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まぁまぁの世界

「日日是好日」の映画を観た時を思い出していた

お茶会で「まぁまぁ」と言い合っている姿を…

地下鉄を降りたら世界が違っていた
和服姿の人がいっぱいいた

えっ?ここはどこ?わたしは違う世界に迷い込んだのか…

やはり「不審庵茶会」は特別なものらしい
格式が違うようだ

私たちの組はむっちゃんと私以外は皆さん和服である

着物は着られないので仕方がないとすぐに腹を括る

白いソックスを履いて準備をした
お師匠さんに言われた通り、黒いジャンパースカートに白いレースのシャツを着て行く

もう待っている時から皆さま、お上品になっている
わさわさした感じは全くない

私も右へならえ、黙って大人しく従っていた

黒いストッキングの上から白いソックスを履くと準備は万端である

待ち合いの椅子に座り、呼ばれるのを待っていた

しばらくすると二階のお茶室に呼ばれて、黙々と階段を登り、靴を脱ぎ、お茶室へといざなわれる

お茶室に入ると正客の席が空いていた

やっぱりそうか、これがあの「日日是好日」の映画で観た通りのお茶会だと…

それでも正客のお席には袴姿の男性が座られた

あゝ、助かった…
お師匠さんも上座が空いているので、そちらへ移られる

私はむっちゃんと社中の姉弟子さんの間に座る
むっちゃんの前にはお茶菓子の入った器がやってくる


お菓子の器が私の前に置かれなくて良かったと胸を撫で下ろす
でもむっちゃんは焦っていた

むっちゃんのお隣にはお茶会には私たちよりずっとずっと慣れているマチコ先生がむっちゃんにいろいろと教えてくれている

粗相のないように半生菓子を懐紙に取り、お隣りの姉弟子さんの前にお菓子の器を置いていた

お菓子をいただいている間に濃茶がくる
四人分の濃茶が入れられて回ってきた

配分を考えて飲まないと…緊張が止まらない

お点前をなさっているのは女の方
釜をかけられた社中のおさは楽しげに説明をされている

やっぱり私は借りてきた猫のよう
見知らぬ方のお茶席だからである

濃茶を飲み終え、懐紙で茶碗を拭く

口の回りに濃茶がついていると姉弟子さんに教えられて、慌てて口の回りを拭っていた

その後には茶器の拝見をすることに

多少のことは慣れている
二回ほどお師匠さんに連れられて、お師匠さんの知り合いの社中の方のお茶会に参加させてもらっていたから

こんな時、ほんの少しの経験も役に立つと感じていた

次には薄茶の席が待っていた
慌てるように皆さんが薄茶の席へと移動すると
そこには私の見慣れた方々が顔を出す

あゝ、薄茶席はお社さんの社中の席だった

いつも半東さんをしてくれている人たちの顔を見て、ホッとした

見覚えのあるお茶道具、説明書きの文字、不思議な程あたたかい雰囲気で私を迎え入れてくれたから

お菓子をいただき、薄茶を飲む
気持ちはほんわかと…

いつもと違う場所なのに
やさしい気持ちになっていた
アウェイなのにホームグラウンドに返った感じというのだろうか

安心している


初めての場に緊張しきっていたのを和らげてくれていた

私をお茶に導いてくれた方がいる
そして何より私にお茶を教えてくれるお師匠さんが一緒にいる

私には遠い存在でしかなかったお茶のそばにいることに私自身が驚いた

相変わらず不器用者は背筋を伸ばして、胸を張っていればお客さんは何とかなると教えられて、参加をしたが…

なんとかなるものだと感じていた
まだまだだけど
参加したことに意義はある

初めての「不審庵茶会」は最初のうちは呑まれそうになるけれど、帰える頃には少し楽しいと思っていた

気品の高い美術倶楽部のお茶会は
いつの間にか「まぁまぁ」の世界から現実のものに変わっていたのである







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