旅について、難しい質問ばかりをぶつける人と、それに答え続ける私とのこと
旅から帰ってきたあと、
旅の話は、ありきたりな質問と無難な回答で終わりがちなのだが、これは、ほぼ私の方に原因がある。
あまりペラペラと行っていない人に話す気にならないのと、同じことをよく聞かれて答えるのに飽きてしまう、という私の不誠実さが出てしまうからだと思う。
そんな中で、たった1人、ベストインタビュアー賞をあげたいくらい質問が上手な人がいて、いつも答えるのに時間がかかるのだが、答える側の私に、考えさせて持っていなかった答えを導き出すような、時に私があまりに浅はかな考えを持っていることがバレそうになり、嫌なことを聞くね、と言いたくなるようなそういう人。
友達と言うか、
かれこれ18年くらいの付き合いになる、昔の職場の先輩で、一緒に働いている時はよく叱られてどちらかと言うとムカつく相手だった。
まだ20代半ばだった私が、仕事で先輩に無理難題を言われ、できないと言って言い訳しようとしたら、
「できないって言うの100年早いからな、君!」と怒鳴られた。
それからもまあとにかく仕事の上で鍛えられた。
(ちなみに先輩(女性)は私のことを低い声で「きみ」とか「○○くん」と呼び、独特の言い回しをする常にテンションの低い人。)
彼女に気に入られていた自負はある。
時々、古い制度とか頭の硬い偉い人に腹を立てて、
私なりの考えをその先輩に訴えると
「君のそのエキセントリックな発想が、この業界には必要やわ」
と言ってくれることが時々あった。
ちなみにその業界は別にクリエイティブな仕事ではなかったが。
家が偶然近所なこともあり、金曜日は
「今日は電車に乗らんと帰ろうや」
というパワハラめいた無茶を言われ、あれから100年はまだ経っていなかったからNOと言うこともできず、言う通り一緒に2時間くらいかけて歩くことを時々していた。(大阪で言うと川を3本くらい渡る距離)
その道すがら、いろんな話をしていた気がするがほとんど覚えていない。
一緒に働いたのはたった1年半くらいだが、そこの仕事を辞めてからも、年に2回くらい、ふいに電話がかかってきて、焼肉を食べに行って色んな話をしたり、私が旅に出ている時にメールをしたりするという関係を続けている。
2人で話すことは、主に仕事の話と私の旅の話が多い。
最近は仕事のことで
「もっと君の考えや経験を、外や下の世代にも伝えていかないと!」
と怒られることが圧倒的に多くなった。
まあまあ私もキャリアを積んでしまったので、年に2回ほど、仕事のことで「君、まだ、ダメダメやな。」「あほか。」と昔の先輩に言われることが快感になってきている。SとMのいい関係性だ。
旅の話になると、その先輩はほとんど海外に行くことがない生活を送っているが、博識があるので質問も手強い。
例えば、アルハンブラ宮殿に行ってきた私に、大体の人は「綺麗やった?」「中は広い?」「スペインてやっぱりそんなにいいの?」みたいな話の流れになるが、
例えば彼女は、
「レコンキスタの終わりをグラナダの陥落で迎えたということを、実際スペイン、グラナダを歩いて宮殿や建築物以外から何か感じられるものがあったか?」
いや新聞記者か!
