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スピリチュアルの道へ【ポルトガルの道#9】

ポルトガルのポルトから8日間歩き続けてきて、本日9日目はいよいよ最終ステージに入ると言っていい。
今日は、大きな分かれ道があり、ポルトガルの道の巡礼路を歩く人の1割しか選ばないと言われている方のルートを、私は選んで進むことになる。
そのルートの名前は、「Variante Espiritual」通称「スピリチュアルの道」。
なかなか意味深そうな名前である。
そこから3~4日後にはゴールのサンティアゴ・デ・コンポステーラにたどり着ける予定。気持ちを新たに、ポンテベドラの街を後にした。

世界多分一周旅中ではあるが、私のライフワークともいえる歩き続ける旅「カミーノ」を、長旅の途中に組み込んだ。
通称「カミーノ」とは、スペインの北西にあるサンティアゴ・デ・コンポステーラという町の大聖堂を目指して、そこへと繋がる巡礼路がいくつもあり、道ごとが世界遺産認定されている美しい道。2015年~2017年に「フランス人の道」というフランスから東西に延びる800㎞のメジャーなルートを歩き通し、次に2019年と2023年にフランス国内のルート「ルピュイの道」を少しずつ歩いていた後、私が選んだのは「ポルトガルの道」。
世界一周の旅の途中にポルトガルのポルトに飛び、そこから海岸沿いのルートをずっと北上して、スペインへと国境を越えて、270㎞先のサンティアゴを目指して毎日歩く。その記録。
マガジン「380km歩き旅!ポルトガルの道」にまとめています。

長すぎる前置き

「スピリチュアルの道」というルートは、割と新しいルートらしい。いつからあるかはよく分からないけど、とにかく大方の巡礼者はメインルートの方を歩くらしく、メインを歩いたことがある人や、よほどヤコブが好きな人などが「スピリチュアルの道」の方を選んでいるのかなという、あくまで私が数人の巡礼者に聞いた中での印象。
「スピリチュアルの道」について分かってもらうために、そもそものカミーノと聖ヤコブについてめちゃくちゃ簡単に説明すると以下の通り。

①私が歩いてるカミーノ・デ・サンティアゴ(サンティアゴ巡礼路):
聖ヤコブ(スペイン語でサンティアゴ)に由来する巡礼路。
聖ヤコブの遺骨が安置されている場所、サンティアゴ・デ・コンポステーラの大聖堂を目指して、多くの巡礼者が歩いている。

②聖ヤコブ:
聖ヤコブ(サンティアゴ)は、新約聖書に登場するイエス・キリストの十二使徒の一人。ヤコブは色々あってエルサレムで斬首され、彼の弟子たちはヤコブの遺骸をこっそり盗んで石の船に乗せ、海を越えてガリシア地方のリア・デ・アロウサ川の河口に運び、そこから内陸を通ってサンティアゴ・デ・コンポステーラに至ったとされている。その道こそがスピリチュアルの道。

つまり、ヤコブの遺骸が通った道を歩くルートが「スピリチュアルの道」ということになるらしい。

あらためて再度お伝えしておくと、私はキリスト教の信者ではない。
神社にも寺にも行くし、クリスマスも祝うし、インドに行けばヒンドゥー教のシヴァ神が推しになるし、海外の教会に行って「わー、キレイ」と思う程度の一般的ないわゆる普通の日本人である。そんなキリスト教徒でもない私が、カミーノの巡礼路にはまって歩き続けていることを変だと思う人もいるかもしれないが、私はいろんな人と出会えるあの道が好きで、自然の道を歩き続けることが好きで、スペインが好きで、美味しいものを飲み食いし続けることも目当てで巡礼路を歩いている。
そんな人間があえて聖ヤコブの運ばれた道を辿ることを選んだわけだが、そこで何かを感じようとかそういう深い意味はなく、何となく「Variante Espiritual(スピリチュアルの道)」というネーミングに惹かれたから。いわゆるスピリチュアル系界隈は苦手だし胡散臭さを感じているし、できればネット検索も避けたいワードだし、本屋のスピリチュアルコーナーは通らないように気をつけている。(ちなみにオカルトは好き。似て非なるもの。)
スピをひたすら避けて日本で生きている私だが、スペイン人が言う「スピリチュアル」ってものはどういうものなのか興味があった。どんなもんよ、エスパニョールのスピリチュアル?って気持ちと、単純に歩く巡礼者が10%に減るなら歩きやすいやんという観点から選んだ。人が少ない道をゆっくりと歩いていれば、この私だってスピっちゃうかもね、というちょびっとの変な期待を持って、分かれ道を左のスピリチュアルの道の方へと進んだ。

