見出し画像

宮古島カツオノエボシ事件【前編】

「のりまきちゃんはどこかへ行ったらしょっちゅう怪我したり体調崩したりするけど、いつも生き延びる星に生まれてる」としめちゃんが言い出した。
そして、2人で行った宮古島で私が巻き込まれたトラブルのことを、ヤサグレ会で久しぶりに思い出して笑ったのでその話を。

数年前に別件で那覇に前乗りしていた私と現地集合したしめちゃん。2人で宮古島に乗り込んで旅行をしたのだが、これがトラブルも含めて楽しい旅であった。
レンタカーを借りて、ペーパードライバーのしめちゃんをずっと助手席に乗せて、気持ちよく宮古島をドライブ三昧。その翌日、事前に申し込んでいたウミガメシュノーケリングに参加したのがハプニングの始まりである。

画像1

画像2

画像3


海で泳いだことが皆無のしめちゃんと、泳ぎだけは自信がある私。
せっかく宮古島に行くからシュノーケリングくらいはしよか、と珍しくしめちゃんが私の提案した冒険に乗り気になってくれたため、海のアクティビティに参加することにした。
といっても参加者は我々2名とインストラクターが1名のみ。
インストラクターの北川ちゃんという男が、なぜか大阪の天満出身のバリバリ大阪弁の男。
シュノーケリングのスポットまでの車中に、「宮古の海のブルーはほんまに特別やで」などと語られ、小声でしめちゃんが私に、「なんで宮古島まで来て大阪の男に宮古島語られなあかんねん」と毒づいていた。
確かにな。
宮古島にバリバリの大阪人3名で海に向かう。ウミガメを見れる確率が相当高いとか、ガイドブックにも載ってないマル秘スポットやでとか聞きながら、知る人ぞ知る大阪人の俺のおすすめウミガメスポットに到着。
「これが宮古ブルーかぁ」3人で海を見つめた。

画像4

すると、海を前にして、しめちゃんが初めてのシュノーケリングということで、相当ナイーヴになり始めた。
しめちゃんは日頃、あまり感情で揺らぐタイプではなく何事にも動じない人間なのだが、大人になってから初めての海の中へ、変な形のものを口に咥えて入り、そして呼吸を続けながら泳ぐということで、「やったことのないことを一気に複数同時にやれない、無理や」と言い出した。
「大丈夫や、シュノーケリングの先っちょは海の外やから普通に息したらええし」と北川ちゃんと私の2人で落ち着かせるように伝えたが、「いやいっぺんに全部は無理や」と言う。
「いや逆にいっぺんに全部やらんと無理やし、普通にやれるから」と言っても、「あかんわ」と言う。
これはほんまの無理なやつかな、と思いつつ、「バンジージャンプ飛べません」とごねて結局飛ぶお笑い芸人パターンに入るのか、見極めにくい状況であった。

すると「とりあえず海入るわ」と言い、3人一緒に海へ。
「顔つけてみたら?」と言うと、「あかん、波があるからむずい」と言い出したしめちゃん。波はあるよそりゃ、海やし。「ほな、水に顔つけんと立ち泳ぎだけしといたら」「ライフジャケット着てるから溺れへんよ」と伝えたが、
「あかんあかん、無理無理」とパニックになり、「あがるか?」と聞くと、「でも、これ、ちょっと経てばいけるやつやから、いったん、しばらくほっといて。ウミガメ探してきていいで。」と言われる。
そうなん?
よう分からんけども。
私は分かったと言い、独自でスイスイ泳いだり潜ったりし始めてみた。

そして気づいたら、しめちゃんは海の中で、北川ちゃんにお姫様抱っこをされていたのである。
え?
なんで。
そして、北川ちゃんが、「あっちの方にウミガメがよくいるからあっちの方に行ってみよかー」と言い、しめちゃんをお姫様抱っこしたまま泳いで進み、私はそれにシュノーケリングで泳いでついていく。
しめちゃんは、珍しく抵抗なく黙ってお姫様抱っこされ続けている。なんなら北川ちゃんの首に自ら腕を回している。
そして、立ち泳ぎをしながら、シュノーケルのコツと、サンゴを蹴らないこと、ウミガメがいそうな場所を北川ちゃんからレクチャーを受ける私。レンタルの水中カメラを渡されて使い方も学ぶ。
しめちゃんは、無表情&無言でお姫様抱っこされている。
なんやこのシチュエーション。
えらいサービスが違うなあと首を捻りつつ進み、私は「適当にその辺泳いでウミガメ探しといてー」と北川ちゃんに言われて、変なカップルを置いて私は1人でウミガメ探しを開始。

