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筆箱の特許 子供が使いやすい工夫とは?

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 弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
 今回は、「筆箱の特許 子供が使いやすい工夫!」をお伝えします。

1.4月は入学式


 この時期になると、新しいランドセルや文房具を持って、子供たちが登校します。
 
 その中でも、ほぼ全員が持つもの――
 それが「筆箱」です。
 
 実はこの筆箱、見た目は昔からあまり変わっていないようでいて、中身の構造はかなり進化しています。
 
 今回は、実際の特許・実用新案をもとに、筆箱がどのように進化してきたのかを見ていきます。 

2.特許分類


 さて、いつものように特許分類から特定していきます。
 実は、筆箱と一言に申しましても、特許分類はかなり細分化されております。
 そこで、今回は「鉛筆ホルダ-に特徴があるもの」に絞ってみました。
 
A 生活必需品
A45 手持品または旅行用品
A45C 財布;手荷物;手提げ鞄
A45C 11/00 グループA45C1/00~A45C9/00に属さない目的の容器
A45C 11/34 ・筆入れ;筆箱または類似物
A45C 11/34 101 ・・内部に特徴のあるもの
A45C 11/34 101A 鉛筆ホルダ-に特徴があるもの
 
 上記のうち、太字で表わした特許分類で検索したところ、266件ヒットしました。
 これらの中から、時代とともにどのように進化したかを以下に説明します。 

3.初期の発想:とにかく「支える」


 昭和30年代の段階では、鉛筆ホルダはほぼ「固定具」です。
 実公昭37-21930¹では、箱の内部に支持具や中箱を設けて、鉛筆を保持する構造が採用されています。
 
 この考案の要旨は、突片10を直立させた支持金具9に、隔壁12を備えるゴム製筆支持具11を嵌めて、隔壁12と隔壁12の間に鉛筆を挟む構成です。
 
 この構成によって、鉛筆を決まった位置に置く、中で動かないようにすることができます。

 つまりこの段階では、鉛筆ホルダは「保持する」というよりも、所定位置に収めて動かさないための補助部材という位置付けにとどまっています。 

4.機構化の時代:確実に「保持する」


 次に出てくるのが、鉛筆ホルダ自体に“機能”を持たせた構造です。
 
 実公昭49-25864²では、カム機構と板ばねを用いて鉛筆を保持する構造が提案されています。
 
 この考案の要旨は、鉛筆11が装着されたキャップ6に設けたカム部7と、これに当接する板ばね5と、を組み合わせ、鉛筆を所定角度に保持するというものです。

 図を見ると分かるとおり、鉛筆11はキャップ6に支持されているだけでなく、カム7とばね5の作用によって、水平又は立設された状態に保持される構造になっています。
 
 ここで、「置く」から「制御して保持する」へという発想の転換が見られます。 

5.実用化の完成形:どんな鉛筆でも「挟む」


 その後の考案に見られるのが、どんな軸形状の鉛筆であっても鉛筆を挟持する構造です。
 
 実用新案登録第3223484号³では、上下から押える構造と傾斜スリットを組み合わせた鉛筆ホルダが提案されています。
 
 この考案の要旨は、鉛筆の軸部を上方押え部13と下方押え部14で挟み込むとともに、上方押え部13に形成された傾斜スリット13aによって変形を許容し、異なる断面形状の鉛筆にも対応可能とする点にあります。
 【図1】

【図5】

 この構成によって、六角形・三角形・円形など異なる鉛筆に対応し、適度な保持力を確保し、構造を簡素化し量産しやすくすることが可能となります。
 
 つまり、「複雑な機構」から「シンプルで便利な構造」へと進化しています。 

6.現代の到達点:保持+視認+安全性


 さらに近年の特許では、鉛筆ホルダは単なる保持具を超えた機能を持つようになります。
 
 特許第7796406号⁴では、透明なペンホルダーと弾性保持部材を組み合わせた構造が提案されています。
 
 この発明の要旨は、透明な硬質樹脂製のペンホルダー20内に、弾性素材からなる鉛筆保持部材30を収容し、鉛筆挿入孔31によって鉛筆を保持するとともに、先端部を係止するテーパー部24を設ける点にあります。
 さらに、ヒンジ21によってペンホルダー20を回転させて、鉛筆を立設させることもできます。
【図1】

【図2】

【図16】

 図を見ると分かるとおり、外側は透明な外殻、内側は柔軟な保持部材という二重構造となっており、保持力と視認性とを両立させています。
 
 この構成によって、鉛筆が抜けにくい(振動対策)、芯先の状態を外から確認できる、挿入しすぎによる芯折れを防止といった効果が得られます。
 
 ここまで来ると、筆箱は「収納部品」ではなく「学習のための装置」のようですね。 

7.まとめ


 こうして見ると、鉛筆ホルダは、
・支える
・機構で保持する
・どんな鉛筆も挟む
・見せて管理する
 という段階を経て進化してきています。
 
 筆箱そのものは小さく日常的に目にするものですが、こうした身近な製品の中にこそ、技術の積み重ねがあります。
 特許というと難しく感じますが、身の回りの製品から見ていくと、少し面白くなります。
 
 この記事が御社のご発展に寄与することを願っております。
 
引用
¹森田常治郞,筆入れ箱,実昭公37-21930.
²宮田致良,スナップ・キャップ内装の筆箱,実公昭49-25864.
³クツワ株式会社,鉛筆ホルダ及びそれを備えた筆入れ,実用新案登録第3223484号
⁴株式会社大阪クリップ,筆箱,特許第7796406号.
 
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
 
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