ポンテべドラ
朝ごはんは、宿でもらったりんご
こういう朝の時間帯が好きだしスピ。
あと64.79㎞
はっ!スピつむり。
こちらを左へスピっていく
デンやシールは黄色の道、
私は左のオレンジの道へ。
距離が黄色のルートより長くなる。


スピリチュアルの道初日は、かなり険しい道のりだった。距離はそこまで長くはないが、上り坂がひたすら続く。イタリアーノのフェデリコと道で出会ったので、話をしながら一緒に汗を大量にかきながら進んだ。ポルトガルの道を振り返ると、私が誰かと一緒に歩き続けた日は、この日が唯一だと思う。大体いつも1人で自分のペースでのんびり歩いているから。
この日は上り坂がしんど過ぎて休み休み進んでいたが、私がバテて休憩するペースと、フェデリコのバテるペースとが同じで(20代のヤングな男子にしては体力がないと思った)、横に並んで座り込んだり、水を飲んだり、一緒に止まりつつ励ましつつ、ひいひい言いながら歩き続けた。天気が良すぎたせいもある。風がなく蒸し暑過ぎたこと、ほとんど1日中上り続ける行程だったこともあり、ポルトガルの道の行程の中でこの日が最もしんどい日だった。
フェデリコと共に、「スピリチュアルってこういうハードなことなの?」「知らない」「スピリチュアルって一体何?」「知らない」「この苦しみに耐えることがスピリチュアルなの?」「What'sスピリチュアル???」と言い続けながら、進むスピリチュアルの道。非常にスピリチュアルである。知らんけど。

2日目に買ったりんごケーキの入れ物を、
お弁当箱として使い続けている。
なぜならバックパックの上蓋の部分にジャストフィットだったから。
本日の弁当箱の中身。
史上最高に険しい行程を、
史上最悪の食糧不足が襲う。
ブドウ畑と十字架
矢印に沿って進む
今は右の黄色い丸印のところ。
なんでか分からないけど、一瞬下りてから、また戻って再び登り続ける。
スピ?
修道院のそばに奇跡的にサンドイッチ屋さんがあり、食糧にありつけた。
スピサンドイッチ。
2個買った。

途中に立ち寄ったポイオという町の修道院が、古いながらも荘厳で朝日が眩しく、とても神聖な場所であることが、感覚で分かった。巡礼路は祈りの道で、長い歴史の中のたくさんの人々の祈りがあちらこちらにあることを思い出させてくれるような時間だった。(その後に、そこでめちゃくちゃボリューム満点なサンドイッチを食べたけれど。)

今朝、宿でもらった紅茶を入れて、道の途中で飲んだ。
なんと抹茶とショウガとオレンジ味の組み合わせの紅茶だった。謎過ぎる味わい。そんな味の紅茶は売ってるのも見たことない。もはやスピ。
2個目のスピサンドイッチ。
かじったあとがいつも汚くて、お目汚しすみません。(炎上対策)


今日の宿は、山の中にある町アルメンテイラ。アルメンテイラ修道院がある町。というか、それしかない町に見えた。何もない場所にぽつんとある宿に、フェデリコと一緒に予約なしの飛び込みでギリギリセーフでベッドを確保し、シャワーを浴びて簡単に洗濯をして、修道院の前にあるバルに行った。
そこには2日前の宿で一緒だったアメリカ人のジェーンとシャーリーンが、遅いランチを食べていた。パスタやピザを食べ終わった後の2人のテーブルに、焼き立ての巨大お好み焼きサイズのトルティージャ(じゃがいも入り卵焼き)が遅れて運ばれてきてびっくりしていたところに、私との再会というタイミング。二重のびっくりに大声をあげる2人が、「トルティージャが大きすぎるから、あなたにあげる!」と言ってくれたので、パンも一緒にありがたくもらった。それでも食べきれないため、お弁当箱に入れてテイクアウトし、明日も食べることにした。それからオレンジジュースを飲みながら、タルタ・デ・サンティアゴというケーキを食べた。タルタ・デ・サンティアゴとは、サンティアゴのケーキという名前のケーキで、以前ゴール地点のサンティアゴに着いた時にそこで初めて食べた思い出がある。このケーキがバルのメニューに登場し始めたということは、ゴールのサンティアゴが近づいているという証拠だ。ポルトガルで1日2個ナタを食べてきた私がとうとうサンティアゴケーキに辿り着いたのだから感慨深い。

