【駐在員の本音】2年目に訪れた“取り残され感”。日本で進む人事異動を見て思ったこと
第28話
生活には慣れた。
英語での買い物も、車の運転も、もう当たり前になった。
会社のシステムにも、現地のスタッフとのやりとりにも、初めての緊張はない。
けれど、2年目を迎えたある日、ふと日本の社内ニュースを読んで、胸の奥にざらりとした感情が広がった。
「あれ、自分だけ時間が止まっている?」
日本では春の人事異動があり、同期や後輩が新しい役職についていた。
知っている名前を見つけるたびに、胸が少しだけ痛んだ。
自分も同じ場所にいたら、その流れに乗っていたのだろうか。
慣れの先にあった空白
1年目は目の前のことで手いっぱいだった。
家探し、車購入、銀行口座、医療保険…。
次から次へと押し寄せる課題に追われる日々。
けれど2年目になると、その“波”が嘘のように落ち着いた。
仕事も生活も安定し、日常が回りはじめる。
そこに生まれたのは、静かな余白だった。
その余白は、最初こそ「楽になった」と思わせてくれた。
しかし次第に、余白は“空白”へと変わっていった。
成長していない気がした日
英語は使っているはずなのに、1年目ほどの伸びを感じない。
業務もルーティン化し、目に見える成果や新しい刺激が減っていく。
「成長しているのだろうか?」という問いが、頭から離れなかった。
給与明細を開けば、確かに数字は増えている。
会社負担の家賃、1.5倍になった基本給。
それは駐在という立場の“成功の証”のはずだ。
けれど、画面を閉じた瞬間に押し寄せてくるのは、
「数字は増えても、キャリアの時間は進んでいないのではないか」という不安だった。
日本と比べてしまう自分
日本のオフィスでは、新しいプロジェクトが始まっている。
同じ年代の社員がチームリーダーとなり、後輩を引っ張っている。
その姿がニュースやSNSで流れてくると、胸の中で小さな焦りが膨らんだ。
アメリカで過ごす毎日は確かに充実している。
けれど「この経験が、日本に戻ったときにどう評価されるのだろう?」
そんな問いに答えを出せないまま、日々が過ぎていった。
不安を抱えながら、業務に集中するしかなかった
不安が消えることはなかった。
むしろ、時間が経つほどに静かに積み重なっていった。
それでも、与えられた業務をこなすしかない。
自分にできることは、今日の仕事を丁寧にやりきること。
成果を残すことが、唯一の拠りどころだった。
「これでいいのだろうか」と自問しながらも、
目の前のタスクを片付けることでしか、不安を押し込められなかった。
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