Mリーグ。「真っ白組」が誰も選ばれなかった現状を関係者たちはどう思っているのか
前回の続き。
Mトーナメントに出場する団体推薦選手、通称「白組」。その白組の中でも、元Mリーガーや公式解説者などではない、いわゆる知名度が高くない選手たちを、総じて「真っ白組」と秀逸な言い換えをしたのは土田浩翔さんだ。
そんな「真っ白組」を含む今回のMトーナメント2026に出場した団体推薦選手のなかから、来る新シーズンのMリーガーに選ばれる選手は1人も現れなかった。これはMトーナメントが始まって以来、4回目にして史上初のことになる。それだけに、この事実は深刻というか、少々意義深いものに筆者の目には映った。
今回選ばれなかった「真っ白組」の中にも、近い将来、Mリーグに加わる選手がおそらくは現れるだろう。しかし、それはどんなに早くても1年後だ。この「1年」という時間が、筆者にはとりわけ長く感じられる。
いまこの段階で1年後のドラフトの話をするのもなんだが、新チームの発足がない限りは、おそらく今季同様そこまで大きな変化は起こらないのではないか。来季、選手を入れ替えそうなチームは、規定にリーチが掛かる(レギュラーシーズンで敗退すれば入れ替えを余儀なくされる)渋谷ABEMSとアースジェッツくらいしか現状では見当たらない。「白組」の中には、この両チームの敗退をいまから切に願う人がいてもけっして不思議ではない。
現在行われているMトーナメント2026。ベスト16に残っている「真っ白組」の2人(小池諒選手、渡辺史哉選手)には、今大会でまだ上に勝ち上がる可能性は十分ある。だがたとえ優勝したとしても、来季Mリーガーに選ばれそうかと言えば、可能性は低いだろう。小池選手が35歳で史哉選手が29歳。どちらも麻雀界では若手で通る年齢だ。5年後、10年後はわからないが、1,2年後にすぐにでも選ばれそうな魅力は両者ともいまのところ見えていない。今回のドラフトは「3枠」だったが、来季も仮に同じ枠だとしても、そこに入るには現状では相当難しい。足りていないものはまだ色々ある。少なくとも僕にはそう見える。
今回Mリーグに加わったのは、実質「白組」の朝倉康心選手と、「真っ白組」の経験すらない尻無濱航選手と佐野ひなこ選手だった。指名を受けたこの3選手を否定するつもりは全くない。だが、今後の麻雀界の発展を考えると、「真っ白組」にももっとスポットが当たる必要があるとは筆者の意見だ。究極の選択かもしれないが、麻雀の魅力を本当に伝えることができるのはタレントではなく「真っ白組」。少なくとも筆者はそうした考えの持ち主になる。
タレントには高い広告価値がある。元より知名度がある分、これまでMリーグに関心がなかった人や麻雀に触れてこなった人を取り込んでくれる可能性が彼らにはある。「岡田選手や中田選手がきっかけでMリーグを見始めた」という人は、実際結構いるはずだ。
麻雀に興味を持つきっかけはそれでも構わない。だがそこで注目すべきは、そうした人たちが、推しの選手がいなくなった後も麻雀を視聴し続ける(麻雀と触れ合い続ける)かどうか、だ。
「中田選手がいなくなってからMリーグを見なくなった」「佐野選手が出ていない試合は見ない」という人は、Mリーグのファンではなく、言わば選手個人のファンだ。たとえ推しの選手が出ていなくても多くの試合に目を凝らすのが、本当の意味での「麻雀ファン」「Mリーグファン」。そうした人を1人でも多く増やすことが今後のMリーグの課題だと思う。
これまで麻雀に関心がなかった人を含む多くの人の興味を惹こうと思えば、タレントを加えるのは確かに手っ取り早い。だがその色が強くなりすぎると、逆にその環境は安っぽくなる。“本物”の匂いはむしろ感じにくくなる。レベル的な問題も当然そこには含まれる。
タレントや見栄え重視の人選は、言ってみれば諸刃の剣だ。話題性はある。わかりやすく視聴者の興味を惹くことはできるが、増えすぎるとその空気感はかえって薄っぺらいものに見えてくる。そうしたバランスと今後どう向き合っていくべきか。
そんななかで筆者がいまいちばん気になるのは、こうした現状をMリーグ及び麻雀関係者たちがどう思っているかだ。人によってまさに意見が分かれるテーマだと思うが、この点に関して自らの考えや意見を述べる関係者を目にすることはほとんどない。それが筆者には不自然に思えて仕方がない。
SNSなどで自らの見解を述べた人はそれなりにいるだろう。だが、そうした声はもっと目立つ場所で発さなければ少なくともこちらの耳には届かない。そうした意味で重要な役割を担う存在だと言えるのは、MリーグやMトーナメントなどで実況や解説を務める人たちだ。ドラフトが行われてまだ日の浅いいまは、この話題に触れるには本来うってつけだ。実際、実況と解説者の間で先のドラフトの話題に触れるところをこのMトーナメント中に筆者は何度か目にしている。だがそこで「自分はこう思う」といった独自の意見や感想を述べる実況や解説者はいなかった。
「真っ白組」から誰も選ばれなかったことについて、あまり好意的な印象を持たなかった筆者に近い考えの人は、半数とは言わないまでも少なからずいるはずなのだ。にも関わらず、そうした意見を誰も言おうとしない。そして、こうした状況が続けば、今後もこの手の指名が増えそうなことは想像に容易い。
普通のプロが何かタイトルを獲得するより、それなりに知名度のある芸能人がプロ雀士になる方がMリーガーへの近道。先のドラフト結果を見ると思わずそう言いたくなる。たとえばかつて麻雀最強戦にも出場経験のある俳優の本郷奏多さんなどは、もしプロになればおそらくすぐにでも選ばれるのではないか。本人がその気になれば、それこそ佐野選手より可能性は高そうに見える。
筆者の意見を言えば、これ以上のタレントMリーガーはもはや不要だと思う。40人中4人で十分。分母が増えない限りは、今回の佐野選手がギリギリ。この線を越えるとさすがに少しキツい。俗っぽさが増大し、その分高尚さは失われる。筆者的にそれはあまり見たくないものになる。
「タレント系選手を抱えるチーム」対「純粋な麻雀プロで構成されたチーム」。来る新シーズンはこうした構図がさらにより鮮明になるだろう。雷電とBEASTが昨季揃ってファイナルに進出したことで前者の勢いは現在若干だが強まっている。
運の要素が強い麻雀は競技の性質的に「タレントを入れてもなんとかなる」。タレントを抱えるチームが来る新シーズンも活躍すれば、その流れは今後もよりさらに加速するだろう。そこに歯止めをかけようと思えば、純粋系のチームの頑張りと、それなりの立場にいる関係者がきちんと意見を述べることが必要不可欠。それが見られない現状は、「真っ白組」から抜け出せる人はそう多くは出てこない。そんな気がする。
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