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マルチマルチクレームって何だ?

【稼ぐ経営者のための知的財産情報】

 弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
 今回は、「マルチマルチクレームって何だ?」について説明します。

 マルチマルチクレームと書くと、特許出願の書類作成にあまり縁のない人ですと、何やらマルチ商法とかの変な商慣行に思われそうです 笑

 そうではありませんので、ご安心ください。
 というよりも、特許業界では大事なものなのです。
 そして、この大事なマルチマルチクレームが、令和4年4月1日以降の特許出願で制限されるのです。
 ですので、出願人である中小企業の社長さんにとっても大事なことです。

 以下に「マルチマルチクレーム」を詳しく書きます。

 先ず、「クレーム」を説明します。
 「クレーム」とは、特許請求の範囲という書類に記載されている「請求項」のことです。
 日本語でクレームというと、何やら不当な文句を言っているようなイメージがありますが、英語ですと「請求」とか「主張」という意味ですね。

 特許出願書類で「請求項」ですので、「クレーム」となるのです。
 (実際は、英語で「クレーム」だったから、日本語が「請求項」になったのだと思います。
 特許制度は海外で先に制定されており、明治維新の後に、海外から日本に入ってきたと思われますので。)

 次に「マルチ」を説明します。
 これ「マルチクレーム」のことです。
 「マルチクレーム」とは、「多数項引用形式請求項」のことです。
 簡単に言うと、多数の請求項を引用している請求項です。

 例を挙げます。
 請求項1 aを備える装置X。
 請求項2 さらにbを備える請求項1に記載の装置X。
 請求項3 さらにcを備える請求項1又は2に記載の装置X。

 この例で見ると、請求項3が請求項1と2を引用しておりますので、マルチクレームになります。

 次に、「マルチマルチクレーム」とは、「多数項引用形式請求項を引用する多数項引用形式請求項」です。
 これを説明していると、読んでいる人が眠くなりますので例を挙げます。

 この例は上記の例からの続きです。
 請求項4 さらにdを備える請求項1ないし3のいずれか1項に記載の装置X。

 この請求項4はマルチクレームです。
 さらに、マルチクレームである請求項3を引用しております。
 これが、マルチマルチクレームといわれるものです。

 なお、「ないし」とは「○○から○○まで」という意味です。
 「又は」という意味ではありません。
 私も特許の世界に入るまでは、「ないし」を「又は」の意味に勘違いしておりました(^_^;

 このマルチマルチクレーム、出願人からするととても便利なものです。
 例えば、請求項1から請求項5について、全ての請求項を引用するマルチマルチクレームで表わすと、その内容は以下のようになります。

請求項番号 内容
 請求項1 1
 請求項2 1+2
 請求項3 1+3,1+2+3
 請求項4 1+4,1+2+4,1+3+4,1+2+3+4
 請求項5 1+5,1+2+5,1+3+5,1+4+5,1+2+3+5,1+2+4+5,1+3+4+5,1+2+3+4+5

 このように、請求項3では2通りの組み合わせが、請求項4では4通りになり、請求項5では8通りになります。
 つまり、組み合わせが指数関数的に増えて行くのです。
 これらの組み合わせを、比較的少ない請求項数で表わすことができます。

 ところが、出願人からすると便利でも、審査する側からすると大変です。
 なんせ、指数関数的に組み合わせが増えて行くので、厳密に言うならその全てを見なければなりません。

 ということで、令和4年4月1日以降の特許出願から制限されるのです。
 日米欧中韓の主要庁のうち、これまで日本と欧州はマルチマルチクレームが認められていました。
 もっというと、欧州は多少細かな制限もあったため、日本が一番自由に記載できていたと思います。
 これができなくなります。

 これからは、請求項数を増やすか、組み合わせ自体を限定するしかありません。
 弁理士としては、今後は書き方をこれまで以上に考える必要が出てきます。
 お客さんにとっても、請求項数の増加→出願費用の増加となって、多少ながら負担が増えることが予想されます。

 ところで制限といっても、マルチマルチクレームでの出願はできます。
 但し、後の審査において拒絶理由通知がなされてかなり不利になりますので、わざわざそんなことはしませんが 笑

 この記事が御社のご発展に役立つことを願っています。

坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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