創作大賞2024 ホワイトトラッシュ #5
▪️退勤後
「おー奇遇だね。」
「あんたが呼んだんだろ笑」
「あ、そっか笑」
ゴールドのショートヘアに黒のワンピースが映えていた。満面の笑みで現れたミチに白石は満足した。
「なんか良いことあったの?」
「ん?何で?」
「突然連絡来たからさ」
「あ、別に。突然連絡したらダメなの?じゃあこ」から毎日連絡したほうがいい?笑」
「それはウザい笑」
「あ、ここだわ」
とりあえず予約した水槽付きの個室ダイニングは意外に高級感があった。内心心配していた白石は幸運に感謝した。
「最近なにしてんの?」
カクテルで乾杯した後、わざと興味が無さそうに聞いた。
「んー、あー普通?別に特に何もないね。」
「てかその帽子可愛いね。新作?」
「あ、これ今日伊勢丹で買ったんだよ」
「いいなー、俺も買おうかな」
「良いと思う。お揃い買ってよ。」
「じゃあお店連れてってよー」
「お、良いよ。お買い物デートだね」
「だね」
「もしかして元気ない?」
「いや別に。ヤバ客いてさどうしよかなって」
「ヤバい客?切ればいいじゃん」
「普通そうだよね笑でもこんなあたしでも意地ってかプライドとかあったりして」
「なんそれ笑かっこいいね笑」
「でしょ笑ってかあたしもうすぐ誕生日なんだよね。」
「あーそうだよね。期待しといて。ディズニー貸し切るから笑」
「やば石油王じゃん笑」
「実質石油王みたいなもんだからな笑」
「いや全然違うだろ笑」
「でも知り合いがこの前それやっててさ、開演前の二時間くらい貸切にしたらしいよ。まーとにかく楽しみにしといて」
「そんなことされたら逆にひくわ笑。考えてくれててありがとね。」
「そいえばこの仕事長いの?」
「あ、3年くらい?」
「いや何歳だよ笑」
「17からやってるからねー。私片親なんだけど母親が男に夢中で放置されててさー、中学卒業して家出してからはバイト頑張って生活費稼いで来たんだー。最初は飲食店とかやってたけど稼げなすぎて、歳偽って水商売始めた訳よ」
「逞しいな」
「お、見直した?」
「いや、もう見方が360度変わったわ」
「変わってないから笑」
和やかな宴は終わり2人はタクシーでミチのマンションへ向かった。
ミチはタクシーを降りた瞬間嫌な視線を感じた。何だか怖かったが横の楽しそうな白石の顔を見ると、言い出せず彼を急かしてエントランスへ向かった。
駐輪場の暗闇に人影を見た気がしたが、汚れた野良猫が現れて気のせいだよなと自分に言い聞かせた。
▪️痛客
惨めな男だな、というのが第一印象だった。
年の候は40代中盤だろうか、小太りで、伏し目がちで目が全然合わない。ブカブカのジーンズにアウトレットで買ったような変てこなデザインのブランドTシャツをインして申し訳なさそうにソファに佇んでいた。
余りにも哀れなので、同情して色々質問をしてあげたら、それが良くなかったのかもしれない。
緊張を隠しているのか話がかみ合わないが、バツイチで既に10年くらい独身だという。
こんな男が結婚出来るわけないと思ったが昔は運送会社で正社員として働いていたと話しているので、今とは状況が違ったのかもしれない。
趣味は車とバイクで収入の殆どをそれに費やしているんだそうだ。離婚後は実家に戻っているので家賃・食費は掛からない。
週5で配達員をして得た収入で割と金があるんだと息巻いたのが印象的だった。絶対金ねーだろ。
それから毎週来店するようになり分かったのは、こいつはバイクや車のように女もお金を払えば確実に自分のものなるものだと考えていていること。
10万払ったから手をつなげ、100万も払ってんのに何でハグも出来ないんだ、と次第に支払金額に応じた肉体的な報酬を強く要求するようになった。
加えて執着心が異常に強く、別のキャストには目もくれず毎回をあたしを指名する。
そんなに稼ぎも無いはずなのに来店頻度が高いから恐らく借金して来ている。
お目当てのレアカードが出るまでガチャ回し続けるオタクみたいに手に入れないとどうしても気が済まない性分らしい。
▪️ライブ配信
「今日は気分がいいんで久しぶりに配信やりまーす。ん?怖い思いしたことある?いやあり過ぎるわ。
最近も超ヤバい人いて。でも今回は本当にヤバいかもと思ってはいる。40代のUberEaterのおっさんなんだけどさ。
色んな客見てきた中で、あいつはなんか匂いが違うんだよね。なんか殺気?、感じて。あれ多分本気なんだわ。
私も一応No.2だからそこそこ指名入る訳で、そいつ長時間担当するの無理な訳じゃん。
だから他のお客さんと掛け持ちで接客すんだけどさ、席ちょっと離れるとボーイ呼んでさ手元見たらストップウォッチで接客した時間計測してんの、そう、それだけでもう恐怖なんだけど、
「あいつ俺のことバカにしてない?殺しちゃっていい?俺失うもん無いから」って言ったみたいなんだよね。
ボーイが「いや、自由無くなりますよ」って言ったらさ「刑務所入ったって別に良いんだよ。
どうせこの先に良いことも一つも無いんだから。」って真顔で答えたらしくてさ。
言っちゃえばキ●ガイじゃん笑。普通だったら即出禁にして終わる話なんだけどさ、なんか私はそれが悔しくてさ、だから復讐じゃないけどされ、それこそ魂込めてあいつの人生壊してやろうと思ったんだよね。
でさ、あいつ何回も店外要求してくるからじゃあ私にいくら払えるか覚悟見せてよって、って言ったら
次の週に愛車手放したってガチャガチャカスタムした気持ち悪いバイクの写真何回も見せてきた後でシャンパンタワー入れてさ、
あいつただの配達員だから年収200万円くらいだと思うんだけど、そう考えたら結構気合入ってんなーって思って少し感心したんよ。
で、あいつもう50近いんだけど実家暮らしな訳よ。実家暮らしで女口説くのがそもそも意味が全く分からないんだけど、そういう感覚はあいつにはないんよね。
あ、で、あいつ母親は良く分かんないけどいなくて父親と二人で住んでるらしくてさ、あいつが換金出来る資産ってあと家と土地?ぐらいかなって思って。
それを全部売り払わせるが目標かな。いやまじで。普通はそこまでしないじゃん?でもあいつ本当にイカれているから、あり得るかもなんだよね。
そんでさ、もう俺何にもないよって言ってきたタイミングで出禁にしてもらうかなって。いやマジで。
本当に頭にきてるし私の人生を現在進行形で壊してるわけだから、何も思わないよね。いやー喋ってたら逆に燃えてきた。
そう、命懸けでやってるかも笑。私ほんと頑張ってるわー。マジ褒めろって。本当に私すごいなって思うよ」
