インドのバラナシで、大阪弁で声のデカいアリジゴク妖怪に会った話
この前、たまたまネットでこのブログを見かけて、「アリジゴク妖怪」の回を読んで、まさに、このおじさんにインドのバラナシで昨年会ったわ!!と思い出した。
このブログによると、
アリジゴク妖怪とは、日本人宿の共有スペース等でじっと若い女性客が来るのを待つおじさんらしく、基本的には無口で大人しく,男性から話しかけられても無愛想でかなり感じが悪いのに若い女の子が現れた瞬間スッと立ち上がり話し仕掛ける。
らしい。
日本人女性バックパッカーばかりに狙いを定めて、旅について先輩風を吹かせて、尊敬してもらいつつあわよくばを狙ってるのか、普段日本では話せない若者の女性と話したいささやかな欲望を抱きつつあわよくばを狙ってるのか、まあそんな感じのあわよくばおじさん。
私は日本人宿に泊まることがないので、あまりこの手のおじさんの罠にかかったことはない。若くないせいかもしれないけど、若い時もなかった。だけど、カフェなんかでこの手のおじさんに捕まって、にこやかに対応してあげている日本人の女性バックパッカーを見たことは何度もあって、アリジゴク妖怪と呼ばれるらしいおじさんが、確実に生存していることは知っており、ご愁傷様、といつも思っていたものだ。
昨年、このアリジゴク妖怪おじさんと少しの時間を共に過ごしたことを思い出したのでここに綴っておこうと思う。

バラナシのベンガリートラを私が1人で彷徨ってオープンエアになっているカフェに入り、座ってマンゴーラッシーを注文した時のこと。
まさにさっきのブログのイラストのまんまの、色あせてるのか汚れなのか分からない薄グレーのTシャツを着たおじさんがキョロキョロしながら通りを歩いていて私と目があってしまい、
「おお!あれ?どないしたん?!」と言われたことから始まった。
いかにも変なおじさんだったので、無視すれば良かったのに、「は?」とそのまま言ってしまい、
「あれ?あれあれ?どないしたんや?」
ってヘラヘラ笑って店に入り近寄ってきたので、
「は?人違いですよ、誰かと間違えてますよ」
とニコリともせずに言った。
「あー、そうかそうか、間違えたわー。ちょっと人探しててな。暑いなー。自分ひとり?ここ座ってええ?」と聞かれ、「1人です。ああ別にいいですよ」と言って向かいに座ることを許可した。いつもこの手の誘いを私は食い気味に断るから、こんなことはほぼない。奇跡だ。
許可した理由は暇だったから。
この日は、ぶらぶらして、露店商のスペイン語と日本語を話せるインド人に出会い、スペイン語で楽しく喋る(挨拶程度)というおかしな時間を過ごした後だったので、今日はとことん出会う人に付き合ってみようかな、インドに身を任せてみようかな、と思っていたからだ。
普段なら絶対無視するおじさんだったが、別にちょっとくらいならいいか、と同席を許可した。
すると、おじさんは、店員のインド人にでっかい声で
「おい!チャイ持ってこいや!」と偉そうに言った。
日本語が少し話せる店員だった。
ここはミナミの純喫茶か。
偉そうな大阪弁に顔をしかめた。
私にもグイグイ、タメ口で偉そうなので、私はコイツを敬う気持ちをゼロにして、あえて敬語はやめようと決めた。
「ここの店の奴ら、トロいねん。かましたらんと。」と言い、海外で聞く横柄な大阪弁にうんざりした。
そのくせ何故か私も負けじと大阪弁で喋る。
「別にトロない思うで。ほんで誰と間違うてん?」
どや。ムカつくか、私の口調。年上やろうけど関係ないわ。
と思いながらわざといつもよりも強めの大阪弁で言った。
私は初対面の相手には年齢に関わらず、まず敬語を使うマナーは持ち合わせてはいるが、敬えない人間には使わないという例外もある。
「いやな、昨日もここで日本人の女の子と会うてな。そこの筋入ったところの日本人宿におんねんけどな、自分もそこに泊まってんの?」と聞いてきたので、
「日本人宿?そんなん知らん。」と冷たく言った。
ここまで冷たくするなら同席を許可せんでもいいのになと自分で思いつつ、引き続き喋りを聞いてやることにした。

「日本人宿がすぐそこにあってやー…ほんでやー…俺は別のとこ泊まってるけどな。自分、日本人宿泊まるタイプちゃうん?久美子の家とか泊まるタイプ?1人で不安やろ?インドはな、舐めたら痛い目合うでー。」
出た出た、こういうおっさん。
「日本人宿は泊まったことないわ。booking.comで見つけた先月に出来たばかりのとこに泊まってる。それより自分、日本人宿に泊まってへんのに出入りしてんの?何がおもろいん?」
と聞いてみた。
「いやな、俺な、何遍もここ来ててやー、やること無いしな。マリファナばっかりやで、でも今3日抜いてるけどな。知ってる?バングラッシー?ガンジャやる?」
「あー、私はガンジャとかはやらへん。昔ゴウドリヤーのとこにあるポリスの近くにバングラッシー屋あったけど、まだあるんや。」おとなげなくかます私。
「あ、ここ詳しいんやー。初めてちゃうんや」
「インドは6回目。バラナシは10年以上前に数ヶ月おったから。でもこの辺の店とかはめっちゃ変わってもうてて、ようわからんわ」さらにかます私。
「おれタカシ。48歳。自分は?」
「私、のりまき。歳はほぼ同じや」
言っておくが私は40代のかなり前半だ。割と上にサバを読むタイプの女の人を、私は私以外あまり知らない。
「嘘やん?!見えへんなー。めっちゃ若く見えるで。ほんまかいな?!」
そりゃそうや、48歳ちゃうし、とは言わず、タメ口を続けるために仕方なくかます。

