初夏の山形旅。銀山温泉と高畠ワイナリーへ。
銀山温泉を7年ぶりに訪れた。
銀山温泉の最寄り駅の大石田駅に着いて、まず向かったのは最上川千本だんご。
おだんごは手にもつとずっしりと重たい。
お皿に残ったぶんでもう一本おだんごを作れちゃいそうなほどたっぷりの餡を、スプーンですくって食べる至福のひととき。

夫はあんことごま
✴︎前日までの予約注文で並ばずに購入できます
駅まで戻って送迎の車で銀山温泉へ向かう。
田植えをしている水田地帯を抜け、少し山に入ったところで谷地へと降りていく。谷地に川の両岸に温泉宿が建ち並ぶ。
宿泊先は藤屋旅館。
前回銀山温泉に来たときも宿泊した全八室の小さな宿だ。
以前訪れたときは真新しい輝きを放っていた隈研吾建築だが、くすんだ木の風合いに時の経過を感じさせる。でもこれはこれでまわりの伝統的な建物の並ぶ景観に溶け込んでいて、元々こうなることを見越していたのかもしれないとも思う。

銀山温泉街からしてすでに非日常な街並みだけれども、この宿に入るといっそう現実と隔たった世界へと潜り込んだような気分になる。
エキゾチックなお香の薫りが漂い、観光客のざわめきは遠のき、川のせせらぎが聴こえてくる。

宿へと向かう送迎の車で一緒になったマダムが、ロビーでウェルカムドリンクを飲みつつ「銀鉱跡を見たいけど、私ひとりで歩いていくのは不安だからどうしようかな…」と話していた。マダムの旦那さんは脚が悪いようだった。
もしよかったらご一緒しましょうかと話しかけ、一緒に行くことにした。
私の両親よりも年配のマダムだが、坂道を登る足取りは私たちよりも軽やかだった。「YouTubeを見て銀山温泉について予習してきたの!」と言いながら、私の夫が持っていたカメラを見て、「ゴープロね!ユーチューバーさんかしら」と目を輝かせる。
いえ、ユーチューバーではないんです、と夫が答えると、あらぜひやってくださいよと言われる。
鉱山の入り口までたどり着いたけれど、残念ながら今シーズンはまだオープン前とのこと。
残念でしたねと宿に戻ってきたが、お話上手なマダムとのお散歩は楽しかった。
若い頃にたくさん旅をするといいわ、たくさん歩けるうちに、と背中を押された。

宿に戻ってうたた寝をした。
川のせせらぎを聴いているうちに、いつのまにか眠ってしまっていた。
目覚めると身体が冷えていたから、お風呂に入る。五つある風呂はすべて貸切風呂で、石や木や竹など、それぞれ意匠が異なる。
お風呂のあとは夕食!
品数が少なめでリーズナブルな嬉懐石というプラン。
以前来たときもこのプランで満足だったから、今回もグレードアップせずにこのプランにした。

まずは前菜から。
甘くすっきりとした白ワインによく合う前菜たち。
ひとつひとつ全部おいしい。
特に若竹煮がおいしくて、お出汁もごくごく飲み干してしまった。最近新鮮なたけのこを食べたばかりだったが、自分ではこれほどおいしくつくれない。

「〆はお蕎麦なのですが、ごはんもお出ししましょうか」と女将さんが尋ねてくれた。コースだと最後にごはんが出されることが多いけれど、すぐに持ってきてくれる。おいしいおかずをごはんと一緒に食べたい私にはとてもうれしい提案だ。
ごはんはつややかでおいしくて、おかわりもした。







食休みした後は、夜の散歩へ。昼間は観光客でいっぱいだった温泉街も夜はひっそりと静かだ。
ガス燈の灯りに照らされた温泉街を歩いていると、いつの時代かに迷い込んだ気分になる。




翌朝は早く目覚めたから、朝風呂に入ったあとに朝食をとる。
前夜にたらふく食べたのに、食べはじめると、するする食べられる。


旅館の朝ごはんはしみじみとおいしい。
朝ごはんもおかわりして、きれいに完食した。こうして振り返っていると、自分の食欲が怖い。
夕食も朝食も同じ方が配膳をしてくれた。丁寧で細やかで、それでいて演技っぽくなく、温かな接客がとても素敵だった。
このあとで訪れたいくつかのお店でも、みんな接客が温かくてにこにこしている方ばかりだった。
銀山温泉街を歩き、前夜の食前酒だったワインをお土産屋さんで手に入れて、向かうは高畠ワイナリー。
ワインを手に入れたのにワイナリー?
もう一本くらいなら持ち帰れるかなと言い訳しながら、電車を乗り継いで高畠へと向かう。
電車のなかで高畠駅の周りを調べていたら、おいしそうなラーメン屋さん「TAKAHATA 山喜」を発見した。山形のお蕎麦はもちろんラーメンもおいしいのよね。旅館で手打ち蕎麦は食べたが、ラーメンも食べたいなと思っていたところだった。朝ごはんをお代わりしたからそんなにお腹は空いていないけど。
高畠駅に着いてから、とりあえずラーメン屋さんのほうへと歩いていく。
口コミによれば、人気店のためスープ切れで時間前に営業終了することもあるとのこと。行ってみて閉まっていれば潔く諦められる。
お店はまだ営業していた。平日だったから待っている人もいない。
お腹は空いていなかったはずなのに、お店の前に来たら食べられそうな気がしてきた。意を決してお店の中に入り、私は塩ラーメン、夫は醤油ラーメンを注文した。

結果、お店に入って大正解だった。
今まで食べたなかで一番かも、というくらいおいしいラーメンだったのだ。研ぎ澄まされたスープとツルツルもちもちちぢれ麺。肉の旨みを存分に感じられる絶品チャーシュー。これぞラーメン、という王道を極めた味。
おいしすぎてお腹が空いていないはずなのにするする食べられた。なんならチャーシュー麺大盛りでも食べられたんじゃないかとすら思った。他の人が食べていた辛味噌ラーメンも赤魂ラーメンもおいしそうだったな。
食後は高畠ワイナリーへ。


『泣いた赤鬼』の作者さんが高畠出身だから、それにちなんだネーミング

ラーメンを食べたあとで、外も日差しが強かったから、冷えたワインが身体に染み渡る。
無料の試飲コーナーでは、自由に好きな量を好きなペースで試飲できた。ワインの試飲会に行くと丁寧に説明しながら注いでもらえるものの、自分のペースで飲めないため、こうやって自分の好きなペースで試飲できるのがうれしい。
吟味の末、「青鬼の雫」を購入したあとは、売店でぶどうソフトを購入して葡萄畑の前で食べた。

以前銀山温泉へ来たときは付き合って4年目の記念日で、ちょうど今回と同じ季節の旅だった。それから7年が経つから付き合って11年目になる。
前に来たときはまだ初々しい私たちだった。浴衣姿ではにかむ写真がスマホに残っている。
何もかもがキラキラと輝いて見えていたあの頃も懐かしいけれど、遠慮なくごはんをおかわりをして、食べ過ぎだよと笑い合っている今もいいなと思う。
今日は4回目の結婚記念日。
冷えた白ワインにあうご馳走を、今夜のために準備したい。
