梅雨時に便利な車の傘入れ 50年続く発明の工夫
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弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「梅雨時に便利な車の傘入れ 50年続く発明の工夫」をお伝えします。

1.自動車での濡れた傘の置き場
梅雨の時期になると困るのが、濡れた傘の置き場所です。
助手席に置けばシートが濡れますし、床に転がせばブレーキやアクセルの近くへ移動するかもしれません。
実は、この「濡れた傘を車内でどう収納するか」という問題は、昭和の時代から現在まで多くの発明家や自動車メーカーが取り組んできたテーマです。
今回は、車内の傘収納に関する特許や実用新案を調べてみました。
2.特許分類
さて、いつものように特許分類を特定していきます。
【A47G 25/12 L】
A 生活必需品
A47 家具;家庭用品または家庭用設備;コーヒーひき;香辛料ひき;真空掃除機一般
A47G 家庭用具または食卓用具
A47G 25/00 衣服と関連して用いられる家庭用具;衣服,帽子または傘のホルダー
A47G 25/12 ・ステッキまたは傘用スタンドまたはホルダー
A47G 25/12 J 傘の保持具
A47G 25/12 L ・車内用のもの
今回は、太字で表わした特許分類で検索したところ、571件の文献がヒットしました。
これらの中から面白そうなものを、時代の流れとともに紹介して参ります。
3.シート背面に取付けるもの
実公昭49-016536号公報¹には、自動車の座席や室内に取り付ける傘掛けが提案されています。
この考案では、必要なときだけ取り付け、不要なときには取り外せる構造になっています。さらに、濡れた傘から落ちる水を受けるための水受けも備えています。

現在の感覚ではシンプルな構造ですが、「車内を濡らさない」という基本的な課題に正面から取り組んだ発明といえます。
運転席と助手席とがベンチシートになっているのを見ると、時代を感じますね。
4.シート横のデッドスペースを活用
実公昭53-011939²では、座席の側面に縦長の収納ケースを配置する発明が提案されています。
この考案では、座席横の空間を利用して傘を収納し、下部には水受けを設けています。さらに収納具本体を着脱できるようにしており、清掃や水抜きも考慮されています。

今でいう「デッドスペース活用」の発想が既に見られます。
5.伸縮式の車内用傘立て
時代が平成になりますと、例えば特許第4150931号³に、伸縮式の車内用傘立てが提案されております。
この発明では、複数の筒体を組み合わせた伸縮構造を採用しています。使用するときは伸ばし、使わないときは縮めてコンパクトに収納できます。
【図4】

【図6】

また、下部には水受けも設けられており、濡れた傘による車内の汚れを防ぐ工夫もされています。
限られた車内空間を有効活用しようという考え方がよく分かる発明です。
なお、伸縮式には他にも蛇腹状のものなどがあったのですが、上記の形状が私の好みでしたので、あえてこの文献を掲載しております。
6.グローブボックス横に収納
さらに、特許第5143628号⁴では、グローブボックス横のスペースを利用する傘ホルダが提案されています。
特徴は、傘を収納するケース自体を取り外して持ち運べることです。さらに、ケース内に溜まった水を排出するための排水機構も備えています。
なお、ケース本体21は、傘ホルダ1に収納されます。
【図1】

【図4】

【図7】

雨の日に車へ乗り込み、目的地では傘だけでなく収納ケースごと持ち出せる点は面白い発想です。
単なる収納ではなく、「車外へ持ち出すところまで考えた発明」といえるでしょう。
7.ホンダのシートアンダートレイ
令和になると、特許第6896006号⁵に見られるように、傘専用ではなく車内収納そのものの進化も見られます。
ホンダの特許では、後部座席の足元付近、シート下空間を利用するアンダートレイ構造が提案されています。
これ、図面では分かりにくいですが、N-WGNの後部座席足下に設けられている収納部です。
【図1】


この特許は傘専用品ではありませんが、明細書には傘や靴などの汚れやすい物品の収納も想定されていることが記載されています。
近年は収納スペースを増やすことが難しくなっているため、車内の空き空間をいかに活用するかが重要なテーマになっています。
後部座席の足元付近も、その有力な候補の一つなのでしょう。
8.まとめ
今回調べただけでも、昭和から令和まで約50年にわたり、車内の傘収納に関する工夫が続いていることが分かりました。
(古い文献を検索するともっとあると思われます。)
特許というとAIや自動運転のような最先端技術を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、「濡れた傘をどこへ置くか」という身近な困りごとも、長年にわたって改良が続けられている立派な発明テーマです。
発明の種は、研究室だけでなく日常生活の中にもある。
そんなことを感じさせてくれる特許群でした。
この記事が御社のご発展に寄与することを願っております。
引用
¹東 光彦,傘挿器,実公昭49-016536号公報.
²三菱自動車工業株式会社,自動車専用傘の収納具,実公昭53-011939.
³株式会社ボンフォーム,車内用傘立て,特許第4150931号.
⁴株式会社ニフコ,傘ホルダ,特許第5143628号.
⁵本田技研工業株式会社,シートアンダトレイ構造,特許第6896006号.
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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