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その株式価値算定書、どこから疑うか──42の誤謬パターンと88項目の実務チェックリスト

第三者算定書が回ってきて、期限までにコメントを返さなければならない。

計算は合っている。レンジも整っている。それでも、どこかがおかしい気がする。

そういうとき、どこから手をつけますか。

DCFの計算式は学べます。
しかし、目の前にある算定書のどこを疑い、何を再計算し、どの証拠まで遡り、どのような指摘に落とし込むのか。
本書は、その一連のレビュー工程を一冊で扱うために書きました。

『【実務完全版】株式価値算定・レビューの教科書』

副題は「算定書をつくる人と、検証する人のために」です。

全11部・60章・付録10点、B5判・288ページ。

価値算定の公式を覚えるだけではなく、受け取った算定書とExcelモデルを、証拠、独立再計算、指摘票まで通してレビューするための実務書です。

まず、中身から8項目お見せします

本書の付録3「誤謬パターン一覧表」には、42のパターンを収録しています。以下はそのうちの8例です。

各項目は、見出しに典型的な誤謬を置き、「兆候」「主な確認先」「本文の参照」を添える形で構成しています。

CALC-03 循環参照・反復計算依存
兆候:モデルを開くたびに結果が変わる。
確認先:計算設定、循環参照の一覧
参照:第43章§2

CALC-04 単位混在
兆候:千円単位の表と百万円単位の表が、同じシートに混在している。
確認先:行見出し、桁の比較
参照:第43章§3

CALC-05 符号逆転
兆候:費用が増加しているのに、FCFが増える。
確認先:元モデルとは別のロジックで組み直したFCFの導出過程
参照:第43章§3

DATE-01 stub periodの切り出し漏れ
兆候:6月末を評価基準日としているのに、通期のFCFを一年分そのまま使っている。
確認先:月次・半期ベースの残存期間FCF
参照:第5章§4

DATE-03 時点不一致
兆候:貸借対照表は3月末、デットは6月末、株式数は直近と、参照している時点がそろっていない。
確認先:基準時点の突合表
参照:第5章§2

FCF-01 成長ドライバー欠落
兆候:売上は20%成長する計画なのに、営業人員と広告費が横ばいのまま置かれている。
確認先:KPI、人員計画
参照:第12章§3