と顔をしかめて言いたくなるような質問をするため、世界史に弱い私は頭を抱える。
先輩は、こういう質問が多いのだ。
ちなみに私の苦し紛れの返答は、
「アルハンブラの繊細なイスラムデザインは美しすぎて、キリスト教でもなかなか壊す気にならないと思いますよ」というありきたりな回答と、
「アルハンブラの近くのアルバイシンという街を夜歩くと、スペインぽくなくて、若干の治安の悪い独特の空気と、民家の扉のデザインやアラブの雰囲気がモロッコに似ていましたよ。あと、お店からスパイスの匂いがします」程度。






「ふーん」という反応をもらった。
これはあまりレコンキスタを分かっていない私にがっかりした感も少々あったのかも知れない。
私のレコンキスタの知識はアーヴィングの小説「アルハンブラ物語」と地球の歩き方に載っていることくらいだったから。
その反省から、私はレコンキスタやイスラムの歴史についての本を読むことにしたので、次からより深くお答えできるはずだと思う。先輩、次回に期待してください。
また、時々旅してる最中に短文でメールをしてくることもある。
「歩いて旅する良さを説明してや、五感を使って」
とかいう感覚を研ぎ澄ませる必要のある質問を送りつけてくる。短文1文で送りつけてくるのってなかなかハードルが高い。

「陸路の方が、更に言えば歩く方が、地球を旅してる気持ちになれる。距離感が体、足で分かるんです、感覚的に。」
「スペインを歩いていた時に季節が変わるのを感じられたことがある、これは歩いてなかったら分からなかったと思う、うまく説明できないけど。
もっと簡単なので言うと、ここから雨、ここから晴れ、というマンガみたいな境目に出会えたことがあります。」
「雨が降ってくるのが匂いや風で分かるようになり、雨音を聞き続けると音楽に聞こえてくるんですよ」
「バスも停まらないような、歩かないと辿り着けないような町に行けるのが、これぞ冒険というワクワク感がある。ドラクエ感。ロールプレイングゲームみたいな。まあ私ドラクエよりマリオ派でしたけど」
「草の匂い、花の匂い、好きな所で立ち止まれる良さとか。」
「スペインでは800km西へ歩き続けるうちにオレンジジュースの味が甘くなって後半で急に酸っぱくなったんです。値段も最後高くなりました。」
などの話を長々とメールで書いて送ったら、
「なるほどねぇ」
「旅先の君から聞くそういう話はいいねぇ」
と返事が来た。
その後、
「オレンジジュースの味が酸っぱくなるのはどこから?なんで?産地の問題か?物流が関係しているのか?」
と更に細かく追い詰められた。
「分からないけどスペインのガリシア州に入った途端に酸っぱくなりました。これは主観じゃないと思います、何人かで言っていたので。後半で海が近づいてきていますが、産地、物流については分かりません。」と返事すると「ふーん」と返事。
ああ、食べ物の産地とかを知るともっとその土地のことが分かるなと反省。次回に生かします、先輩。
最近、メールが来たのは、
「君は、どうやって次の旅先を決めてるわけ?」
という旅をしていない時の唐突な質問。
「何となくですよ。」と本当にそうだったからそう答えようとしたが、
もう一度じっくり振り返ってみた。
「旅で知り合った人からいろんな旅の話を聞いて、
そこに行きたいなと思って行くことにしたり、
何度も気に入った同じ場所に行くこともあるし、
そこで現地の人に『他にいいとこ知ってる?』と聞いてみてそこへ行ってみたり、
映画を見て感動してその場所に行ってみたり、
オードリーの若林の本を読んでキューバに行ったり。
例えば旅の帰りに機内でリメンバーミーを見て感動したから次の旅はメキシコだと決めたこともあるし、
知り合った人たちの家を巡ったりもするし。
で、その人たちと旅に出たり。
逆にその人たちが日本に来てくれてうちに泊めたり。どの旅も何か繋がってる感じです。」
と答えた。
「なるほどねぇ。」
「旅は繋がっている、か。いいねぇ。
君のそういう原動力はエキセントリックでいいよ。」と言われた。
エキセントリックと言われると少年ボウイしか浮かばない私にとって、
彼女の言うエキセントリックが昔から意味が分からないのだが、どうやら私を褒めているらしい。
私もあまり深く考えずに旅をしてきたから、
その時に初めて、
「そうか。私の旅は繋がっているのか。」
と大発見できたのだった。
「君は、自分が本当に考えていることを他人に伝えるのを避ける傾向があるけど、旅の話になるといい言葉がたくさん出てくるからいいね。
特に文章になるとより一層いいね。
君の特徴でもあるまとまりのない文章が、かえって君の旅というものをよく表している。」
とのお返事をいただけた。
あえて言わなかったが、
質問者があなただからですよ、と思う。
どうしてもこの人に対しては不誠実にはなれない。
自分との対話を促されているような気がするからか。
私の奥の方に問いかけられているような気がするからか。
ただただ「答えない」と先輩に言うのは100年早いからなのか。
先輩を誤魔化すのが悔しいからなのか。
その人に「できない」と言えるまで、
まだあと82年もあるから、
今後も彼女のふいにやってくる旅の質問に
誠実に答えていきたいと思っている。
※見出しの写真は、私の好きなアルハンブラ宮殿の壁の模様。
いいなと思ったら応援しよう!
いいなと思ったら、よろしければサポートをお願いします。いただいたサポートは、世界2周目の旅の費用に使わせていただきます!いつか1周目で残した宿題をしにいきます。