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海外で日本語と出会う時

一昔前は、海外を旅している時、旅で困った時のヒントや有益な情報は、バックパッカーの集まるカフェの壁や安宿の情報ノートに溢れていた。
カフェの壁に英語で「◯◯求む!」「急募◯◯へ一緒に行ける人」「◯◯でコンサートやります」のような紙が貼ってあって、それを見ているだけでも楽しかったものだ。
安宿にある情報ノートにも「どこどこのレストランの◯◯は美味しいし安いからおすすめ」「◯◯からの国境の越え方」「◯◯のバスには注意」など、誰かさんの体験がイラストや地図入りで詳細に書かれたりしていて、それは主に英語で書かれていたから、英文読解の勉強にもなったし、物語のように読むのが楽しかった。
時々英語や韓国語の文字に交じって日本語の文が書かれており、そこに「レストラン◯◯では和食が食べられます、親子丼がおすすめ」などの文を見つけるとテンションが上がったりもした。
地球の歩き方のページの下の方に小さく書かれた読者からの情報やコラムページのようなもの。
これってきっと今の時代で考えると、TwitterなどのSNSで書かれているようなちょっとした情報だったり、誰かのブログでびっしり書かれているような詳細な情報だったりして、何ともアナログな時代だった。
こんなことを書いていると、自分が一昔前の時代の思い出を偉そうにいつまでも輝かしい過去のように語り(そんなつもりはさらさらないけど)マウントをとる中年になっていることにちょっぴり嫌気がさすのだがなんとなく思い出したので、それこそ情報ノートに書かれたちょっとした情報のようにこのnoteに書き残したいと思ったから許してほしい。

手書きの良さっていうのは不思議なもので、それを書いた見ず知らずのその人の体温を少し感じられる気がする。字の癖とか筆圧とかでちょびっとはどんな人か分かる気がするし。なんとなくちょっと一言を残した人であれ、ここに来た証を残したいという熱い想いで書いた人であれ、どちらからもなんとなく温かみを感じる。

15年くらい前にインドでリクシャー(人力車的な乗り物やバイクタクシーみたいな乗り物)に乗った時、乗るたびにインド人のドライバーが、これまでの乗客に書いてもらったメッセージノートを見せてくるというブームがあった。
「見てみて、僕のお客さんは僕のことをいい人だと知ってここに感謝のメッセージや利用した感想を書いてくれているからぜひ見て。そして僕を信じてほしい。騙したりするような悪い人間じゃないから安心してほしい」という意味で見せてくるのである。「そして後で君も書いてね」と笑顔で話してくる。
パラパラっとそのノートをめくると、「ラージはGood Driverです」「サントスは信用できる人です。Thank you so much」など、主に英語で時々それぞれの国の言語でたくさん書かれている。
その中に、数人の日本人が日本語でこう書いているのを見つけたことがある。
「騙されないで!私はボラれました。」
「気をつけろ!!最初は親切だけど高額な料金を後から請求されました。」
筆圧強めの日本語の文字。
それも色んな人のノートで何回もある。
そのたびに笑った。
日本語だから何が書いてあるか分かっていないインド人ドライバーが、誇らしそうに「日本人も乗せたことあるよ」と言ってそのメッセージをご丁寧に指をさして教えてくれる。
良いことをしたと思っているドライバーと、騙されたと思っている日本人。
あるいは、うまく騙せたと思っているインド人ドライバーと、騙されて悔しい思いをした日本人が、最後に日本人にだけわかる形で一矢報いたいと思い、これ以上の日本人被害者をうまないためにと思ってメッセージを残したのか。 
不謹慎だが、そこにあるドラマを想像すると楽しい。
君のメッセージはしかと読んだよ、と心で思いながら警戒心を高めた。

外国で見かける日本語のメッセージは、妙に親近感が湧く。
日本人というアイデンティティーが自分にも一応あるのかななどという気持ちすら、こういう時にここぞとばかりに感じたりする。 
見ず知らずの日本人にエールを送りたくなるし、自分もあえて日本語でメッセージを残したくなる。
長く異国で旅している時に、時々わざわざネットカフェに行って日本の友達や恋人から届いたメールをホットメールを開いて確認することをしていたが、日本から届く日本語の文章を見る、つまりは日本語に触れることができる時間というのも安らぎだったりした。
英語ができなすぎるあまり、旅をしていて母国語が英語だったらどれほど良かっただろう…と思ったりすることも多いが、アジア系の顔をして日本語を読み書きしているだけでほぼ漏れなく日本人と分かるのもそれはそれでオリジナルでいいなあなどとも思ったりする。

電子書籍などなかった時代に、インドには貸し本屋なるものや、古本屋、宿の図書コーナーなどがあって、英語で書かれたロンリープラネットやいろんなペーパーバックの本が並んでいた。そこには日本語の小説などもあり、ボロボロになった日本語の本を借りて読んだりした。
日本語をすらすらと読めるという当たり前の行為も郷愁が漂ったりしたし、カフェなどで日本語の本を読んでいたら、日本語の文字がちんぷんかんぷんの欧米人などに「ジーニアス!」と驚かれたりしたものだった。
日本人の旅人同士で出会って、初めましてと言葉を交わすときに、読み終えた日本語の本を交換したりする楽しみもあった。本が自分の手を離れて旅人にわたっていくのもまた旅であった。
などなど。だんだん話が逸れてきたけど、異国の旅の最中にふと目にする日本語はホッとするという話。
実はこれは前置きで、本題はまた別のことを書きたかったのだが、それはまた次回に。
長くなったのでこの辺で。

書きたかった本題はこのnoteです↓

バラナシで私のところにやってきた本「河童が覗いたインド」
イラストに描かれたような部屋に泊まってたから面白かった。そして私の家の本棚にまだあるから、いつかインドに返しに行きたい。



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