宿に戻るとフェデリコが別のイタリアーノおじさん2人組と仲良くなっていて、「アルメンテイラ修道院で19時にミサがあるらしいから一緒に行こう」と誘ってくれて、19時まで昼寝をして、一緒にミサに出かけた。回廊が美しくて、回廊好きでお馴染みの私も大満足。
ここで、おじさんから聞いた話によると、昔々、この修道院の創設者が「死ぬまでにパラダイスを見たい」とマリア様に頼んだ。ある日森を歩いていると一羽の鳥がさえずりはじめて、美しすぎて聴き惚れてしまい、その後修道院に戻ったら300年経ってた、というよく分からない伝説を教えてもらった。
怖すぎる。どういうメッセージなのか分からないけど、300年間、歳を取らないのならいいか、いやよくないか。

真ん中左ら辺が今日の宿
しぼりたてオレンジジュース
タルタ・デ・サンティアゴ
イタリアーノおじさんが写真を撮れとうるさいので。
300年経ったのに気付いた人風
食糧が増えた!
トルティージャ美味しい。
修道院入り口
回廊スピ

19時からのミサは、こじんまりとした礼拝堂で巡礼者15名くらいのためにシスターたちが歌を歌ったり、お祈りをしてくれたりした。やはりスピリチュアルの道を選んで歩く人は少なくて、町に1軒の宿でちょうどいいような人数で、全員が顔見知りになりそうなほどである。
そういえば、クリスティーナもデイヴもスピリチュアルの道を選ぶと言っていたのにヘビの宿以来全然会わない。どこにいるのだろう。

私より少し先を歩いているのだろうか、それとも後ろを歩いているのだろうか。シャーリーンたちやデン、フェデリコとは何度も会えているのに、一本道だからまたどこかで必ず会えると思っていたのに。
会いたいと思う人に限って会えないものなのかな。連絡先を交換しなかったことへの後悔がずっと残っている。人は後悔と共に生きていく生き物とはいえ、唯一、このポルトガルの道での心残りになってしまっている。
あと2日ほどでサンティアゴに着いてしまうのだが、それでもどこかで、何となくあの2人には必ずまた会えるという確信があったりもする。祈りや願いに近い確信を、スピリチュアルの道で抱きながら、明日もまたサンティアゴに向かって歩こうと思う。

ディナーはフェデリコに誘われて最終的に6人で宴会。
食べ物をみんなでシェアして食べるのかと思いきや、
それぞれ一人ずつが定食ぽいのを食べるスタイルだった。
私の英語のリスニング能力のポンコツさが露呈。
そんなわけで私は生ハムのコロッケだらけになった。
フェデリコにお肉といもとパンを分けてもらえたからいいけど。
フラン(プリン)はすが入るくらいの固めのやつが一番好きなので、
ちょうどいいやつで美味しかった。
あと、イタリアーノ達はどれだけビールを飲もうがワインを飲もうが、
食後にエスプレッソを全員飲んでいたのが、まさにイタリアーノだった。


サンティアゴにかなり近づいた!

ポルトガルの道9日目。
PontevedraからArmenteiraまで。
39,000歩、20km、8時間半。
ポルトから233km進んで、
サンティアゴまで残り47km。

本日の宿↓

旅の必需品↓
実は不要なものとしてサンティアゴの郵便局留めの預け荷物に入れてしまったことを後悔してるタッパー。ジップロックのスクリューロックは汁漏れ全くしないから、これしか勝たんです。これがないので仕方なくアップルケーキの容器をお弁当箱として使い続けている…。





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