火加減・ダンパー…職人技は特許になる?珈琲焙煎の特許
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弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「火加減・ダンパー…職人技は特許になる?珈琲焙煎の特許」をお伝えします。

1.コーヒーは焙煎によって味が変わる
「コーヒーは焙煎が命」といわれ、同じ生豆なら焙煎の出来によって味の7割程度が決まるといわれています。
実際、自家焙煎店の方の話によれば、
「この豆は少しゆっくり火を入れる」
「終盤で火力を落とす」
「空気の抜き方で味が変わる」
など、かなり職人的な話が出てきます。
私は、「結局それは長年の経験や勘なのかな」と思っていました。
ところが特許を調べてみると、意外なことが分かりました。
職人の勘と思っていたものが、かなり細かく数値化されていました。
2.調査した特許分類
さて、いつものように調査した特許分類を書きます。
今回はFタームを用います。
テーマコード 4B027
説明 茶・コーヒー
FQ00 コーヒー製造工程,装置
FQ01 ・コーヒー生豆の処理
FQ02 ・焙煎
上記の太字で表わされた4B027 FQ02で検索すると、およそ430件の文献がヒットしました。
3.抽出した特許文献
(1)炭火焙煎の「ダンパー開閉」まで特許
特許第3645506号¹では、炭火焙煎において、
・第1工程はダンパーを閉じる
・第2工程はダンパーを開く
・さらにコーヒー豆を急冷する工程を含む
という方法が提案されています。
ダンパーは、簡単に言うと空気の流れを調整する部分です。
一般的には「煙を逃がすためのものかな?」くらいのイメージかもしれません。
しかし本文献では、「空気の抜き方」までコントロールして美味しいコーヒー豆を得ようとしております。
具体的には、ダンパーを閉じる第1工程では、焙煎機内は空気の流れが止まり、比較的低温の炭火で焙煎を長時間行うことができます。
その結果、コーヒー豆の組織の膨張に伴い、水分含有率が低下して良質の香りが発現するようになるそうです。
また、ダンパーを開ける第2工程では、焙煎機内は熱風が流れてコーヒー豆をはじけさせ、水分の気化と共に異臭も除かれるため、コーヒー特有の香りが生成するとのこと。
さらに、急冷することによって、予熱による焙煎コーヒー豆の過加熱を防いで焙煎の進行を止め、好ましい焙煎状態を保つことができるそうです。
(2)火加減の勘も数値になっていた
さらに特許第7762456号²では、温度管理に関する記載もありました。
炭火焙煎で、
・コーヒー生豆の投入後のボトム温度95~110℃
・焙煎を終了する終了温度185~195℃
・仕上げにおける仕上げ温度165~185℃
など、かなり具体的な条件が記載されています。
ここまで来ると、もはや料理レシピではなく工業製品です。
しかし、元々はおそらく、
「この辺で火を少し弱めた方が良い」
「この豆はもう少し引っ張った方が良い」
という現場経験から始まったのだと思います。
4.中小企業や個人事業主でも発明できる
今回の特許を見ていて感じたのは、必ずしも大企業の巨大設備だけが発明ではないということです。
例えば、
「後半で少し火力を落としたら苦味が減った」
「空気の抜き方を変えたら香りが良くなった」
「投入タイミングを変えたら安定した」
これだけなら、現場の改善活動でも起こりそうです。
ただ、多くの場合、「たまたまうまくいった」経験が積めたで終わってしまいます。
一方、なぜ良くなったのか、どの条件なら再現できるのかまで考えて実験を繰り返していけば、中小企業や個人事業主でも特許が可能となります。
5.まとめ
特許というと、AIやロボットのような大掛かりなものを想像しがちです。
しかし実際には上記のように、
「空気の抜き方」
「火加減」
「時間」
といった職人の感覚が、発明になっていることもあります。
現場で積み重ねた経験は、意外と特許の種になっているのかもしれません。
「うちだけのやり方だから」
と思っているものほど、実は面白い発明が隠れていることがあります。
この記事が御社のご発展に寄与することを願っております。
引用
¹株式会社トーホー,コーヒー豆の炭焼焙煎方法,特許第3645506号.
²南蛮屋株式会社.コーヒー豆の焙煎方法,特許第7762456号.
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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