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忘れ物

父が彼の世に旅立ってもう十五年になる
母はいつも月命日には花を手向ける
できるだけ月命日の前日に花を用意していた

いつの間にかこれが母と私の決め事になる

今月は祖父の祥月命日も重なる
今月だけは決して忘れてはならないのに

わたしはすっかり忘れていた
父と祖父とは日付を越えたころに彼の世に旅立った
だから前日に用意する

それなのに、それなのに

朝カレンダーを見て
気がついた

え、え、え、今日って二人の月命日だよねぇ
どうしよう…
この時間はもう彼の世に旅立っているじゃないか

確かに母がいる時も時々買いに行かないこともあったけれど
どうしよう、どうしよう

あわてて車を走らせる
いつもの花屋へ…

遅れたけれど買って来る

仏花と白いトルコききょうの花束を

前回買った赤いモカラはかろうじてまだ持っている

明日は祖母の月命日である

まぁいいか
いつもおまけのように祖母の月命日をしていたから

今月だけは祖母のため

いつもいつも彼の世の人と話してる
私も半分は彼の世の人と思っていたが
どうやら違ったようだ

目先のことに捉われていた

身体という車に乗っている

やっぱりそうか


初めて忘れものをした
それはこの世にいるしるしだった

花はすぐに枯れてゆく
暑いから


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