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大学生の息子たちに伝えたいこと 子育てで心臓が止まりそうな瞬間・前編

妊娠期間を含めて、23年間、双子の息子たちを育ててきました。

自分の命より大切なモノができて幸せの絶頂を味わいましたが、彼らを完全に制御できたことがありません。

比喩ではなく、何度も心臓がキュッと握りつぶされそうになりました。

街中で大きな叫び声をあげたことも、ドラマの中みたいに世界がスローモーションに感じたこともあります。

双子の男の子をワンオペで育てるのは、ホントに心臓にダメージをくらいます。


下の子の顔を二度と見れないのではないかと泣きそうになったのは、彼らが小学6年生の夏休み、2週間バックパックでヨーロッパを旅行した時です。

パリのオルセー美術館3階のフロアに着いた途端、下の子が「鬼ごっこするぞ!」と宣言し、走り出しました…。


見知らぬ場所に来た時、上の子は、必ず保護者を視界に入れています。

外出先で迷子になったことは、ゼロです。

下の子は、1歳頃から、自分がしたいことに夢中になり、突進するタイプでした。

「もう会えないんじゃね?」と思いながら、プールで、海辺で、公園で、スキー場で、キャンプ場で、スーパーで、何度も何度も捜し回りました。

ほぼいつも、「ママどうしたん?」という顔つきで、しれっと現れるから、腹が立ちます。


オルセー美術館の3階で下の子を見失って、呆然としました。

上の子の手を引いて、3階全ての展示室を見て回っても、発見できません。

1階の受付に行き、「子どもが迷子になったので、館内放送をしてもらえませんか」と女性スタッフに頼みました。

彼女の返答は、「館内放送はできません。お子さんの服装と特徴を教えて下さい。全警備員にそれを伝達します」とのこと。

警備員から発見の連絡が来るまで受付でただ待つのは、私の性分には合いません。

幸い、オルセー美術館は、出入り口が受付前の1ケ所のみです。

いてもたってもいられない私は、上の子の肩をがしっと掴み、しっかり目を見て、頼み込みました。

「私は、3階のフロアから順番に、すべての場所をチェックしに行く。あなたは、ここに立って、弟が出て行かないように見張っていて。絶対にここを動かないでね。必ず戻ってくるから、信じて待ってて」

上の子は、悲壮な顔でうなづきました。

言葉も通じない異国で、唯一頼みの綱の母親をひとりで待つなんて、すごく心細いでしょう。

でも、彼は泣かなかった。

私は、彼の頭をガシガシとなでて、飛ぶように3階まで駆け上がりました。


先ほど見なかった場所からと思い、最初に3階のトイレを見に行くことにしました。

誰かに男子トイレの捜索を依頼しようと思っていたら、いました、下の子が、トイレの前に。

床に紙を敷き、クレヨンで何か描いています。

「こら!」と私が大声を出すと、彼は顔をあげ、嬉しそうに笑いました。

私は、彼の前に座り込み、「何のんきに絵を描いてるの。怖くなかったの?」と訊けば、「だって、絶対ママが捜しに来ると思っていたから」と言う。

一瞬、そのまっすぐな信頼にほだされそうになりました。

でも!

外国で意思疎通ができない子どもが迷子になったら、もう二度と会えないんじゃないかと思うやんかー!

「言いたいことは山のようにある。けれど、とりあえず、立て。1階で待ってる兄貴のとこに戻るぞ」

そう言って、下の子の手をしっかりと握り、1階まで一緒に降りました。


受付まで辿り着くと、意外に平気そうに上の子が出入り口横でふんばっていました。

私たちの姿を見つけると、あからさまにホッとした顔をしました。

まず、女性スタッフに子どもが見つかったことを伝え、お礼を言いました。

もう一度、3人でエスカレーターに乗り、3階から順番に作品を鑑賞していきました。

建物も展示も素晴らしかったけれど、私の心臓は、残念ながら凍り付いたままで、何ひとつ心に響きませんでした(涙)。


ちなみに、受付の女性スタッフに、下の子の服装を尋ねられた時、とっさに答えることができませんでした。

次の日から、朝ホテルを出る時、毎日写メを撮るようになりました。

これは、彼らが小学校を卒業するまで続く習慣になりました。

しかし、出入り口が1ケ所のオルセーでよかったです、複数の出入り口があるルーブルだったら、再会は叶わなかったかもしれません。

小学生の彼らと行ったこの旅行が、私の最も思い出深い旅行だというのは、間違いないです。



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