災害後に会社を守れますか?中小企業のBCP対策
こんにちは、中小企業診断士のオサナイ先生こと小山内一志です。
2025年12月8日(月)、青森県東方沖を震源とする大きな地震が発生しました。震度6強を記録したこの地震は、青森県では史上初の震度6強ということで、大きな衝撃が走りました。
この地震を受けて、改めて考えたいのが「BCP対策」の重要性です。
今日は、中小企業の皆さんにとって非常に大切な事業継続計画(BCP)について、詳しく解説していきたいと思います。
BCP対策とは何か?
BCP(Business Continuity Plan)とは、「事業継続計画」のことです。地震、台風、大雨による浸水など、様々な災害が発生した時に、事業を止めずに継続するための計画を指します。
東日本大震災以降、このBCP対策の重要性が強く認識されるようになりました。なぜなら、災害が発生した時に事業が止まってしまうことで、会社自体が倒産してしまうリスクがあるからです。
具体的には、以下のようなリスクが考えられます。
顧客の流出: 事業が止まることで、お客様が競合他社に流れてしまう
取引先との関係悪化: 納期遅延などにより、取引先との信頼関係が崩れる
従業員の生活への影響: 事業が再開できなければ、従業員の雇用や生活を守れない
資金繰りの悪化: 収入が途絶える一方で、固定費は発生し続ける
こうしたリスクを最小限に抑えるために、BCP対策が必要なのです。
中小企業のBCP策定率は驚くほど低い
では、実際に中小企業のBCP策定率はどれくらいなのでしょうか?
帝国データバンクの2025年の調査によると、中小企業のBCP策定率は17.1%にとどまっています。つまり、中小企業の約8割以上が、災害への備えができていないということになります。
なぜBCP策定が進まないのか?
BCP策定が進まない理由として、以下のような声が挙げられています。
スキルやノウハウがない(最も多い理由)
人手が足りない
時間がない
費用を確保できない
そもそも必要性を感じない
確かに、日々の業務に追われている中で、災害への備えまで手が回らないというのが現実だと思います。「うちは小さな会社だから関係ない」「これまで大きな災害に遭ったことがないから大丈夫」と考えている経営者の方も多いでしょう。
しかし、災害はいつ起こるか分かりません。今回の青森の地震のように、ある日突然、大きな災害に見舞われる可能性は誰にでもあるのです。
国の支援制度「事業継続力強化計画認定制度」とは?
そこで、国も中小企業の皆さんがBCP対策に取り組みやすいように、様々な支援制度を用意しています。その中でも特に重要なのが、「事業継続力強化計画認定制度」です。
制度の概要
この制度は、中小企業が策定した防災・減災の事前対策に関する計画を、経済産業大臣が認定するというものです。
この制度の最大の特徴は、簡易なBCPとして位置づけられているということです。つまり、難しい専門知識がなくても、ある程度のフォーマットに沿って作成すれば、認定を受けることができます。
認定を受けるメリット
認定を受けると、以下のような大きなメリットがあります。
1. 税制優遇
中小企業防災・減災投資促進税制が適用され、認定を受けた事業者が計画に記載された防災・減災設備を取得した場合、特別償却16%〜18%の税制措置を受けることができます。
対象となる設備例:
自家発電機
排水ポンプ
貯水タンク
制震・免震装置
浄水装置
揚水ポンプ
※この税制優遇は、認定を受けた日から1年以内に設備を取得し、事業の用に供した場合に適用されます。期限は令和7年(2025年)3月31日までとなっていますので、早めの対応をおすすめします。
2. 金融支援
日本政策金融公庫などの低利融資を受けやすくなります。これにより、BCP対策に必要な資金を調達しやすくなります。
具体的には、以下のような融資制度が活用できます。
中小企業事業の各種融資制度における金利優遇
信用保証協会の保証枠の拡大
3. 補助金の加点措置
これが非常に大きなメリットです。様々な補助金の申請時に加点が得られるため、採択率が上がります。
対象となる主な補助金:
小規模事業者持続化補助金
ものづくり補助金
IT導入補助金
事業承継・M&A補助金
補助金の採択率が上がるということは、事業の成長にもつながるわけですから、これは非常に大きなメリットです。
どうやって計画を作ればいいのか?