FCF-03 維持投資欠落
兆候:減価償却は足し戻しているのに、設備投資が計上されていない。
確認先:資産の経過年数、投資計画
参照:第14章§2

FCF-05 代替コスト未反映
兆候:オーナー報酬を全額足し戻している。
確認先:職務内容、市場報酬水準
参照:第30章§3

見覚えのある項目が、いくつかあったのではないでしょうか。

本書では、42の誤謬パターンを次の12領域に分類しています。

  • CALC:計算 — 7項目

  • DATE:時点 — 3項目

  • FCF:将来キャッシュ・フロー — 7項目

  • WACC:割引率 — 4項目

  • TV:継続価値 — 3項目

  • MKT:マーケット・アプローチ — 4項目

  • BRG:価値の橋渡し(企業価値から株主価値へ) — 4項目

  • EQTY:株式・資本構成 — 2項目

  • DISC:プレミアム・ディスカウント — 2項目

  • CONS:前提間の整合 — 2項目

  • REP:報告・記載 — 2項目

  • GOV:ガバナンス・プロセス — 2項目

それぞれについて、「こう書かれていたら疑う」というレッドフラグと、元モデルの式をコピーせずに行う独立再計算の設計を扱っています。

この本の中心にあるのは、レビューする側です

「算定できる」と「レビューできる」は、似ているようで別の技能です。

本書が中心に置いたのは、受け取った算定書とExcelモデルを、証拠まで遡って検証し、相手が修正できる指摘票に落とすまでの実務です。

第8部の第38章から第45章を本書の中核とし、次の論点を扱っています。

  • 算定書の構造

  • レビューの視点と手順

  • 前提・データ・事業計画のレビュー

  • DCFのレビュー

  • マーケット・アプローチのレビュー

  • ネットアセット・アプローチのレビュー

  • 誤謬パターン

  • Excelモデルの独立再計算

  • 第三者算定書の検証

  • フェアネス・オピニオンの射程

レビューができるようになると、作成の段階で何を残し、何を説明し、どこにチェックを置くべきかが見えてきます。

そのため、本書はレビューする方だけでなく、算定書を作成する方にも使える構成です。

88項目のチェックリストを、案件レビューに持ち込む

付録2には、AからJまでの10グループ、全88項目からなる「算定書レビュー・チェックリスト」を収録しました。

10グループの構成は次のとおりです。

  • A 目的・業務範囲・独立性

  • B 評価対象・基準日・資本構成

  • C 資料・ソース・事業計画

  • D FCF・事業価値

  • E 割引率・継続価値・不確実性

  • F マーケット・アプローチ

  • G ネットアセット・資本構成・価値の橋

  • H 税務・法的手続・プレミアム

  • I 算定書・Excel・結論

  • J 会計・監査・ガバナンスへの接続

各項目には、次の欄があります。

  • □OK

  • □NG

  • □N/A

  • 指摘票ID

  • 本文の参照

たとえばA-01は、次の項目です。

「評価目的、利用者、利用場面が冒頭で特定されている」

参照先は、第2章§1〜4、第7章§1・2です。

参照はページ番号ではなく、章と節で付けています。改版によってページ番号が変わっても、参照先を追跡できます。

88項目全体で、章・節への参照は133か所あります。

チェックリストには、次の運用ルールも組み込みました。

  • 証拠を見ていない項目はOKにしない

  • 算定書とモデルの双方を対象とする

  • モデル式のコピーではなく、独立したロジックで最小再計算を行う

  • NGには必ず指摘票IDを付す

最終結論は、次の4区分です。

  • □承認

  • □条件付承認

  • □差戻し

  • □結論留保

付録1および付録2は、購入者ご本人が担当する案件の内部利用に限り、印刷して記入できます。

統合ケースで、実際に手を動かす

第11部は、読むためだけの章ではありません。

第56章では、全ケースで共通して使用する次の内容を収録しています。

  • 証拠パックの設計

  • 事実・仮定・評価判断の区分

  • 回答様式

  • 独立再計算の範囲

  • 時間配分と提出物

  • 模範レビューの使い方

続く3つの統合ケースでは、案件資料、読者への課題、模範レビュー、指摘票を用意しました。

統合ケースA:上場会社のTOB・MBO

DCFレンジ、市場株価、買付価格、利益相反、潜在株式、最低現金、公表前情報による市場株価の情報汚染を一体で検証します。

統合ケースB:非上場オーナー企業の承継・税務

正常収益力、100%株主価値、少数持分、税務評価、承継資金、利益相反を扱います。

統合ケースC:スタートアップのカーブアウト

独立運営費、PWERM、種類株式、バックソルブ、知的財産、TSA、追加資金と希薄化を検討します。

第60章の最終統合レビューでは、算定書の見た目だけでは発見できない誤りを、原資料とExcelモデルの双方から探します。

目指すのは、唯一の正しい株価を言い当てることではありません。

限られた証拠から評価目的・基準日・価値前提・計算・整合性を検証し、意思決定者が行動できる指摘へ変えることです。

「どう書くか」まで収録しました

正しい考え方を知っているだけでは、実務は終わりません。

本書には、次のような記載例・文例・様式も収録しています。

  • 評価対象、評価目的、スコープ制約の記載

  • 必要資料が揃わない場合の停止条件通知

  • 経営者への照会文

  • 評価手法の選択メモ

  • 税務評価書の目的外利用を制限する記載

  • 算定書冒頭の目的・前提条件

  • フェアネス・オピニオンの射程

  • レビュー指摘票

  • 取締役会への説明事項

「そうすべきである」で終わらせず、実際に何を確認し、どう書き、どのような記録を残すのかまで落としています。

全11部の構成

第1部 価値概念と評価目的の地図(第1〜5章)

価格と価値、四つの評価目的、事業価値・企業価値・株主価値・1株価値、価値前提、評価基準日と情報のカットオフ。

第2部 評価業務の設計と証拠(第6〜10章)

規範の階層、受嘱・独立性・業務範囲、評価対象と資本構成、受領資料を証拠に変える方法、手法選択と全体設計。

第3部 インカム・アプローチ(第11〜18章)

価値の橋、事業計画の分析と補正、FCFの設計、運転資本・設備投資・税金、CAPM・β・MRP、サイズ・固有・カントリーリスクとWACC、継続価値と期央割引、感応度・シナリオ・確率加重。

第4部 マーケット・アプローチ(第19〜24章)

類似会社の選定、マルチプルの選択、指標の正常化と期ずれ調整、類似取引比較法、市場株価法・過去取引価格法、結論の統合。

第5部 ネットアセット・アプローチと補完手法(第25〜28章)

簿価・時価純資産法、個別資産負債の時価評価、DDM・配当還元法・APV・エクイティDCF、折衷法・年買法の限界。

第6部 非上場株式・スタートアップ・複雑な資本構成(第29〜33章)

非上場・中小企業の基本設計、正常収益力とFDD、類似会社が見つからない場合、少数持分・種類株式・新株予約権、PWERM・OPM・バックソルブ。

第7部 税務・法的手続・特殊局面(第34〜37章)

税務上の非上場株式評価、同族会社・事業承継・グループ内取引、株式買取請求・価格決定・スクイーズアウト、プレミアム・ディスカウントと公正性意見。

第8部 算定書の作成とレビュー【中核】(第38〜45章)

