耳障害の青年が銀閣寺へ――沈んだ美の破壊衝動 第6回配信 第五章【虚空の朝】
「第五章:炎上の果てに残るもの――虚空(こくう)の朝」
明け方、私は藪(やぶ)の陰(かげ)で息を潜(ひそ)め、服に染(し)みついた煙の臭いを噛(か)みしめた。
耳障害の私には警笛(けいてき)や騒(さわ)ぎ声もはっきり聴(き)きとれず、ただ身体を震(ふる)わせるばかりだ。
銀閣を焼いた今、果たして何が変わったのか?
父や西村が戻るわけでもないし、住職の野望(やぼう)や観光開発がすぐ崩れるわけでもなかろう。
焦(こ)げくさい衣(ころも)で逃亡(とうぼう)する私は、耳障害の壁に阻(はば)まれたまま情報から切り離され、町外れを彷徨(さまよ)うしかない。
「これが破壊の行き着く先か……」と思いながら虚無(きょむ)を感じつつ、それでも生きるしかない私は朝陽(あさひ)に背を押されて歩み続ける。
結局、すべてを焼き払っても何も救われず、終わりなき始まりが私を飲み込むのだ。
完
本シリーズ「作品紹介:耳障害の青年が銀閣寺へ――沈んだ美の破壊衝動」の全6回にわたる配信は、これにて終了いたしました。
お忙しい中、各回をお読みいただき、誠にありがとうございました。
本作では、耳障害により孤独と苦悩に苛まれる青年が、戦後京都の静謐な銀閣寺で働く中で、父の夢や伝統美(沈んだ美)と、現代の商業主義とのギャップに直面し、究極の破壊衝動へと導かれていく姿を描いています。
皆様の感想やご意見をぜひお聞かせいただければ幸いです。
今後も、新たな物語や創作活動を続けてまいりますので、どうぞ引き続きご注目ください。
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