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ヤマハTZR250 前方吸気の特許

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 弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
 今回は、「ヤマハTZR250 前方吸気の特許」をお伝えします。 

1.ヤマハTZR250とは


 今回は、かなりマニアックな内容です。
 皆さまはヤマハTZR250をご存じでしょうか?
 
 1980年代から1990年代にかけて、ヤマハ発動機が製造販売していたレーサーレプリカです。
 2気筒の2ストロークエンジンを積んで、年式により多少差はありますが、45馬力を発揮しておりました。
 

https://global.yamaha-motor.com/jp/stories/yamaha-handling/list/vol05/02.htmlより

 実は、この45馬力というのはデチューンした値でして、キットを組み込むことで60馬力以上が可能でした。
 
 というのも、その少し前に活躍されたモリワキレーシングの宮城光選手などの影響もあり、市販車を改造したクルマ(2輪)のTT-F3クラスが大人気だったのです。
 市販レーサーレプリカを改造して参戦するライダーも数多くいました。
 
 このTT-F3クラスのベースマシンとしても開発されたため、伸び代のあるエンジンでした。
 
 ちなみに、TT-F3クラスは4ストロークが排気量400ccまで、2ストロークが250ccまででした。
 当初は4ストロークが優勢でしたが、次第に2ストローク優勢になっていった記憶があります。 

2.TZR250の特徴


 さて、そんなTZR250ですが、その一番の特徴は、中期型から採用された前方吸気、後方排気だと思います。
 初めて見たとき、そのキャブレターの配置にびっくりしました。
 

https://motor-fan.jp/article/1507942/04-397/より

 なぜなら、通常、オートバイのエンジンは後方吸気、前方排気でして、キャブレターはエンジンの後ろにあるのが当たり前だったからです。
 
 かなり前の話なので、うろ覚えのところもありますが、レーサーなのでエアクリーナーなどは付いて無く、キャブレターが前方に向かって口を開けています。
 小石などが入らないのかと心配になりました。。。
 
 一方で、これならエンジンの後ろの暖かい空気で無く、前方の冷たい空気を吸えるのかとも思いました。
 
 当然といえば当然ですが、この前方吸気、ヤマハの市販レーサーであるTZ250にも採用されていました。 
 (記憶で書いているところもありますので、間違えていたらごめんなさい。)

3.前方吸気の特許


 さて、前置きが長くなりましたが、ヤマハ発動機の前方吸気の特許を紹介します。
 今回の特許は、次の特許分類で見ることができます。
 F02M35/16 L これは自動二輪車用の吸気管に対応する特許分類です。
 
 (1)特公平03-077380¹
 この文献には、前シリンダと後シリンダを備えるV型エンジンにおいて、前後シリンダによるV字空間を車輌の前方に向けて開き、このV字空間に吸気通路を形成した特許が開示されています。 

 ここで鋭い人はお気付きだと思います。
 そうです、TZR250は、初期型と中期型が並列2気筒だったのです。
 さらに、前方吸気が採用されたのは中期型からです。
 中期型では、2本のチャンバーがシート下を通って、テールカウルから出ていたのが印象的でした。
 
 一方、この特許はV型エンジンです。
 TZR250がV型エンジンを積んだのは後期型です。
 つまりこの特許は後期型のエンジンに関するものです。
 
 この特許によると、通常のエンジンの吸気は、外気の動・静圧及び温度等による影響を受けるが、前方吸気によって各気筒に同一の条件で外気が導入され、エンジンの性能を向上させることができたとあります。
 
 (2)特公平6-105045²
 次に紹介する特許は、同じような文献(分割出願)ですが、少し趣旨が異なります。
 前方吸気という基本思想は共通ですが、ヤマハは、エンジン搭載位置や重心低下まで踏み込んだ特許として取得しています。
 上部シリンダ及び下部シリンダを備えるV型エンジンも同じです。
 
 この文献ではさらに次のことが記載されています。
 ・上部シリンダ及び下部シリンダが車両の進行方向に傾斜し、
 ・車両側面視で下部シリンダの中心線Lbが車体枠の前方下部に配設されたラジエータの下方を指向し、
 ・車両側面視で上部シリンダと下部シリンダとのなす角度を二等分した二等分線Lcが、フォークとステアリング・ヘッド・パイプとを連結するアンダー・ブラケットの下方を指向するエンジン。
【図1】

【図2】

 これ、図面を見ると同じ前方吸気ですが、エンジンの搭載角度を低くした特許です。
 この特許によると、次の効果が述べられています。
 
 ・車両の重心を十分下げることができる。従って、車両全体の重量バランスを良くし、高速走行時の安定性を格段に向上させることができる。
 ・下部シリンダの中心部分に配設された点火栓等がラジエータと接触する恐れがないので、車両全体としてコンパクト化が容易である。
 
 つまり、操舵性能の向上を図る特許ですね。
 ハンドリングに定評のあるヤマハらしい特許だと思います。 

4.オマケの話


 今回紹介した2つの特許、見る人が見れば分かるのですが、図面がレーサーのTZ250なんですね。
 
 TZは、ヤマハが開発した2輪の市販車レーサーで、1970年代から2000年代にかけて販売されていました。
 
 その頃はまだ2ストエンジンが主流で、少し遡れば350ccクラスもあり、さらにTZ750なんていう怪物マシンもありました。
 
 片山敬済選手がTZ350を駆って、WGP350クラスのチャンピオンになったのも、この時代でした。。
 他にも、ヤマハには金谷秀夫選手、高井幾次郎選手など、多くの名ライダーが活躍していました。
 
 本文とは関係ないですが、私が若い頃に持っていた、ホンダNSR250RのHRCコンプリートマシンの写真も載せておきます。

 私は若い頃はオートバイが大好きで、上の写真の前は、ヨシムラコンプリートのGSX400RトルネードやCB750FB等に乗っていました。
 懐かしいです。
 
引用
¹ヤマハ発動機株式会社,自動二輪車用エンジン,特公平03-077380.
²ヤマハ発動機株式会社,自動二輪車用V形2行程エンジン,特公平6-105045.
 
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
 
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