それから、「インド人はアホや」とか「自分もぼったくられへんようにきつめに言わんとあかんで」「でもチャイくらい飲んで金落としたらなかわいそうやろ」「おい、はよせえや」「ろくに仕事もでけへんねんからのー」とか、大声で店員を罵りさすがに頭にき始めた私。
向かいにタカシがいるにも関わらず、一旦、iPhoneで本を読むことにした。インド人にではなくタカシにきつめの対応をする。それでも、しばらく勝手にウンチクを垂れていたが、聞き流していた。
「自分も大阪やろ?どこなん?」と聞かれ、
「大阪市内。梅田の近く」と嘘ではないけど見栄を張った言い方をした。変なプライドだ、許してほしい。
「自分は?」と聞くと
「俺は藤井寺や」とタカシは言う。
インド人に偉そうにタカシが大阪弁で命令しているのが腹が立っていたので、
「藤井寺って大阪?(藤井寺のみんな、ごめん!)藤井寺ってそんなに言葉、汚いんやな。店員さんにあんな言い方して、おんなじ大阪人として恥ずかしいからやめたら」
とタカシを見下す言い方をわざとした。
藤井寺の人たちを犠牲にしても守りたい思いがあったからここは許してほしい。それと気分は48歳でタカシの同級生のつもりやったので、生意気な注意も見逃してほしい。
おっさんは、ふへへって変な笑い方してごまかして話を逸らしたから、もう勝負はついていた。
「なあ、facebookかLINE教えてや」
「なんで?」
「やってない系女子?そんな感じするわー。それもかっこええやん。」
「は?何やそれ。やってても(やってる)教えへんし。用事ない人に教えへんから。誰か探してるんやろ?もう行ったら?私はもう静かに過ごしたいし」とたたみかけて追い出しにかかる。
「夕方そこでシタールのレッスン受けんねん。良かったらおいでや。夜はアッシーガートんとこのイタリアンにいてるし、焼きたてのピザおごったるし、今晩でもおいでや」
「何で?ピザは好きやけど絶対行かへんわ。じゃあね。」
と自分は立ち去らずにiPhoneの画面に目線を戻した。
閉店ガラガラ。ピシャ。
無事、妖怪退治。タカシをまず私の心から追い出して、しばらくして店からも追い出した。

ああ。やだよ、全く。
私はいつからこんなに気の強い女になってしまったのだろう。気は強いけど気が小さいのよ、とここで声を小にして言っておく。これも48歳になりすましたせいだと思いたい。イケメンイタリア人の前で11歳若くサバを読んだり、
アリジゴク妖怪の前でかなり上にサバを読んだり、まるで詐欺師だ。少しやり過ぎたかなと反省しかける小心者。
すると、店員が、私が頼んでいないチャイを持ってきてくれて日本語とヒンディー語なまりの英語とごちゃ混ぜで多分こう言った。
「私、あの男、キライ。
あの男、毎日、日本人の女の子に声をかけてキャッチ。
あの男、日本の男やユーロピアンの女の子とは話しない。
日本の女だけタルゲット(ターゲット)。
あの男、いつもloud。
fightしてると思われるとゲスト来なくなる。
だから私、アザル(other)ゲストのため、何も言わない。
とても嫌な気持ち。
今日、あなた、キープ、ノースマイル。
ノースマイル is winner!
あなた、あの男、get out。
ユーアル(you are)ストロングスタイル。
ユーアルスーペル(スーパー)ウーマン。
私、あなた、好き。
あなたにthanks。
チャイあげます。」

No smile is winnerに思わず今日一番のスマイルで笑った。
「おっさん、ダサいな」と独り言っぽく言ったら、店員のインド人が
「ダサいって何ですか?」と聞いた。
「coolの反対」と教えると、
「あなた、not ダサい」と笑って親指を立てた。
私もダサめに親指を高島忠夫みたいに突き出して
「イエーイ」と言った。

日本人宿じゃない自分の宿に帰ると、たまたま日本人カップルがいて、少し話して
「今日、変なおじさんに捕まったんですー、大阪弁の」
と彼女が言い、
「もしかしてタカシ?」
「そうです!」
と言って爆笑して話した。
この子はしばらく捕まって話をしていたら、彼氏が来て、
そしたらすぐにタカシは退散したらしい。
おじさんが女バックパッカーに偉そうに語ることは別に悪くないし、付き合って喋ってもいいし嫌なら断ればいいだけだけど、その国でダサいことをする人とは関わりたくないし、大阪のイメージを悪くする行為は生まれも育ちも大阪人の私としては許せないので、大阪のイメージアップのためにも、そこは私もどの国であろうと目を光らせていきたい。
吉村知事、イメージアップ戦略、任せてください。(私が大阪のイメージを悪くしてたらごめんなさい。)
今日このnoteで伝えたいことは一つ。
女バックパッカーの方々、
アリジゴク妖怪とやらに旅先で出会って不愉快に感じたら
「ノースマイル is winner」魂で撃退しよう!
写真はインド、バラナシのベンガリートラのあちこち。
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