探り合い
「ヒィ!」
生暖かい体液を舐めてるんじゃないかと思える気温の朝、階下に降りてきた夫を見て私は叫んだ。私は床に尻もちをつき、後退りした。
「や、やめて、、、!」
夫の首から肩にかけてまぁるく体液が滴っている。
汗だ。
それは向日葵の根本に水やりしたみたいに首を中心に濡れていた。
夫は音もなく私に近づいた。
寝室にはエアコンがない。
そもそも2階の部屋にはエアコンがないのだ。形ばかりある部屋もあるが、老朽化で故障して使えない。
だから、夫の起きた後は、ベッドの上に人型の汗じみが広がっているのだ。昨日シーツもベッドパッドも洗濯したばっかなのに。
今日のウォーキングは10分短縮した。頭痛がした。鏡でみた私の姿は、朝起きたときの夫より激しい姿だった。向日葵の花のてっぺんからザァザァ水やりしたみたい。
首を流れる汗が光っていた。
「ヒィ!」
私もまた、私以外の誰かからそう言われるだろう。
私はそのまま音もなく猫に近づいた。
リビングの息子のいない机の上で無防備に眠りを貪っている猫の姿に私は不敵な笑みを浮かべた。息子は早くに夏季補講に出かけていた。
猫の真っ白な毛に、汗がぽとり、と落ちた。

夫とアイスコーヒーを飲む。今日はnoteに何書こうかな何かネタない?
夫が話してくれたのは、最初、世界情勢の話かと思った。でもフィクションだった。利益を巡る戦争の話。
何だフィクションか。
私は掃除機をかけ、洗濯物を干す。
吹き消したロウソクの煙のように、さっきのフィクションがうっすらと現れては揺らいだ。
後々糸をひくのは、何気ない、つまらないような話なのだ。火を消した後も匂いが残り続ける。
意味はわからない。
でも、何か引っ掛かる。
何かはわからない。
探る。でもわからない。
わからないのは頭痛のせいか?
朝から襲う疲労感のせいか?
猫が突然えずいて、吐いた。