「でも、どうやって計画を作ればいいのか分からない…」という方も多いと思います。ご安心ください。国や関係機関が、しっかりとサポート体制を整えています。
1. 中小企業庁の手引きを活用
中小企業庁のホームページには、**「事業継続力強化計画策定の手引き」**が公開されています。この手引きに沿って作成すれば、誰でも計画を策定することができます。
手引きには、以下のような内容が含まれています:
自社の事業活動の概要
想定されるリスクの洗い出し
重要な事業の特定
事前対策の検討
訓練の実施計画
2. 中小企業強靱化支援ポータルサイトを活用
中小企業基盤整備機構が運営する**「中小企業強靱化支援ポータルサイト」**では、以下のようなサポートが受けられます。
策定事例の公表
専門家派遣
セミナー・シンポジウムの開催
策定支援ツールの提供
このポータルサイトには、実際に認定を受けた企業の事例も多数掲載されていますので、参考にしてみてください。
3. 専門家に相談する
そして、もちろん私たち中小企業診断士などの専門家に相談していただくことも可能です。
私たちは、企業の実情に合わせた計画策定のお手伝いをさせていただいております。具体的には、以下のようなサポートを行っています。
ヒアリングによるリスクの洗い出し
事業継続のための優先順位付け
具体的な対策の提案
計画書の作成支援
申請手続きのサポート
一人で悩まずに、ぜひ専門家の力を借りてください。
自治体の支援制度も要チェック
さらに、自治体によっては独自のBCP策定支援事業を行っているところもあります。
例えば、宮城県では「中小企業等BCP・事業継続力強化計画実践支援事業」として、補助金を用意しています。こうした地域独自の支援制度を活用すれば、さらに手厚いサポートを受けることができます。
皆さんの地域でも、こうした支援制度があるかもしれませんので、ぜひ地元の商工会議所や商工会、自治体の産業振興課などに問い合わせてみてください。
実際にBCP対策で何をすべきか?
ここまで制度の説明をしてきましたが、「実際に何から始めればいいの?」という疑問を持たれている方も多いと思います。ここでは、具体的なステップをご紹介します。
ステップ1:自社のリスクを洗い出す
まずは、自社にどんなリスクがあるのかを洗い出しましょう。
自然災害リスク: 地震、台風、大雨、豪雪など
設備リスク: 停電、断水、通信障害など
人的リスク: 従業員の安否、出勤困難など
サプライチェーンリスク: 仕入先の被災、物流の停止など
ステップ2:重要な事業を特定する
次に、自社の事業の中で「これだけは止めてはいけない」という重要な事業を特定します。
例えば:
製造業であれば、主力製品の製造
小売業であれば、顧客への商品提供
サービス業であれば、既存顧客へのサービス提供
ステップ3:事前対策を検討する
重要な事業を継続するために、どんな事前対策が必要かを検討します。
例えば:
設備面: 自家発電機の設置、データのバックアップ
体制面: 緊急連絡網の整備、代替拠点の確保
資金面: 緊急時の資金確保、保険の加入
ステップ4:訓練を実施する
計画を作っただけでは意味がありません。定期的に訓練を実施し、計画の実効性を確認することが大切です。
避難訓練
安否確認訓練
復旧訓練
ステップ5:計画を見直す
そして、訓練の結果や事業環境の変化に応じて、計画を定期的に見直すことが重要です。
今日から始められること
「大規模な計画を作るのは大変そう…」と思われる方もいるかもしれません。でも、大丈夫です。まずは小さなことから始めましょう。
今日からできること
従業員の緊急連絡先を整理する
重要なデータのバックアップを取る
会社の貴重品の保管場所を確認する
近隣の避難所を確認する
取引先の連絡先を複数確保する
これらは、すぐにでも始められることです。こうした小さな積み重ねが、いざという時に会社を守ることにつながります。
まとめ:BCP対策はやっておいて損はない
最後に、もう一度お伝えします。
BCP対策は、やっておいて損はありません。
むしろ、やっておかないと、いざという時に会社を守れないのです。今回の青森の地震のように、災害はいつ起こるか分かりません。「まだ大丈夫」「うちは関係ない」と思っていても、明日起こるかもしれないのです。
だからこそ、今できることから始めてほしいのです。
まずは、自社のリスクを洗い出すこと
どんな災害が起こり得るのか、その時に何が困るのかを考えること
そして、わからなければ専門家に相談すること
これらが、何より大切です。
**一人で悩まなくていいんです。**私たち中小企業診断士は、こうした経営課題を一緒に解決するために存在しています。ぜひ、お気軽にご相談ください。
皆さんの会社が、いつまでも元気に事業を続けられるように。そして、従業員の皆さんとその家族を守れるように。今こそ、BCP対策に取り組んでいきましょう。
挑戦が人生だ! Don't Worry, Be Happy!
【参考リンク】
中小企業庁「事業継続力強化計画」: https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/bousai/keizokuryoku.html
中小企業強靱化支援ポータルサイト: https://kyoujinnka.smrj.go.jp/
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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