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ビールサーバの注ぎ口は半世紀でどう進化した?~昭和・平成・令和の特許を読み比べる~

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 弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
 今回は、「ビールサーバの注ぎ口は半世紀でどう進化した?~昭和・平成・令和の特許を読み比べる~」をお伝えします。 

1.飲食店で大活躍のビールサーバ


 暑い日に飲む生ビールは美味しいですね。
 
 お店では店員さんがレバーを操作するだけで、黄金色のビールときめ細かな泡があっという間に出来上がります。
 
 しかし、その「注ぎ口」の中では、長年にわたって改良競争が続けられてきました。
 
 今回は、昭和から平成、そして令和まで、4件の特許を年代順に追いながら、ビールサーバの進化を見ていきたいと思います。 

2.特許分類


 さて、いつものように特許分類を特定していきます。
 今回は、FIとFタームを掛け合わせてみました。
 
FI【B67D 1/14 Z】
 B 処理操作;運輸
 B67 びん,広口びんまたは類似の容器の開封または密封;液体の取扱い
 B67D 他に分類されない液体の分与,配達,または移送
 B67D 1/00 容器から飲料をつぎ出す装置または器具
 B67D 1/08 ・細部
 B67D 1/12 ・・流量または圧力制御装置または方法
 B67D 1/14 ・・・減圧弁または制御栓
 B67D 1/14 Z その他のもの,例.ビールの泡立ち防止用弁
 
テーマコード 3E082 飲料分配器 (カテゴリ:流体制御)
 BB00 分配される液体の種類
 BB01 ・飲料
 BB02 ・・炭酸飲料
 BB03 ・・・ビール
 
 上記の太字で示す特許分類をAND検索して見ますと、200件強の文献がヒットしました。
 これらの中から4件の特許を紹介します。
 
3.昭和 特公昭46-33194¹「発泡飲料の減圧装置」
 この文献が一番面白いです。
 
 昭和の特許を読むと、いかに衛生的に使用するか、そして、ビール樽から出てきたビールを、どう減圧して適切に注ぐかという問題を解決しようとしています。
 
 当時の明細書には、過去の機械の課題として
 ・洗浄しにくい
 ・装置が大きい
 ・泡の形状が安定しない
 といったことが丁寧に書かれています。

 というのも、それまでの機械は、ビールが約10mもある細長い螺旋状の配管を減圧されながら通過して注がれていたようです。
 すると、配管の洗浄がやりにくいばかりでなく、泡の状態が不安定で美味しいビールを注ぐことが難しかったようです。
 
 つまり、この頃は「生ビールを安定して提供する装置」そのものを改良していた時代だったことが分かります。 

4.平成前半 実公平7-28157²「生ビール用泡出し装置」


 平成になると、一気にテーマが変わります。
 
 この文献では、
 ・泡持ちがよく、
 ・きめが細かく、
 ・よりクリーミーな泡
 という表現が何度も出てきます。
 
 つまり、「泡が出ればよい」ではなく、泡そのものの品質が商品価値になってきたことが読み取れます。
 ビールメーカーらしい発想だなと感じました。
 【図2】

【図4】

 これを実現するために、注出口の先端付近に、流路の内側と外側とを連通する側孔75と、多孔体(金網)72a,72b,72cが設けられています。
 多孔体(金網)を通過させることでビール中の炭酸ガスを細かく発泡させ、さらに側孔から空気を取り込むことで、きめ細かな泡を作る仕組みです。 

5.平成中期 特許第4493879³「発泡飲料注出コック」


 平成も半ばになると、ビールサーバの構造はさらに進化します。
 
 この特許で目を引くのは、液体用ノズルと泡専用ノズルを別々に設けた構造です。
 請求項にも、液体の流れとは別に「泡注出ノズル」を備えることが明記されています。
 
 図面を見ると、長い液体注出ノズル43とは別に、短い泡注出ノズル44が設けられていることが分かります。
 【図5】

 レバー部材32を図の左側に倒すと、通常のビールがあまり泡立たずに出てきます。
 【図7】

 一方、レバー部材32を右側に倒すと、スライダ55が左動して、ビール細孔75の開口75aが開かれます。
 すると、供給管34のビールは、第1弁体70の頭部端面に開口する通孔74内に入り、細孔75から噴出します。
 さらに、ビールはシール部材63に衝突することで細かい泡になります。
 この泡は、環状溝46に沿って上から下に流下し、泡注出ノズル44からジョッキに入ったビールの上面に注がれます。
 
 これにより、ビールの液体をジョッキに注ぐときは泡を少なくし、最後に泡だけを出して美しく盛り上げることができますね。 

6.令和 特許第7879964⁴「飲料注出装置及び開閉機構」


 最後に令和の特許を紹介します。
 
 この特許では、レバーによってチューブを押し潰す又は開くことでビールを止める又は注ぐことをしています。
 ここで面白いのが、チューブを少し押しつぶしてオリフィス(狭くなった通路)を作り、泡を発生させていることです。
【図7】

【図8】

【図9】

 図を見ると、レバーの位置によってチューブが全閉、全開、半開になることがわかります。
 このオリフィスで圧力差を生じさせ、細かな泡を発生させています。
 レバーの加減によってオリフィスの狭さを自在に調整できるため、泡も自在に出せますね。
 
 さらに興味深いのは、レバーを軽く操作できるよう、ガイド構造まで改良していることです。
 
 つまり令和になると、「おいしい泡を作る」だけではなく、注ぐ人の操作性まで特許の対象になっています。 

7.まとめ


 年代順に特許を読むと、開発のテーマが少しずつ変わっていることが見えてきます。
 
 昭和:まずは安定して注げること、衛生的であること。
 平成:よりきめ細かく、おいしい泡を作ること。
 令和:泡の品質を維持しながら、使いやすさまで追求すること。
 
 ビールサーバの見た目は50年前とそれほど大きく変わっていません。
 しかし、その注ぎ口の内部では、半世紀にわたり改良が積み重ねられてきました。
 
 こうした「技術の積み重ね」が特許公報から読み取れるのは、とても興味深いところです。
 この記事が御社のご発展に寄与することを願っております。
 
引用
¹東芝機械株式会社,発泡飲料の減圧装置,特公昭46-33194.
²麒麟麦酒株式会社,生ビール用泡出し装置,実公平7-28157.
³ホシザキ電機株式会社,発泡飲料注出コック,特許第4493879.
⁴キリンホールディングス株式会社,飲料注出装置及び開閉機構,特許第7879964.
 
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
 
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