楽しくて私が1人でスイスイ泳いでいると、波に慣れたしめちゃんが、突然「もういけるわ」と言って北川ちゃんの腕から離れて、急にシュノーケルをし始めた。
何も恐れずに普通にスイスイ泳いでいる。
何やったんや、さっきのパニックは。
よく分からないが、人にはその人それぞれの必要な時間があるんやなぁ、としみじみ。
後から本人が語るに、初めてのことをする時はいつも大体少しパニクるけど、結局できるようになるのは分かってたから、とかなんとかいう言い分だった。

晴れて目的通り2人で一緒にシュノーケリングをしていると、小さいウミガメが少し前をスーっと一瞬横切って消えた。
「あ!今おったんちゃう?!」2人で自ら海から顔を出して盛り上がる。
北川ちゃんが「見た?!見た?!」とすごい勢いで聞いてきた。
見たと言えば見たけど、ウミガメをもっと近くではっきり見たいし、一緒に泳ぎたいぞ。
だが、初めてのウミガメに興奮していたので、2人とも「見た!見た!」と答えた。

画像5

画像6

画像7

画像8



北川ちゃんも「この辺、多分おるでー!探そう」とテンションが上がってきて、3人バラバラにウミガメを探し泳いでいた時に、激痛が走った。

「ギャー!!」

私は顔をあげて「痛いー!」と叫んだ。
顔が痛い。
顔を何かで切ったと思って血が出てる気がして右頬を押さえた。
「顔が、顔が、顔がー!しめちゃーん!助けて、顔切られた!やられた!血が、血がー!」と叫んで、生まれて初めて3秒くらい溺れた。
パニックになると泳ぐごとを忘れるのだと知った。
確かにしめちゃんの言う通り、ライフジャケットを着ていても、痛がりながら、顔を押さえながら泳ぐという複数のことを全部一度にやるのは困難だと身にしみて分かった。
もうすっかり落ち着いて普通に泳げているしめちゃんが「どしたん?!」と泳いで近寄ってくれて私も落ち着いて立ち泳ぎスタイルを保てた。
「痛い痛い痛い!顔が痛い!ここ見て、ここ見て!ここ!」
しめちゃん沈黙。

血は出ていなかった。
ガラスの破片が流れていて頬がパックリ切れたと思い込んでいた私だが、全く切れてはいなかった。水中メガネにかぶれたんかな?と思い、メガネを外す。
とにかく顔の右半分が痛い。
「ヒリヒリする!北川ちゃーん!ちょっと来てー!大変やー!」
と北川ちゃんを呼ぶ。

クール系アラフォー大阪女2人が、よく分からない理由でそれぞれ順番にパニックを起こしており、北川ちゃんも大変である。
「なになに?」と北川ちゃんが半分呆れた様子で近寄る。

「なんか、顔が切れたかと思ったけど切れてなくて。でも、急にビリビリって電気が走るみたいな激痛がして、今もめっちゃ痛いねんけど。痛い痛い痛い」
私がそう言うと、北川ちゃんは顔色を変えた。

「電気…?まさか。」

なになに?

北川ちゃんがこう言った。
「まさか、カツオノエボシ…。そうか、台風が過ぎた後や…。ヤバい、ヤバい、ヤバい、塩水!」
と言った。
カツオがどしたん?
雨女の割に台風が旅の前日までで通り過ぎてくれてラッキーと思っていたが、それがどうした?
塩水はめっちゃあるけど。

我々2人はキョトンとしていたが、その後、私は北川ちゃんによって海に顔を沈められた。
しめちゃんは呆然としていた。
殺されるのか…。
いや、シュノーケルはつけているから呼吸は余裕。
塩水につけられた私のパニックは海中で静かに落ち着きを取り戻し、次のパニックは北川ちゃんの番となった。

珍しく2回に分けたので【後編】に続く…

画像9

(最初にパニックになった割に、呆然としていた割に、海に沈められている私を撮影するしめちゃんであった。)



いいなと思ったら応援しよう!

のりまき いいなと思ったら、よろしければサポートをお願いします。いただいたサポートは、世界2周目の旅の費用に使わせていただきます!いつか1周目で残した宿題をしにいきます。