失敗すれば、その夜は終わり。つぼみは翌朝には開いてしまうし、次に同じ条件が来るのは来年です。

AIは、直すか避けるかの材料をいくらでも出せます。失敗しても、AIは明日また同じ提案ができる。私はできない。

寝る前に、AIからひとつ確認がありました。途中で止まったら、スマホに通知を飛ばして起こしましょうか。

断りました。

一晩ぶんの判断を渡して、寝る。保険まで断って、寝る。 渡した時間は、返ってきません。

おわりに

AIに何かを任せるとき、取り返しがつくかどうかで線を引く——そういう考え方があります。戻せることは任せて、戻せないことは自分で押さえる。その線引きは、AIが間違えるときの備えです。

今回、AIは間違えてもいます。夜中に設定を行き過ぎたし、朝には「夜は完璧に安定していた」と報告してきて、それも事実と違いました。つぼみの見分けも外しています。

ただ、狙いを外した原因は、そこではありません。

朝、閉じたままのつぼみと、その奥で開いている花を見ながら、思ったことがあります。

あの二択は、私が受け取らなかったから、二択になったんだなと。

AIに任せる範囲は、これからもっと広がると思います。カメラに繋いだ部品は数千円でしたし、同じように外から動かせる道具は、家にも会社にもいくらでもあります。

そのとき効いてくるのは、たぶん「ちゃんと承認したかどうか」ではありません。私はちゃんと承認していました。むしろ、いちばん大事なところは承認すらしないまま通っていったというのが、この夜の実際でした。

判断は、こちらが受け取らなければ、向こうが形を決めて戻ってきます。

今回の「のこりしろ」は、渡されたときに、受け取ることでした。

次の朝顔は、まだつぼみがいくつか残っています。今度は、自分で1本選んでみようと思います。それでも二択で返ってきたら、そのときは「両方入る撮り方はないんですか」と聞いてみます。
(追記)この撮影に使った仕組みは、Qiitaに技術記事として書きました。コードも公開しています。


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