ラダック 〜インドのレー空港に降りたら、そこは別の惑星だった〜
異国の空港に降り立つとテンションが上がるけど、
インドのラダック地方、レー空港に着いた時の興奮は忘れられない。
何もかもが明らかにどことも違った。
インドのデリー空港から1時間ほど北に飛ぶ。
その間に飛行機の窓から見える山々にも特別なものを感じた。
神秘的ともまた違う、言葉が出てこない。怖いような神を感じるような山。畏敬?畏怖?あまり普段使わない言葉だけど多分そんな感じ。
ヒマラヤを上から見下ろしながら、これが地球の一部なのかと思って怖くなるような。




そしてレー空港に降り立ってびっくりする。
殺風景で砂っぽい。1時間半前にいた35度を超えていたデリーと違って、ひんやりと寒いのに太陽が近くてジリジリ焦げるような熱もある。
変な表現だけど、太陽、空、宇宙に近づいた感じがとてもする。
標高は3600mを超えていて、いきなり富士山くらいで、実質宇宙に近づいているが、宇宙の大きさで考えるとわずかだ。
軍事空港として使われているためものものしい雰囲気で、
手続きも厳かで、ふざけたり浮かれたりできる雰囲気は全くない。まあそんなに普段空港で一人でふざけたりはしたことはないが。
拳銃を持った軍人があちこちに目を光らせていて、小心者の私は何も違法のブツなど持っていないのにドキドキして、軍人に見つからないように目をそらして早歩きしてしまう。
なんだかとんでもない場所に来てしまったような気がする。
スターウォーズが好きな私は、ここは地球ではなく映画に出てくるどこかの惑星のような気がしてならない。
すでにもう息切れが始まっている。
空気が薄い。体がだるい。頭が痛い。
年寄りが階段を500段くらい登ったような状態ってこんな感じなんだろうかと思ったり。と書いたものの、今の私なら300段で膝が死んでいるだろうけど。
この程度の空気の薄さがこんなにしんどかったら、私はエベレストなんて絶対登れないし宇宙飛行士も無理だなあと、的外れな失望すら抱く。



レーの街を歩くと、空の青がこれまで行った他のどこよりも青いことに気づく。この青は地球と宇宙の間くらいの色ではないかと勝手に思っている。少し丘に登ると空がもっと青くなっている気がして、ここは標高が高い分宇宙に近い、という私の勝手な理論に基づいてそう思うことにした。
ここラダックの地はインドの中のチベットと言われているのが、町を歩いているとよく分かる。チベット文化圏でほとんどの人の顔がチベット民族で、レーパレスもラサのポタラ宮のモデルと言われていて、インドで見るお寺などとは全く違う。挨拶も「ナマステ」から「ジュレー」に変わった。
食べ物も優しい味付けで、トゥクパが、インドのカレーでスパイス疲れしている胃腸に優しく染み渡る。






宿に着いてすぐにダイアモックスという高山病の薬を飲んで1日半ゆっくり過ごした。
あまり寝過ぎると呼吸が浅くなり酸欠になるので、着いてすぐ寝るのはダメだと宿の人に厳しく言われたのに、着いて早々、体がしんどくて、気絶に近い形で寝るに寝た、寝まくった。
いつもの癖で13時間くらい寝ていたら、宿の人が、私が死んでいないか心配になって部屋まで起こしにやって来た。
激しいノックの連打に、ようやく起きたら、手鏡におさまらないくらい顔が大きくなっていた。蜂に100カ所くらい顔を刺された人として仰天ニュースに出ても誰も疑わないだろう。
岸辺一徳みたいに瞼上下が腫れていて、手がクリームパンみたいに膨らんでいた。膨らみすぎてグーがしにくかった。
足は履いてきた靴が入らなくなって、サンダルに履き替えた。私は普段からむくみやすい体質ではあるが、ここまでむくんだのは後にも先にもこの地だけである。自分の変わり果てた顔を見て泣いて涙で水分を減らしたいくらいだった。
薬のおかげで高山病らしき頭痛はマシになっていたが、次に薬の副作用の頻尿に悩まされる時間が始まった。
トイレをひたすら往復して、大量のお小水。
水分をトイレで出し切っているはずなのに顔は相変わらずむくみ続けていた。それもそのはず、高山病を防ぐために水分はこまめにとるように言われて、大量に水を飲んでは出してそして飲んで飲んで、結果むくみに変化なしの繰り返し。
また、しばらくして、指先や唇に少し痺れも出て、これもダイアモックスの副作用と思われるが、なかなか強烈な薬だと怖くなったが、薬効は奏して、ひどい高山病にはならずに済んだ。
それでも、少し平らな道を歩くだけで息切れが凄いしすぐにトイレに行きたくなるしで、この惑星での生活はまだ体が慣れないので、苦労の連続だと思った。
そんな体でも休み休み歩き回り続けたい町がそこにあった。絶景を求めて丘の上まで登り、立っていられないくらい苦しくて倒れ込んでもうその場で横になる。横になりながら風に吹かれるタルチョを見ると救われたような気持ちになる。タルチョは風に吹かれる度にお経を読んだことになると聞いた。かなりのお経を読んでもらい、徳を積んだ気がする。そしてまた、トイレに行きたくなって急いでホテルに戻る。そんな繰り返し。










数日後に入境許可証を発行してもらって、ジープで世界最高峰の車道、標高5360mのチャンラ峠を越えて向かった、私がこれまで見てきた中で圧倒的に世界一美しい色の湖、パンゴンツォ(湖)の話や、年に一度のラダックフェスティバルでVIP扱いされて楽しんだ話はまた別の話。
言葉など何も必要のないくらい、形容し難い美しい絶景の写真を並べ、私が冗舌に綴るのは、顔のむくみや頻尿のどうでもいい話ばかり。私のことを、文才があるね、と言ってくれる人がたまにいるが、かなり疑わしい。正直、酷いものである。
私の語彙力と感性では、結局、
「ラダックは、私が旅をしてきた場所の中で一番美しい場所だ」としか書きようがない。
とにかく、ここは必ずいつかもう一度行きたい場所だけど、
行くのに勇気と覚悟のいる別の惑星。
ここでしか見られない景色は間違いなくある。
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