算定書の構造、レビューの視点と手順、前提・データ・事業計画のレビュー、DCF、マーケット、ネットアセット、誤謬パターン、Excelモデル、第三者算定書、フェアネス・オピニオン。

第9部 会計・監査・開示への接続(第46〜51章)

PPA、減損テスト、DTA回収可能性、関係会社株式・市場価格のない株式の評価損、監査人の対応、開示・KAM・取締役会説明。

第10部 M&A意思決定と価値創造(第52〜55章)

買収価格・シナジー・交渉レンジ、社内ハードルレート・事業部別WACC、買収後レビュー・ROIC、ポートフォリオ・撤退判断・取締役のプロセス。

第11部 完全ケーススタディ(第56〜60章)

証拠パックと回答様式、統合ケースA〜C、最終統合レビュー。

付録10点

  1. 評価前提チェックシート

  2. 算定書レビュー・チェックリスト(印刷用・88項目)

  3. 誤謬パターン一覧表(42項目)

  4. 三つの時価 対比表(会計・税務・取引)

  5. 税務通達・法令対照表

  6. 主要判例一覧(価格決定申立・買取請求)

  7. Excelモデル構造テンプレート

  8. 割引率パラメータの情報源一覧

  9. 業種別マルチプル参考レンジ

  10. 用語・論点索引

索引は、一般語を機械的に拾ったものではありません。

定義、設計、数値例、レビュー手続、付録様式として、実務上使う箇所を選んで採録しています。

「DLOMはどこか」「期央割引の設例はどこか」「独立再計算はどこか」を、必要なときに引くことができます。

こんな方に向いています

本書の中心読者は、算定書を受け取って検証する立場の方です。

  • 第三者算定書をレビューする公認会計士・監査人

  • 評価業務の品質管理・審査を担当する方

  • 外部専門家へ評価を依頼し、結論の妥当性を判断する方

  • フェアネス・オピニオンの前提やプロセスを検討する方

あわせて、次の方にも使えます。

  • 算定書を作成するFAS・FA担当者

  • M&A、投資、事業承継を担当する経理・財務・経営企画の方

  • 非上場株式の評価に関わる税務・金融機関の実務家

  • DCFモデルを作れるようになった後、レビュー能力を高めたい方

反対に、銘柄選定や将来株価の予想を目的とする投資本ではありません。

数式を短時間で暗記するための入門書でもありません。

著者について

のら|公認会計士

会計・監査・M&Aの実務論点を、制度解説だけで終わらせず、証拠、再計算、チェックリスト、レビュー文書まで落とし込んだ実務教材を制作しています。

書籍仕様

  • 書名:『【実務完全版】株式価値算定・レビューの教科書』

  • 副題:算定書をつくる人と、検証する人のために

  • 形式:PDF

  • ファイル数:1点

  • DRM:なし

  • 判型・ページ数:B5判・288ページ

  • 構成:全11部・60章・付録10点

  • ナビゲーション:目次・内部リンク・外部資料リンクに対応

  • 全文検索:対応

  • ファイルサイズ:約3.4MB

一般的なPDFリーダーで、検索、しおり、リンクを利用できます。

価格

4,980円

改訂について

誤植、リンク切れその他の軽微な修正は、同じ記事から修正版をダウンロードできる形で無償提供します。

制度改正を反映した翌年版、大幅改訂版または新規別冊は、別商品となる場合があります。

購入前に必ずご確認ください

  • 本書はPDF形式のデジタル商品です。

  • ダウンロードいただくファイルはPDF1点です。

  • 付録7のExcelモデル構造テンプレート、ケース資料、回答様式、88項目のチェックリストはいずれもPDF内に収録しています。

  • 編集可能なExcelファイル、Wordファイル、個別のモデルデータ等は付属しません。

  • 法令、会計基準、税務通達、制度、市場データ等は、奥付記載の基準確認日時点に基づきます。

  • 本書は一般的な実務情報を提供するものであり、個別案件に対する会計・監査・税務・法務・投資その他の助言ではありません。

  • 本文および付録の転載、再配布、第三者との共有、販売、共有ライブラリへの保存は禁止しています。

  • 付録1および付録2は、購入者ご本人が担当する案件の内部利用に限り、印刷して記入できます。

最後に

価値算定の結果は、最後に表示された一つの金額だけではありません。

どの価値を求めたのか。

どの資料を使ったのか。

どの仮定を置いたのか。

どの不確実性を残したのか。

どこまで独立して再計算したのか。

その過程全体が、結論の信頼性をつくります。

算定書を受け取るだけの状態から、問いを立て、証拠へ遡り、再現し、指摘し、説明できる状態へ。

本書が、そのための道具になれば嬉しいです。

今後刊行する新リース基準、内部統制、PPAその他の実務教材については、noteのフォローでお知らせします。

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193字 / 1ファイル

¥ 4,980

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